*写真右・現代史研究者、森 健一さんは岡山から参加した。

 乱鬼龍さんの川柳句会の題「8月」に私も投句、「8月にハングルで聴く、〔甲子園の〕浜の風」、豪華粗品に『ビッグ・イッシュー』 の最新号をもらう。

 1日目の夜、堀切さとみさんの取材した国際興業バスの運転手Aさんのドキュメント『バスドライバーにあこがれて』を観る。Aさんは、営業所で仲間外れにされ、心身を痛めつけられる。労働基準監督署は労働災害に認定せず、「不支給」だった。埼玉県で米軍(進駐軍)のバス輸送にあたった小佐野賢治が創業した国際興業バスはAさんを分限処分、解雇してくる。駆け込んだAさんに労働監督官(ほんらいはGメン)は、国際興業のバス職場は、ムラ社会なのだからムラたる営業所を移動するか、牢名主のごとき職場ボスに慣れることではと諭してくる。納得できないとAさんは個人加盟のバス運転手のユニオンに加わり、一気に問題解決に向かう。乗客に感謝されながら安全運行、働き甲斐のある職場にかえていく。

 感想では、Aさんに近い経験から話し合われた。私(森)も鹿児島の私学職場では、「生徒の間には(!)いじめはありません・・」が生徒募集トークだった。牢名主のごとき体育教師が仕切っていた(福岡からセクハラで有罪、実刑となった学園総長が来ると彼がボディガード役)。また、東久留米市の公立中学校にいたジョニーHさんからは、性教育を人権として実践していたら分限処分となった。当時、二つに割れた教員組合(日教組、全教)は、ともに「組織決定にない」、Hさん個人の裁判だとして支援をしない。今でこそ背景にカルト統一教会、日本会議がいたと判ってきた。

 討論に移った。職場での陰湿ないじめを労働問題として正面にとらえることや「組織決定にない」闘いは支援しないなど、旧来の戦後日本の労働組合には、タテ社会、ピラミッド型の組織慣行(労使慣行)を自らも受け入れてしまっている弱点、欠点があった。あくまでも出発は労働者個人の尊厳性だと気付かされたのは、非正規の個人加盟ユニオン、女性、外国人労働者が着目された、ごく最近のことだ。

 2日目のまとめでも、なぜレイバーネット合宿にも若い人が少ない、来ないのかと1970年代の労働運動の高揚期の経験者から問いかけがあった。1989年に総評がなくなり、「連合」時代になったが、非正規、不安定雇用の圧倒的な数の労働者の個人が省みられないから、組織率は低迷し、既存の労働運動は政府、経営側から足元を見られ、後退を余儀なくされたままだ。私は、労働者の個人の尊厳性から運動を組み立ててゆくことの大事さを先の国際興業バス運転手のドキュメントからも確かめられた。

 レイバーネット毛呂山合宿に集まったメンバーは、数十人であったが、総じて個性派が多い。個性派ゆえに他者に配慮がある、これが長所となって、多様な表現活動を通じて、若い世代に闘いの火をつないでいきたいとものだと意気を新たにした。