裁判への支援を訴える八十島さん(中央)

<竪場勝司>  

 東京大学の学費値上げに反対する運動に取り組んでいた学生が、総長に要望書を手渡そうとして安田講堂に入った行為に関して、大学側から停学処分を受けた。学生は東大を相手取って、国家賠償と停学処分を受けない学生としての地位の確認を求める裁判を東京地裁に起こし、10月5日には第3回口頭弁論と報告集会があり、原告側は処分の不当性を訴えた。

総長に要望書を手渡そうとした行為が処分の対象に

 原告となっているのは東大農学部4年生の八十島士希さん。

 訴状などによると、2024年5月、東大が学費値上げを検討していることが報道で明らかになり、八十島さんは学生の有志を集めて「学費値上げ反対緊急アクション」を結成した。同年6月21日、学費値上げに関する「総長対話」がオンラインで実施されたが、内容は決定事項を学生に説明するだけで、対話には程遠いものだった。八十島さんら数人の学生は、準備していた要望書を総長に手渡そうと、守衛の腕をかいくぐって安田講堂に入った。総長室に通じる扉が施錠されているとわかるとすぐに退出し、安田講堂内にいたのは2,3分だった。

 大学側は安田講堂への侵入と守衛への接近を理由に、八十島さんに対し、26年2月から停学2か月の処分を行なった。

 1968年から69年にかけて、学生への不当処分に端を発する東大闘争があり、69年1月に東大と学生自治組織などの間で「七学部団交における確認書」(東大確認書)が締結された。この確認書では「教授会だけでなく、学生や院生、職員もそれぞれ固有の権利を持って大学の自治を形成していることを確認する」としている。

 原告側は、東大確認書では新しい処分制度について「大学当局と学生自治団体との相互で検討する」ことを確認しているが、2004年に制定された処分制度の規定はパブリックコメントを募集しただけなので、この確認に違反しており、無効だと主張。

 また、学費値上げに反対したことに対する処分は、東大確認書でも確認された「自治活動への処分の禁止」に反し、学問研究をし、教育を受ける権利を侵害している、としている。

 被告の東大側は、①確認書は、締結した代表団以外の組織や個別の学生に法律的な効力を及ぼすものではない。新しい懲戒処分制度はパブリックコメントという正当な手続きをへており、有効だ②懲戒処分は懲戒権者の裁量にゆだねられており、原告の行為が危険極まりない行為であったことから、停学処分を科すことは相当だ、などと反論した。

 停学処分の理由を示す具体的事実の主張が、被告側から主張されなかったため、裁判所は第1回、第2回の口頭弁論で、事実を明らかにするように訴訟指揮を行なった。

報告集会の様子

正当な自治活動を「犯罪行為」にすり替えた大学当局

 10月5日の報告集会で、弁護団の和久田修弁護士は、この日の口頭弁論で注目すべき点として、東大確認書について、大学側が初めてコメントしてきた点を挙げた。和久田氏は「大学側は『それは七学部代表団と加藤一郎総長代行だけの合意なのだから、他の学生などに法的な拘束力を及ぼすものではない』などと平然と主張してきた。東大確認書は東大当局が確認書の内容に拘束されるもので、それだけ真摯な手続きを経てみんなで確認したものなのだから、正当な自治活動を処分してはならないという点で、東大当局も拘束されているはずだ。学費の値上げという学生にとって切実な問題があって、対話を求めて総長に要望書を渡そうとした。これだけの本当に正当な自治活動だった。それを大学側は犯罪行為(建造物侵入)にすり替えている」と指摘した。八十島さんは報告集会で「争点はいろいろあるが、これが正当な学生自治活動であるのかというところが一番大きい。大学側は『これは正当な自治活動から逸脱したものだ、だから処分して当然だ』としているが、歴史的にみれば全然そんなことはない。今後の裁判の中で、『それぐらいのことは正当な自治活動ですよ』と証言してくれる方がたくさんいると思う。学費値上げ反対の時以上の運動を、教職員、市民のみなさんと連帯してつくっていきたいので、ぜひ支援をお願いします」と呼びかけた。