9月1日、シネクラブでは『はだしのゲン第二部』を上映し、12名が参加しました。
前回は、戦争に反対する父親(三国連太郎)が圧巻の存在感でしたが、今回は被爆したゲンが戦後をどう生き抜くのかが描かれています。
役者は全部入れ替わり、ゲンだけは同じ子役だと思いながら観ていたのですが、違う役者だということがわかりました。実の娘と息子(ゲンの姉と弟)を原爆で亡くしてから、戦災孤児たちの「かあちゃん」となる母親を演じたのは宮城まり子。彼女がなぜ「ねむの木学園」を作ったのか。その原点がわかったという声もありました。
漫画『はだしのゲン』は在特会の攻撃対象になったり、図書館から排斥されたりしましたが、そうなってみて初めて手にしたという人も少なくありません。高校教師のAさんは「それまではあまり好きな絵ではないと思って敬遠していたが、ドラマが面白くて一気に読んだ。戦争犯罪の本質が良くわかった」と言いました。
もっとも印象的なのは、原爆でケロイド状になった画家とゲンが、信頼関係を築いていく場面です。世間からはハレモノに触るような扱いを受け、家族からも疎んじられている。その最大の被害者が尊厳を取り戻していく姿は感動的でした。初参加のBさんによると「漫画では、ゲンと画家が仲良くなるまでに、もっといろいろな葛藤があり時間がかかっていた」そうです。
戦争によって誰もが同じ被害を受けたのではなく、子どもたちの中にも食える子どもと食えない子どもがいる。乞食と言って虐められる子どももいれば虐める子どももいる。そんな描写をみると「自分だったらどうするか」「自分はこういうことはしないぞ」と、子ども心にも考えるのではないか。そんな感想もありました。
実際に戦争を体験した人は、あと数年すればいなくなるでしょう。それでも、戦争への足音が聞こえる今、「絶対に戦争をしてはいけない」と言う若い世代もいます。たとえば1981年生まれの小説家、柚木麻子さん。元シールズで憲法を守る弁護士になった久道瑛未さん。彼女たちの原点は『はだしのゲン』であり『火垂るの墓』だったと。直接体験した人がこの世からいなくなっても、これらの作品が残されていれば「戦争が起これば人は人として生きられなくなる」ことが伝わっていくのだ。「たかが映画」ではないのだと、あらためて思います。