
3月22日、新しい会場(向原ホール)で『教えられなかった戦争・沖縄編~伊江島・阿波根昌鴻のたたかい』を上映した。
18名が参加。そのうち4~5名は初めての参加者で、レイバーネットのwebサイトやFacebookで知ったという人たちだった。
現在の辺野古新基地建設に至る沖縄の戦後を記録した、素晴らしい映画だった。阿波根さんを軸に、アレンネルソンさんや新崎盛暉さんら、懐かしい人たちが登場する。そして、ネーネーズによる沖縄らしいゆったりした歌。
私は30年前に伊江島を訪れ、阿波根さんの話を聴いたことがある。その独特な語り口に、ついウトウト・・・。時を経てスクリーンに映し出される阿波根さんの語りは当時の記憶のままだったが、どの言葉も重く、丁寧で、心にまっすぐに届いた。

阿波根さんといえば、銃剣とブルドーザーで伊江島を占領したアメリカ兵に対して、非暴力で闘った人。相手が野獣なら、自分たちは人間として闘わなければいけないと。そこまでは有名だが、彼はジャーナリストでもあったことを、この映画で知った。映画の中に出てくる写真は阿波根さんが撮影したもの。今年一月まで開催されていた『阿波根昌鴻~人間の住んでいる島』展のことをレイバーネットに紹介した志真斗美恵さんも参加して下さり、「伊江島には写真機が一台しかなく、それを使って撮影したのが阿波根さんだった。彼は証拠写真として撮っていた」と話してくれた。「耳より高く手をあげてはいけない」というのも、もし写真に撮られたら殴りかかっていると思われても仕方がないという、阿波根さんの慎重さによるものだった。
映画で描かれる1955年当時、米軍による土地収奪は凄まじく、耕作すると逮捕されてしまう。飢えて死んでしまうからと畑作を強行すると、畑は焼き討ちされてしまった。「それが、現在の伊江島はナイター施設ができるほどの見返りがある。現在の伊江島の首長は米軍基地容認になってしまっているが、阿波根が蒔いた種は簡単に死ぬものではない」と志真さん。

参加者のひとり、学童保育の指導員のNさんも「まるでガザと同じ。『ノーアザーランド』と重なった。そこに住む人たちの家を奪い学校を潰す。自分たちも加担しているということを忘れてはいけない」と力説した。
討論の後半、日本軍によって人生を奪われた在日コリアンの記録映画『よみがえる声』の話になった。監督は今年90歳の在日二世。娘さんが監督を引き継いでいる。2023釜山国際映画祭で最優秀賞を受賞したが、日本では上映できる劇場がみつかっていないという。ヒロシマナガサキの原爆、沖縄戦にからむ史実も明らかにされているようだ。
最後に、シネクラブのメンバー阿部尊美さんによる『価値の彼岸』(12分)を上映。『希望の牧場・福島』の「価値のない命なんてない」という訴えに感動して東京に戻ったら、人間にも値札がついていた・・・。映像も撮るが舞踏家でもある阿部さん。素敵なアート作品だった。(堀切記す)