法制定の根拠となる「立法事実」が存在していないことが指摘される

<小野政美>(「国旗等損壊罪」反対連絡会」&「わだつみ会」&「ひのきみ全国ネット」)

本日、7月14日、参議院内閣委員会(参考人質疑)が13時から午後3時43分まで開かれました。オンライン傍聴(参議院)での「国旗損壊罪法案」審議の不十分なメモに基づく簡単な報告で、しかも多くの質疑を割愛し、幾つかの重要と思われるものに限定したものですので、どうぞお許しください。

(1)本日、7月14日(火曜日)、13時より、参院内閣委員会で、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案(衆法第18号)」(以下、「国旗損壊罪法案」)の参考人質疑が行われました。参考人は、伊藤俊幸氏(金沢工業大学大学院教授、元海上自衛隊・海将、安保法・リスクマネジメント)、木下昌彦氏(神戸大学大学院法学研究科教授・憲法学・比較憲法・情報法)、橋本基弘氏(中央大学法学部教授・憲法学)の3人でした。本日の参院内閣委員会での参考人質疑は、立憲民主党・杉尾秀哉議員、小島とも子議員塩村あやか、小島議員、公明党・司隆史議員、日本共産党・大門実紀史議員、れいわ・伊勢崎賢治議員などでした。
本日の参院内閣委員会での「参考人質疑」後、7月16日の参院内閣委員会での法案採決、早ければ、7月16(木曜日)には、参院衆院本会議での審議・採決を強行し、すぐに参院本会議での参院内閣員会委員長による「法案」説明後、7月17日の国会会期末(或いは、1週間の国会会期延長)を待たずに、「国旗損壊罪法案」は、今国会で成立することになります

(2)本日、7月14日(火曜日)、13時より、参院内閣委員会で、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案(衆法第18号)」(以下、「国旗損壊罪法案」)の参考人質疑が行われました。参考人は、伊藤俊幸氏(金沢工業大学大学院教授、元海上自衛隊幹部、安保法・リスクマネジメント)、木下昌彦氏(神戸大学大学院法学研究科教授・憲法学・比較憲法・情報法)、橋本基弘氏(中央大学法学部教授・憲法学)の3人でした。本日の参院内閣委員会での参考人質疑は、立憲民主党・杉尾秀哉議員、小島とも子議員塩村あやか、小島議員、公明党・司隆史議員、日本共産党・大門実紀史議員、れいわ・伊勢崎賢治議員などでした。なお、7月9日(木曜)の参院内閣委員会での「国旗損壊処罰法案」質疑者は、 は、松川るい議員(自民)、塩村あやか議員(立憲)、鬼木誠議員(立憲)、牛田茉友議員(国民民主)、休憩を挟む)窪田哲也議員(公明)、高木かおり議員(維新)以上各30分。以下各20分。大津力議員(参政)、山添拓議員(共産)、伊勢崎賢治議員(れいわ)の8名でした。

(3)本日の参考人質疑では、与党推薦の伊藤俊幸氏(金沢工業大学大学院教授、元海上自衛隊幹部、安保法・リスクマネジメント)は、「国旗損壊罪法案」賛成の立場から、各議員の質問に対し、ほぼ同じ以下のような意見を開陳しました。
伊藤俊幸氏は、元海上自衛隊・海将であり、防衛行政官の立場から、『産経新聞』(2026.4)の「正論」で書いたことにいくつか付け加えながら以下のような持論を示しました。この法案は、自由民主義社会で表現の自由を守りための民主的で立法である。表現の自由と自由民主義社会の「境い目」を明確にするものである。表現の自由を無制限にどこまで自由にするのか、「境い目」を立法府で確定することで、社会の分断をなくす酢ことが出来る。特定の思想と公共の福祉を調整するものである。自民党、維新の会、参政党の議員は、伊藤氏の意見に賛成の立場から質問を繰り返しました。

(4)本日の参考人質疑では、木下昌彦氏(神戸大学大学院法学研究科教授・憲法学・比較憲法・情報法)、橋本基弘氏(中央大学法学部教授・憲法学)に対して、立憲民主党・杉尾秀哉議員、小島とも子議員、公明党・司隆史議員、日本共産党・大門実紀史議員、れいわ・伊勢崎賢治議員などから質問がありました。参考人からは、「国旗損壊罪法案」には、法制定の根拠となる「立法事実」が十分に存在していないこと、保護法益もないこと、憲法上の「罪刑法定主義」違反であることも強調されました。

