―虐殺の歴史を直視し、二度と過ちを繰り返さないために―

<宮川敏一>
9月1日、東京・墨田区の横網町公園において、「関東大震災103周年 朝鮮人犠牲者追悼式典」が開催された。式典には多くの市民、労働組合、在日朝鮮人団体、弁護士、国会・都議会議員などが参加し、関東大震災によって犠牲となった朝鮮人、中国人、日本の社会運動家・労働運動関係者らを追悼した。
1923年9月1日に発生した関東大震災では、地震と火災によって多くの尊い命が失われた。しかし、その混乱の中で「朝鮮人が放火した」「朝鮮人が暴動を起こしている」などの流言飛語が広がり、朝鮮人や中国人が軍隊・警察、さらに自警団などによって殺傷される事件が相次いだ。
式典では、震災から生き延びた人々が、その後、人の手によって命を奪われた歴史を決して忘れてはならないとの思いが語られた。犠牲者を追悼するとともに、同じような差別と虐殺を二度と繰り返さないことを誓う場となった。
国の責任と真相究明を求めて
式典の挨拶では、政府が現在に至るまで関東大震災時の朝鮮人虐殺について、その全貌を明らかにする調査を行っていないことへの強い批判が出された。
内閣府中央防災会議の専門調査会が2009年に公表した報告書では、関東大震災時に朝鮮人や中国人などに対する殺傷事件が多数発生したことが記されている。また、虐殺の背景として、当時の日本による朝鮮植民地支配と、それに対する抵抗運動への恐怖、民族的差別意識などが指摘されている。
日本弁護士連合会も、震災直後の朝鮮人・中国人に対する虐殺について、軍隊や流言の伝達など国の行為に誘発された自警団などによって行われたとして、政府に対し謝罪と真相究明を求めていることが紹介された。

小池都知事の追悼文送付中止に抗議
東京都についても、厳しい批判の声が上がった。
歴代の東京都知事は、横網町公園で毎年行われてきた朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を寄せてきた。しかし、小池百合子都知事は2017年以降、追悼文の送付を取りやめており、今年も送付しなかった。
小池知事は、都慰霊協会が開催する大法要に触れ、「全ての方々に慰霊を行ってきた」と説明している。しかし、式典では、自然災害による犠牲者と、民族差別や流言によって人為的に命を奪われた虐殺事件の犠牲者を一括りにすることは、歴史的事実から目を背けることにつながるとの指摘があった。
「過去の歴史を現在の教訓に」
来賓として挨拶した朝鮮総連東京都本部からは、朝鮮人、中国人、日本の社会主義者・労働運動家らの犠牲に哀悼の意が表された。
また、現在も朝鮮学校に通う子どもたちへの差別や、インターネット上でのヘイトスピーチなどが続いていることへの危惧も示された。AIによって偽画像を容易に作成できる今日、根拠のない情報やデマがSNSを通じて急速に拡散する危険性にも触れ、「102年前と同じ過ちを繰り返してはならない」と訴えた。
東京弁護士会からも、正確な事実と歴史認識を持ち、その教訓を未来の世代へ伝えていく必要性が強調された。歴史的事実を歪めたり、なかったことにしたりするのではなく、事実を直視し、差別や偏見による迫害を繰り返さない社会をつくることが重要だとの決意が述べられた。
犠牲者を追悼し、平和と共生を誓う
式典では、参加者が犠牲者に献花し、静かに祈りを捧げた。
関東大震災から102年。大災害の混乱の中で、流言と差別によって多くの人々が虐殺された歴史を、私たちは決して忘れてはならない。
歴史の事実を学び、語り継ぐことは、過去の犠牲者を追悼するだけではなく、現在を生きる私たちの責務でもある。差別や排外主義、デマによって再び悲劇を生み出さないために、民族や国籍の違いを超えて人権を尊重し、ともに生きる社会を築いていくことが求められている。
この日の追悼式典は、犠牲者への哀悼を捧げるとともに、「二度と同じ過ちを繰り返さない」という決意を新たにする重要な機会となった。

