戦争、震災、貧困、様々な問題が深刻化したこの一年。何とか希望を見つけようと、12月25日、東京・練馬のココネリホールでレイバーフェスタが開催されました。映画、音楽、川柳、三分ビデオに加え、今年は元イスラエル兵のダニーネフセタイさんの講演があり、年の瀬の平日にもかかわらず、180名の人が集まりました。
オープニングは、杉並区長選挙をめぐるドキュメンタリー『映画〇月〇日、区長になる女。』の上映。
今年は民主主義を挑発するかのような選挙に、ガッカリした人も多かったのでは。そんな中、対話や議論を重ね、悩みながらも原則的な選挙運動を展開した岸本聡子さんと杉並区民の映像に、ハラハラドキドキ。でも、そこに共生と民主主義がありました。
上映後、岸本選挙を全力で支え、自らも杉並区議になった30代のてらだはるかさん(左写真)が登壇し、その後の杉並区と今の思いを語り、会場には爽やかな風が吹き抜けたかのよう。
「映画は二回目だけど、涙が出るほど感動した」「私の地元でも道路拡張に悩んでいるけど、勇気が湧いてきた」という声がたくさん寄せられました。
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続いて川柳コーナー。この一年を振り返る公募には35名69作品が集まり、川柳班の乱鬼龍さんと白真弓さんが紹介。そして、『反戦川柳人 鶴彬の獄死』の著作もある佐高信さんが講評しました。
◆川柳班が選んだ特選二句
銃口にひるまぬ民の底力 夜市
ファシズムをSNSが連れてくる なずな
◆佐高信の選句 <レイバーフェスタの投句 (1点句以上の30句)から>
光州の死者も寄り添う国会前 なずな
会場には「テレビで会えない芸人」松元ヒロさんの姿もあり、登壇して会場を沸かせてくれました。
音楽コーナー「詩と歌で奏でる抵抗のコレクション」は、ジョニーHと初登場の「えびのから」の歌、Rico&Tatsu(上写真)、劇団もっきりやが、それぞれ個性あふれるパフォーマンスを披露。特に障がいを持つTatsuさんとお母さんのコラボに、胸を打たれたという声がありました。
そしていよいよ、ダニーネフセタイさん(上写真)の講演。
戦闘機がカッコいいどころか、超カッコイイと思ってた20歳のダニーさん。隣国の人を敵だと疑わずに過ごしていたダニーさんが、「戦闘機は人殺し以外の何物でもない」「同じ人間を敵だと思い込ませるのは教育」、そして「戦争は人間の本性だというのは嘘。戦争してるのはホンの一部。終れば、なんで戦争したのか忘れてしまっている」と、本質的なことをユーモアたっぷりに話します。スクリーンに映し出されるパワポもわかりやすい。自分の体験を正当化せず、省察した末につかみ取ったものばかり。だから多くの人の心に届く。沢山のことを教えられた50分でした。
*わかりやすいプレゼンテーションに、スクリーンの写真を撮る人たちも多かった
レイバーネットの活動の一つとして2010年にスタートしたレイバーネットТVは、今年200回を越えました。その記念として、10分間のダイジェスト映像を上映した後、いよいよ三分ビデオ大会です。川柳は17文字、動画は三分。このカセの中で、どれだけ豊かな表現ができるか。それがレイバーフェスタの見どころでもあります。
今年は、これまでにないほどバラエティー豊かな20作品が集まりました。パレスチナ、沖縄、被ばく、労働、生きること死ぬこと、寄せ場、高齢化と病、街頭での表現、戦後、AI、自然の中に生きる喜び・・・上映したあと、四名の審査員に、好きな作品を選んでもらいました。
・柴田武男賞・・・『原告三番の陳述』(堀切さとみ)
・関昭生賞・・・『吾輩は認知症である』(鈴木敏明)
・井上芙紗子賞・・・『猫と母』(北穂さゆり)
・鴨下美和賞・・・『無関心』(遠藤大輔)
午後二時から九時過ぎまで、長時間にわたるイベントでしたが、様々な現場で奮闘する人たちはもとより、初めての人や、久しぶりの人にとっても、出会いと親交の輪が広がる場になりました。
以下、寄せられた感想です。
◆レイバーフェスタには希望があり、希望には涙がついてくることをこの歳で知りました。
◆課題はたくさんありますが、こうやって文化的に繋がって、社会を風刺することは生きる力になると思いました。イスラエル軍兵士を経験したダニーさんの「共生」という言葉にはものすごい説得力がありました。
◆困難ななかで頑張っている、個性的で楽しい仲間がいっぱいいるのを実感できたから、来年もなんとか絶望しないで生きていけそう。
というわけで、また来年も、フェスタで会いましょう!