アーカイブ録画
バス業界のひどい実態! だが、たたかう人たちがいる
2月28日のレイバーネットTVは、「パワハラ横行!バス業界の闇」と題して、初めてバスの労働問題を取り上げた。いつも以上に反応があり、放送開始とともにアクセスが伸びていった。視聴者にバス関係者が多く、いきなり「こんばんは、路線バスの中で見ています。もちろん休憩中ですよ」のチャットが寄せられた。そして「私も路線バス辞めました」「バス会社の解雇は本当にひどい」の書きこみもあった。
人々の生活の足であり、地域社会に欠かせない路線バスだが、いま減便や路線廃止が広がっている。その理由に挙げられているのは「運転士不足」だが、じつは入ってもすぐに辞めていく職場の実態があった。なかでもパワハラ問題が大きかった。
スタジオ出演したのは、西武バスの矢口正さんと国際興業バスの槙野圭さん。司会はこの問題を追いかけてきた堀切さとみさんだった。まず、西武バスユニオン委員長でもある矢口さんが、全体状況を説明した。「全企業の平均年齢は43歳ですが、バス運転士の平均は53歳で年齢が高い。労働時間は177時間に対して193時間、そして賃金は497万円に対して399万円です。この数字を見てもバス業界の長時間労働・低賃金の実態がわかると思います」。しかしなにより問題なのは、「上意下達の職場で、おかしいと声をあげると『圧迫面談(威圧的な面談方法)』や出勤停止処分が待っていること」。矢口さんも1か月の出勤停止を受けた経験がある。
そして現在裁判中の事件も紹介された。それは西武バス上石神井営業所で働く中村文治さん(29歳)のケース。中村さんは事故を起こしたわけでも、職務怠慢だったわけでもなかったが、入社してわずか二年足らずで自宅待機を命じられ、2021年2月19日に解雇通告を突きつけられた。裁判では解雇理由がクルクル変わっていて、まったく根拠のない解雇であることが浮き彫りになっている。ギャラリーから思わず上がったのは、「西武バスってそんなにひどいのか」の声だった。
国際興業バスの実態を語ったのは、槙野圭さん。ある映画(『RAILWAYS 49歳で電車の運転士』)を観たのがきっかけで、バス運転士の仕事に憧れて国際興業バスに入った。しかし7年後、仲間の相談に乗っていた槙野さんは、会社からマークされ、激しいイジメにさらされた。脅迫状まで送りつけられ、パワハラでうつ病、休職に追いこまれた。そして2022年8月に解雇された。解雇通告書が書留ではなく、レターバックで送られてきたのも驚きだった。その後、埼玉労基署に救いを求め労災申請したが、労基署は会社側とグルだとわかった。解雇を認めていないので退職金の支払いもなく、経済的にも追い詰められているが、槙野さんは決して諦めていない。「私はバスの仕事が大好きだ。やめたいとは思わない。たたかって会社をよくしたい。きょう番組に出たのもそのためだ」と述べた。
あっというまの1時間だった。最後の発言を求められ、矢口さんは「利用者も会社も働く人も、みんな笑顔になれる社会をつくりたい。それにはユニオンが重要。西武バスユニオンが加盟している『日本輸送サービス労働組合連合会(JTSU)』に注目してほしい」と。槙野さんは「きょうはみなさんから元気をもらった。じつは私はもうひとつ闘っているものがある。それは、がんです。転移・再発の心配を抱えながらやっている。もし自分が、がんで死ぬことになったときに、パワハラの悔しい思いのままで、悔いを残したくない。そのためにも頑張りたい」と。絶句しながら言葉をつないだ槙野さんに、ギャラリーからは大きな励ましの拍手が起きた。(M)