「外国の国旗損壊罪」とのバランスが必要であるとの意見には、諸外国との比較を歴史的文脈抜きに行ってはならないこと、戦後のドイツ・イタリアは、ナチズム・ファシズムを克服した憲法をつくり、国旗損壊罪を憲法に規定したが、それは、「たたかう民主主義」(ドイツ)、反ナチズム、反ファシズムなど、戦後民主主義の憲法秩序への破壊をさせないための規定であると指摘し、その実施は特別に抑制的であることも述べられました。木下昌彦氏は憲法学の立場から、「国旗損壊罪法案」が成立すれば、日本の従来の「憲法法理」を突き崩すことになり、「思想良心の自由」・「表現の自由」を大きく侵害するだけでなく、憲法秩序を解体することを導くものになると強く警鐘を鳴らしました。

橋本基弘氏は、国家の権威を象徴する国旗をあえて燃やしたり、破ったりすることは、それ自体が国家や政府に対する強い異議を表現する行為である、表現の意図や目的を問わなくても、乱用を防ぐための厳格な縛りもなく、処罰の対象とすることそのものが内心の自由を圧迫し、政治的な意見の表明を封じることにつながることを指摘しました。

この間の衆参内閣員会・衆院本会議の審議では、法制定の根拠となる「立法事実」が十分に存在しているとし、実際の被害がなくても、国旗を侮辱的に扱う行為が国民感情などに与ええる影響は大きく、自国の国旗は守らないことに是正が必要であるとしました。刑法上の「器物損壊罪」は他人の物にしか適用されず本人所有の国旗損壊を処罰できないので、刑法上の「外国の国旗損壊罪」とのバランスが必要であり、そのために、「日本国旗損壊罪法」が必要であると主張しました。自民の松野博一議員は、国内で過去、国旗が損壊された3つの事例に加え、交流サイト(SNS)の普及に触れ、「事案発生を将来に向かって抑止する必要がある」と強調し、「国旗を大切に思う国民感情を保護するため処罰規定を設けた」としました。

「日本国旗損壊罪法」の根拠になる「立法事実」を巡っても、諸外国での「国旗損壊」の事例から「予防的立法事実」があるとの答弁を繰り返し、また、「日本国旗損壊罪法」の「保護法益」に関しては、「国旗損壊罪法案」が、「国旗」を損壊することが、「国旗」を尊重する「国民感情」を損壊し、「国家の威信と名誉」を傷つけるものだとの主張を繰り返しました。犯罪構成要件や明確性についても、客観的判断の明確な基準は示されませんでした。「著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」で、公然と国旗を損壊、除去、汚損する行為を処罰する、「意図や目的は問わず、行為の外形や状況を総合的に勘案して判断する」と定めた「国旗損壊罪法案」についての具体的な根拠や具体的な事例を示すようにとの答弁でも、具体的な根拠を挙げた説明をすることなく、「国旗損壊罪法案」の条文を繰り返し抽象的な意見を述べるのみでした。

本日の参考人質疑でも、木下氏も橋本氏も、立法事実がないこと、保護法益もないこと、憲法上の「罪刑法定主義」違反であること、もし、「国旗損壊罪法案」をつくるのであれば、刑法法制審議会で刑事法学者などの専門家の意見を聞くことが不可欠であることも強く指摘されました。

(5)自民・維新・国民民主・参政の4党が共同提出した「国旗損壊罪法案」は、国旗を公然と傷つけた場合などに、2年以下の拘禁、または20万円以下の罰金を科すとしています。国旗損壊罪の創設は、高市早苗首相が持論としてきた法案です。「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨は「将来に向かって(損壊を)抑止」と記すのみで、立法事実や必要性を欠くものです。「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨を「国旗を大切に思う国民感情を保護」としていますが、感情は人によって異なるものであり、国家に批判的な人びとの表現行為を封殺するものであり「思想・良心の自由」・「表現の自由」の侵害そのものです。また、「国旗損壊罪」法案は、 表現の自由への配慮から目的や個人の内心を詮索せず、行為を「構成要件」としていますが、国旗に対する行為が内心に基づく表現である以上、それでは配慮になりません。さらに、「国旗損壊罪法案」は、対象の基準を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる」行為と規定していますが、社会通念と同様、恣意的に解釈され、そのことにより市民の表現の萎縮につながることになります。
本日の参考人質疑でも、木下氏も橋本氏も、そのことを強く強調する答弁を行いました。

