2024年7月7日に行われた都知事選らか3ヶ月近くが過ぎた9月25日、驚きの得票分布の衝
撃も鎮まり、冷静に振り返ることで、近く行われる国政選挙の参考にしたいと企画された。
司会者も論戦に加わり、予定調和のないスリルを味わえる放送となった。(報告:笠原)

<都知事選で負けたのは「生活と労働」だった!―石丸現象とマスコミの利権化―>
2024/9/25 レイバーネットTV第205号
視聴サイト: https://www.youtube.com/watch?v=mhPGLRRNz_w

司 会:柴田武男(レイバーネットTV運営委員)
ゲスト:竹信三恵子(ジャーナリスト・和光大名誉教授:著書『ゾゾンビ家制度』)
   :長竹孝夫(元東京新聞編集委員・論説委員:著書『首都圏の「綻び」』)

◆論点にされなかった「生活と労働」だが
・会計年度職員制度導入から5年、来春一斉解雇される労働者の問題
 非正規公務員問題に取り組んできた竹信三恵子さんは「人件費削減のために導入された
非正規公務員の増員は、最も人と接する部署からはじまった」と語り始める。ところがそ
こは住民と密接で、関係の積み重ねや経験がものを言う部署。それを法務省に指摘したと
ころ、法的に位置づけていないからいけないとして真逆の会計年度任用(1年)になり、
更新は5回までと法的に正当化した。
・女性の割合が8割はなぜ?
 会計年度職員制度にも、フルタイム任用があるが、これはほぼ定期昇給など正職員と同
じ待遇となるので、雇用側のメリットがないためフルタイムは採用していないという。し
かもこの職種は、人に寄り添ってケアやDV支援など、カウンセラー的仕事が多いため、女
性の希望者が多く、したがって女性が雇用されやすくなるのも一因とか。
 民間の場合は、5年働いたら本採用の道があるが、それより劣悪なのがこの「管制ワー
キングプア」制度だという。
・なぜ『都知事選で負けたのは「生活と労働」』と言ったのか
柴田武男さんは立候補にあたっての宣伝に「労働」にかかわる言葉は2位だった石丸伸二
には皆無。小池百合子には「賃上げ」支援という言葉だけあった。それに引き換え蓮舫は
賃上げ・非正規の待遇改善など、多くの労働問題をハッキリと打ち出していたと分析す
る。
竹信さんはスクールカウンセラーの労働問題について候補者に対してアンケートを行い「
勤務実績を考慮するべきか」など4項目を聴いた。蓮舫さんはきっちり解答してきたが、
小池さんは2つの懸案事項に×をして「残業代を払っていますか?」との問いには「払っ
ています」と誤回答してきた。石丸さんは回答すらしてこなかった。
 このアンケート自体が広く報道されていなかったが、選挙の争点として全く労働問題が
取り上げられなかったということで、生活と労働が負けたと思ったという。

◆ジョニーと乱のコーナー
〇川柳 総括の深さ鋭さこそ問われ   乱鬼龍
    石丸のまねをするだけ右左   一志
○ジョニーHの歌のコーナー
    ゼニだけ大事(元歌「銭形平次」)

◆石丸現象は何だったか?
・正式メディアでは取り上げられないことを発信しているYouTubeの力では?
と柴田さん
 柴田さんは、石丸氏のYouTubeの視聴回数を調べていくと、安芸高田市の市長時代の「
恥を知れ」がFNNのメディアで2022年に1300万回を超えている。通常は大手のFNNですら4
5万なのに突出ていた。この「いびき」は実は脳梗塞のいびきだったことが全く伝わら
ず、それに対する石丸市長の釈明はヒットしてこないとか。日テレニュースなどには上が
っているが、20、30万回程度だという。
・政党離れのYouTube選挙と言えるし、新しい選挙の始まりでは
 長竹孝夫さんは、時代にマッチしているのではとしながらも、第三者が再編集して広く
拡散されたということで、この現象を「怖い」状況といい、竹信さんは選挙にそのような
手法を使うのはどうかという。

