シネクラブ@堀切です。 関東大震災から100年。9月1日に公開された映画『福田村事件』(森達也監督)が話題に なっています。 関東大震災での朝鮮人虐殺や虐殺の本質に真正面から迫る劇映画で、日本人が作ったとい う点でも、その歴史的意義は大きいと思います。 私も公開当日に観に行きましたが、想像した以上に素晴らしい作品でした。新聞雑誌の映 評のみならず、SNSでも多くの人が感想を書いていて、「ぜひ討論会をやりたい」という コメントもありました。 そこで、次回のシネクラブでは『福田村事件』をとりあげることにしました。映画は劇場 で観てください。できればパンフレット(1500円と高額ですが、シナリオが完全収録され ているなど読み応えがあります)を購入していただくとよいと思います。 討論の冒頭に、クローズアップ現代の森達也氏のインタビューを上映します。 9月30日(土)17時30分から。会場はいつもの郵政共同センター(JR秋葉原、JR御徒町か ら徒歩10分 地下鉄末広町4番出口からすぐ) 思い思いの感想を持ち寄りながら、より考えを深めていければいいなと思っています。 ふるってご参加ください! 映画公式サイト https://www.fukudamura1923.jp/

20人でディスカッション〜「賞賛」と「違和感」と

 9月30日、レイバーシネクラブでは『福田村事件』の討論会を開催した。20名が参加で大盛況。久しぶりに顔を見せてくれた人、映画監督、クラファン出資者、元新聞記者、組合活動家、在日三世、・・・実に多様な人たちが集まった。「上映禁止になるかも」という森達也監督の心配をよそに公開から一ヵ月。多くの人が劇場に足を運び、増版された1500円のパンフ、濡れ場シーンの是非論など、話題に事欠かない。

  まずは一番言いたいことを、一言ずつ語ってもらう。よくぞ作ってくれた、今これをやらねばという映画人たちの勇気、これが大筋の感想だった。その上で、引っかかること、危うく感じることを仄めかす意見もあった。

 事実と脚色が混ざっているのは当然だが、映画を観ただけでは意味がつかみきれない。二巡目からは、それを補うような話も多数出てきた。たとえば東出昌大演じる船頭が「朝鮮人は嫌いじゃ」と言う理由。これは日本が朝鮮支配したことへの反逆を恐れてということだけではなく、野田の醤油工場で最も長くストライキが闘いとられたことと関係があるのではないかという話は興味深かった。

 そして、この映画は日本の加害の歴史について描いているのに、ネトウヨも櫻井よしこ氏も何も言わない(私の知る限りでは)のはどうしてなのかという話になった。「加害者を描きたいと森さんは言うが、本当に加害を描いたと言えるのか」という意見があり、ああ、そうかと思った。流言飛語を放出し、平気で人を殺めるというあの雰囲気を作ったのは誰なのか。そこへの切り込みが弱いのではないかと。

 内なる差別との闘い、集団の中で個を保つことの難しさを森監督はいうが、それだけでいいのか。そのことに気づかせられたのが、私には最大の収穫だった。「違和感」に目を向け、意見を出しあうことの大切さを感じた。その意味で、討論会をやってよかったと思う。

 この討論を踏まえて、もう一度観に行くという人もいた。いろいろなところで討論会がやられているようだ。若い人たちがどう感じたか、聞いてみたい。(報告=堀切さとみ)