(6)本日の参院院・内閣委員会の質疑応答で、日本共産党・大門実紀史議員は、「国旗損壊罪法案」は、6月26日の内閣委員会での日本維新の会の阿部圭史議員の答弁で明らかになったことを追求しました。これまでの審議では、共同提案者である日本維新の会の阿部圭史議員は、6月26日の内閣委員会で西田薫議員の質問に対し、「本法案の成立を契機に、国民が自国への帰属意識や一体感を抱き、国旗を大切にする気持ちや愛国心が醸成されていくと考えている」と答弁を撤回していません。

これまでも、「国旗損壊罪法」共同提出議員は揃って、「内心に立ち入らない」のが法案の趣旨であると繰り返すのみでした。自民党などは、これまで「個人の内心に立ち入らない」と説明してきましたが、前回の質疑で、山添拓議員(共産)は、「国旗損壊罪法案」は、「思想・良心の自由」、「表現の自由」などの自由と人権、人びとの尊厳を侵害し、侵略戦争と植民地支配のシンボルである「国旗」をすべての人々に強制するものであると指摘しました。
前回、高市首相による「国旗損壊罪法」制定を強く求めてきた過去の発言やコラムでの主張を基に、高市首相の内閣委員会への出席を求めましたが、本日の内閣委員会でも招致しませんでした。

(7)本日の参考人質疑でも、最後に質問に立った伊勢崎賢治議員は、政治学者、外交専門家である伊勢崎議員もその条約批准に尽力した経過から、1994年に「子どもの権利条約」を批准した日本は世界で158番目の批准国であったことを示しました。その上で、「国旗損壊罪法」が、年齢制限もなく、子どもの「内心の自由」を侵害し、刑事罰を科すことにより、「子どもの権利条約」13条の「表現の自由」、14条の「思想・良心・宗教の自由」に違反するものであると強く意見を指摘しました。

参考人の木下氏は、「国旗損壊罪法」は、子どもの思想・表現の自由を奪うものであり、委縮効果により、「子どもの権利条約」31条の「子どもの最善の利益」に違反するものであると指摘しました。また、「国旗損壊罪法」によって、「不快なもの」と主観的に判断され刑罰で抑圧することを、子どもたちに見せることで、民主主義の子ども・市民を育てることができなくなると答弁しました。最高裁旭川学テ判決を示しながら、「国旗損壊罪法」は、子どもの人格形成を妨げるものであり、抑制ではなく、違った意見を討議することで表現の自由も守られると強調しました。

前回の伊勢崎議員の質問は、国際人権法違反についての国際人権法違反について、この法案は、「国際自由権規約」『一般的意見34(19条・意見及び表現の自由)』では、制約のない表現に対して規約が特に高く評価しているという見解を示していますが、外務省は「審議中の法案について答弁出来ない」、共同提案の議員の「日本も批准している国際人権規約について、承知しているが、条約は法的拘束力を持つものではない」とするとの答弁に対して、伊勢崎賢治議員(れいわ)は、国際人権法違反について、この法案は、「国際自由権規約」に違反するというものでした。また、伊勢崎賢治議員(れいわ)は、ジェノサイド条約を批准していないこと、「国旗損壊罪法」に制定によって、現在起きているクルド人攻撃など外国人に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムが誘導され、日本国内での差別人権抑圧の動きが大きくなっていくことへ懸念が示していました。

(8)次回参院内閣委員会は、7月16日(木曜)です。の参院内閣委員会の採決を経て、参院本会議に回り、採決され、このままでは、「国旗損壊処罰法案」は、「1週間国会延長」、「60日国会会期延長」を待たずに、7月17日の会期末までに、或いは、1週間の国会会期延長の可能性もありますので、来週の参院本会議採決により、「国旗損壊罪法案」は今国会で成立することになります。
今後、参院内閣委員会・本会議での強行審議・強行採決に反対し、参院内閣委員会・本会議の審議を監視し、思想・良心の自由、表現の自由の侵害・統制の憲法違反の「国旗損壊罪法案」の最終的廃案を実現するために、屈せず、挫けず、諦めず、粘り強く、全国各地で、さまざまな立場から「国旗等損壊罪法」への抗議・廃案の声を上げ続け、小さな声を集めて、大きく声を上げ続け、「法案」廃案をともに目指していきましょう!

以上、不十分なメモに基づく<速報>報告をお許しください。