放送アーカイブ(80分)

 これを「熱弁」というのだろう。後藤政志(元原子力プラント設計技術者/写真中央)さんの怒りはすごかった。9月11日のレイバーネットTV204号で、身ぶり手ぶりを交えて「全原発を止めよ」と後藤さんは訴えた。

 まずスライドを使って、能登半島視察の報告をした。かれが一番驚いたのは、地震で4メートル隆起した黒島漁港だったという。地震前は海だったところが、隆起して陸地になっていた。そこは珠洲(すず)原発の建設予定地だった。

「本当に衝撃を受けました。この地震前と地震後の写真を見てください。海だったところが360度見渡せる陸地になっています。そこは地球とは思えない別世界でした。こんなところに原発を作ろうとしていた。とんでもないことです。反対運動のおかげで私たちは助かったのです」。

 また後藤さんは「危機一髪だった志賀原発」の解説をした。「志賀原発は地震の影響が相当あった。結果としてメルトダウンに至らなかっただけで、“稼働していない”偶然に救われた」と。断層と原発の関係など、技術的な話をわかりやすく語る後藤さん。原発がいかに危険なものであるか、改めて知らされた。

 みんなが関心をもっていた福島第一の「デブリ取り出し」については、「取り出しは不可能に近い。現場もわかっているはず。なぜやっているかといえば、復興の形をとりつくろうためではないか」と批判した。

 また、後藤さんは原発エネルギーの特徴を図を示しながらこう表現した。「他のエネルギーは時間が経過すると出力が弱まってくる。ところが原子力は多重防護がはずれると出力は一気に無限大になる。それが怖いところだ」。原子力は核爆弾として地球さえ破壊する暴走エネルギーであることを教えられた。こんなおっかないものは、早く止めないと・・・。

 視聴者からの「どうしたら再稼働をとめられるか?」の質問に、後藤さんは「世論しかない」と即答した。「原発は怖いというあたりまえのことを周りに伝えていくことが大事だ」。もう一人のゲストである村田弘(福島原発賠償神奈川訴訟原告団長)さんは、「原発を止められないのは、マスコミ、司法の劣化が大きい。私たちは今年6月に最高裁を1000人で完全に包囲した。しかしこれを報道したのは東京新聞と福島の地方紙だけ。朝日・読売・毎日など大手はまったく報じなかった。これでは一般の人に伝わらない。こうした現状を変えていかないと」。

 この日の放送は、2024年後期(9月-12月)の最初の放送ということで、スタジオの背景布をグレーのレンガ調を新調した。落ちついた感じで好評だった。なおこの日午後「サンケン弾圧・尾澤控訴審」の不当判決が東京高裁であった。急きょ、番組の冒頭で2分の動画速報を流し、抗議の意志を共有した。(M)