伊藤千尋(国際ジャーナリスト)

 米国の中間選挙は地滑り的な民主党の圧勝で、共和党は歴史的な大敗でした。トランプ政権に対する国民の意思がきわめて明確に示されたのです。変化の理由は3つ挙げられます。

 ①理念 アメリカが歴史的に掲げてきた自由と平等、民主主義の理念が復活したこと。一部の金持ちのための政治や権力者の腐敗を許さない、暴力で国民を管理する手法の拒絶、少数者を切り捨てない、など。

 その具体的な表れが初の黒人女性知事(ジョージア州)、初のネイティブ・アメリカン女性知事(ニューメキシコ州)、テキサス州初のヒスパニック系女性知事、ミシガン州で初のイスラム教徒で左派が上院議員に当選したことなどです。

 ②経済 人は理念だけでは行動しません。要は経済。日々の生活あってこその理念です。今回のキーワードは「アフォーダビリティ」(手ごろな価格)、つまり生活しやすさでした。イラン戦争によるガソリン価格の上昇や物価高で生活できなくなった人々が投票行動を変えたのです。

 実はトランプが最初に登場した大統領選のさい、同じ理由で勝ちました。当時の民主党政権が金持ちだけに向いていたのに対し、見捨てられたラストベルト(赤サビ地帯)の貧しい白人を結集するのに成功したのです。それが今回、同じ理由でトランプに跳ね返った。身から出たサビなんちゃって(笑)。

 ③市民運動 とはいえ、人々が孤立したままだったら社会現象にはなりません。変化をもたらしたのは市民運動です。「王様はいらない」など全米に広がった大規模なデモや集会が波状的に繰り返され、それがうねりとなって国民の脳を揺さぶったのです。市民運動の成果と言えます。

 新聞社の特派員としてアメリカ社会を取材して強く感じたのは「市民の復元力」でした。この国の政府はしょっちゅうおかしくなりますが、そのたびに市民が力を発揮して原点に復元させます。政府が何もしなければ市民がNPOをつくって社会を変えます。そこは私たちも学んだ方がいい。日本だってアメリカ国民に習って市民の復元力を培おうではありませんか。

 写真は2001年の9・11テロの直後、全米に広がった中東系の移民を迫害する動きに対し、カリフォルニア州バークレーの大学生が催した反差別集会を取材したときに撮影したものです。このときのアメリカは異様な愛国社会でしたが、それを正そうとする若い力がありました。 (伊藤千尋さんのFBより)