◆時給が高ければいいのか
・竹信さんは「いびき」の音より労働者の権利と人権をと!
 小池知事は、時給のアップを表明する。だが、「時給が高い=好待遇」ではない。働く
人の生活のためというより、1年ごとに契約を切っても、すぐに次の人が見つかるから上
司の気に入らない人はいくら優秀でも再雇用はない。つまり人権問題で「いい公務員を育
てて行こう」ではなくて、自由に使える人を貯蔵しようとしている怖い仕組み。
 そんな生活の場から見ると、いびきになんであれだけ反応するのかと疑問を呈する。
・会計年度任用の都民への影響も無視できない
 この「上司に提言が出来ない」ということは、都民から提示される問題をまず最初に受
け止める部署でもあり、その解決法を上司に伝え、解決していくところなのに、その流れ
が滞ることでもあると指摘する。つまり現場が捉えることのできる住民サービスが、上層
部に伝わらないということで、都民にとっては、大きなマイナスになるという。

◆謎多き築地の再開発―—小池は誰を見ているのか
・1期目の公約は「築地を守る」だったが…
「築地を守る」が更地にして再開発に切り替わったのは「いつ? なぜ?」小池さんの思
いが下に伝わっていないのではないか? いや、彼女の変節では?長竹さんと竹信さんが
議論する中、柴田さんは築地地区まちづくり事業の推進メンバーが問題だと。つまり、朝
日新聞社が入っていたのだ。朝日新聞社は新聞発行は赤字で、不動産で収支を合わせてい
るというが、これではこの開発の問題点など、発信できないのではと指摘。
 それに対して竹信さんは、そうとも言い切れないと反論する。長竹さんも加わり、だか
らこそ、そういわれない記事を発信していくべきではという。
・長竹さんの小池擁護に聞こえる発言に反論する
小池さんが当初立候補した時は「築地を守る」だったのに、いつの間にか変化した。それ
は現場官僚たちからの突き上げなどから実現できなかったのでは?という長竹さんに対し
ての反論が二人から出るが、対して長竹さんは歴代首長の政治手腕的経験値の違いと官僚
などとの力関係やその仕事の成果を実例で示していく。

◆会場・視聴者からの質問
・都知事選では、連合東京との関係で労働問題が取り上げられなかった。今回の立憲民主
党代表選でも連合のために、反原発を下したことについて。
 竹信=立憲民主党の本来やるべきことは?という視点から答えると、関東大震災に追悼
辞を贈らない、夜の街がコロナ禍の発信源だと誤った発言で、その仕事に関わる女性たち
が苦労した、東京オリンピックを強行したため感染が広がり、医療関係者の退職が広がっ
たなど失政がいくつもあるが、一つ一つが小さいので表に出で来ない。
 これらは別々のものではなく、根っこは同じ。対策としては、被害者たちが大きな塊に
なって、小池都政に反論していかなければならない。今から組織していけば、母体ができ
るのでは!
 長竹=小池にはたくさんの小さな失政がある。次回選挙に向けてそれらの人たちが繋が
って(ネットワーク化)して都行政の検証していくことが大事で、国政選挙前の今こそや
らなければならない。チェコ1国の予算規模を持つ都は、地方自治体のトップに立って国
に働き掛けるような立場でいてほしい。
  なお、立憲民主党が、反原発を下したことには問題を感じる。

・都の各地で行われている再開発やタワマン建設という悪政
 長竹=例えば、都は防災都市宣言をして、古いビルの撤去や電柱の地中化を進め、死者
の数を現在の10%まで減らせるとしているが、完成予定は、2040年と気の遠くなる先のこ
と。
 実際に防災のためと老朽ビルを壊しても、そこにタワマンを建てているが、それは防災
になるのか?と会場からも都政に対する不満が爆発。
それらを受けて「3期目に入り、利権化が進行してきた小池都政に目を向けていくことが
大事」とまとめられた。

次回の放送予定:10月9日(水) 郵政職場で多発している過労死、自死、パワハラ