<瀬戸大作>
 このような判決を出す為に何故合計19回の公判期日を3年半を費やしたのだろうか! 原発事故被害者である避難者に避難住宅を仮執行宣言を付し明け渡しを言い渡してきた。更に二倍請求家賃の損害金を全額支払うよう命じた。

●避難者は家賃支払いを拒否したかったのではない。事前説明なしに福島県が勝手に家賃を二倍にしてきた事に起因する。26日の判決で、東京地方裁判所の池田知子裁判長は、無償提供の期間の終了について、「災害公営住宅の整備や除染作業なども進み、生活環境が整いつつあったことなどを考慮していて、県知事の判断が違法とは認められない」が主な理由だった。11名の原告の避難元に裁判官がひとつひとつ確認したのであろうか。疑問が残る。

●2019年3月のセーフティーネット契約終了時に新たな住宅を斡旋する事をしなかった。母子避難で子どもが大きくなるまで避難先に留まりたいとの痛切な願い、避難後に非正規の仕事しか見つからずに貧困と隣り合わせに暮らしてきた。単身者は都営住宅の60歳未満は応募できず、、それぞれの事情に寄り添う事をしてこなかった。

●仮執行宣言による強制追い出しは上級裁判所に控訴したとしても可能だ。いままでの事例でも早い時期に強制執行が強行された。損害金の支払いで更なる困窮に追い込み住まいを奪い原発事故被害者をホームレスにさせても構わないとの非道な判決だ。控訴するか否かは二週間で決めないといけない。原告の避難者の苦しみは極限に達している。原告の意思に基づき私たちは動く。反貧困ネットワークで活動する私は強制執行に備え、住居確保の支援と極度の貧困にならないようにできる事を考えるしかない。

声明 住まいの権利裁判弁護団 2026年10月26日

本日、東京地裁民事第5部は、福島県(本件では「被告」)が応急仮設住宅に居住している福島原発事故による区域外避難者(本件では「原告」)に対して明渡し等を求めたいわゆる「住まいの権利裁判」において、原告避難者らの請求の一部(避難者らの家族に対し、避難者を立ち退かせるよう圧力をかけたことに基づく損害賠償請求)を認めたものの、その余の請求を棄却し、逆に、被告福島県の請求のすべて(住宅の明渡し、セーフティーネット契約終了後の家賃の2倍額の損害金の支払い)を認める不当判決を言い渡した。当弁護団は、これに強く抗議する。

とりわけ、本判決の不当性は、住宅の明渡し命令に仮執行宣言をつけたことにある。判決は上級審で覆る可能性がある。一審判決で、建物の明渡し命令に仮執行宣言をつけるのは極めて異例である。金銭の支払い条項と異なり、建物の明渡しは、強制執行した後に上級審で判決が覆っても取り返しがつかないからである。この点だけでも、裁判所の区域外避難者に対する冷酷な視線が窺える。

本件の最大の争点は、2017年3月末で区域外避難者に対する住宅支援を打ち切った内堀福島県知事の決定(以下「本件決定」)の違法性(裁量権の逸脱・濫用)だった。本件判決は、福島県知事には広い裁量権があると理由なく断じて本件決定の違法性を否定し、社会権規約で認められている居住の権利は、締約国の国民に対し具体的権利を付与したものではないとして一蹴し、本件決定の裁量権逸脱・濫用の考慮要素とすらしなかった。この点は、我々が強く主張したにもかかわらず、当事者の主張からも落としていて、誠に不当である。

また、避難者らに対する説明もなく契約書に損害金2倍条項を潜り込ませたことについては、避難者らが印を押した以上、契約に拘束されるとして、契約締結に至る具体的経緯を検討することなく、福島県の2倍家賃請求を認容した。

本件原告らの氏名を福島県が公開したことの違法性も雑な論理で否定した。

応急仮設住宅の明け渡し請求については、最高裁三浦守裁判官が国際人権を踏まえ、避難者の個別事情を考慮すべきという説得力ある少数意見を書かれた。我々はこの少数意見を援用して、この点を強く主張したが、本件判決は、これを全く無視した。

本件判決は、福島原発事故避難者の具体的な状況を顧慮することなく、原告らの主張を形式論理で安易に退けたもので、司法としてあるまじき杜撰さである。

避難者らは、被ばくによる健康被害を恐れて避難した人たちで、避難したことに全く責任がなく、子ども被災者支援法がいうように、更なる被ばくを恐れて帰還しないという選択は尊重されなければならない。本件決定がなされた後、応急仮設住宅を明け渡す条件がある人たちは明け渡した。残っているのは、明け渡す条件が整わない人たちだけである。原告らは、本件判決によって、それぞれ約400万円から800万円に及ぶ2倍家賃の支払いを命ぜられ、いつ居宅明渡しの強制執行を受けるかわからないという窮地に追い込まれている。本件判決は、市民の司法に対する信頼を強く傷つけた。我々は、これに到底承服できず、控訴して闘いを継続する所存である。