7月3日から一万円札の顔が変わる。なぜ渋沢栄一なのか。なぜ今なのか。家父長制への回帰、労働組合つぶしの原点はこの人にあった。6月28日のレイバーネットTVは、目から鱗の70分の番組になった。特集テーマは、<新一万円札「渋沢栄一」の虚像を剥ぐ>で、出演者は長竹孝夫・佐高信・柴田武男、司会は土田修の各氏だった。
長竹孝夫さんは、足尾鉱山を買収した事業をはじめたのは古河市兵衛だったが、その資金援助をしたのが渋沢栄一であったことを明らかにした。古河・渋沢らは鉱山事業で大儲けしたが、その後、大規模な足尾鉱毒事件が発生し、労働者が亡くなり、地域が汚染され2万数千戸にのぼる農家が被害を受けた。しかし、「渋沢はカネを貸しただけ」と鉱毒事件については、責任逃れに終始した。
佐高信さんは、「渋沢栄一は、青年研修団体『修養団』の顧問で、企業の“みそぎ研修”のもとをつくった人。研修の内容は『こざかい理屈をすてバカになること』であり、いいなりで考えない青年づくりをめざしている。社長であるお父さんに任せろという、家父長制的経営を推奨している。渋沢栄一は『日本資本主義の父』といわれているが、ただしくは『日本資本主義の歪みの父』である」と喝破した。
柴田武男さんは、これまでいっさい報道されることのなかった事実に言及した。それは朝鮮植民地時代に渋沢栄一が自分の顔が入った「第一銀行券」(写真)を発行したことである。柴田さんは「この軍票のような紙切れで、給料を払ったり、米を買い上げた。植民地の収奪に使ったのである。いままで渋沢栄一は植民地支配の先兵と思っていたが、よく調べたら植民地支配の本体であり大将だった」と批判した。「当時も『第一銀行券』に反対運動が起きたが、今回の新一万円札『渋沢栄一』にも韓国から抗議の声が上がっている。このことはメディアはいっさい報じない。私たちは、この問題を日韓歴史問題としてしっかり考えていきたい」と結んだ。
次から次に明らかになる事実は、「渋沢栄一」がとんでもない人物であることを示していた。「渋沢栄一」の考えの基本に「日本は国力をつけることが大事で民衆は我慢すべき」ということがある。日本の支配層がこの新札に込めた意味は何なのだろうか? 「これからますます社会矛盾がひどくなるが、文句を言わず家父長的制経営でうまくやっていこうね」というメッセージではないか。ある出演者からの言葉だった。(M)