— 乱開発の飛び道具、定期借家制度を撃つ!

<大場ひろみ>
 皆さんは定期借家という制度をご存じだろうか? 元来、立場の弱い借主側を守る制度として機能してきた借地借家法を一部改正する内容で、1999年に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」なる名称で成立、2000年に導入された。基本的に大家(賃貸人)からは借主(賃借人)を一方的に追い出せない普通借家に対し、定期借家契約では契約した一定期間を過ぎれば、大家が再契約を認めない限り借主は退去しなければならない。つまり大家にとって都合のいい制度で、不動産業界の後押しを受けた国会議員の議員立法で生まれた経緯がある。

 よって人気がなく民間でもあまり普及しなかった制度だが、これを拡大解釈して公共住宅に適用する状況が近年見られるようになった。公共住宅を定期借家契約で貸し、住民を追い出して都合のいいように建て替えるーーこの弊害等についてと、特に定借を適用される外国人との共生について考える集会が、10月31日、鷺宮西住宅で開催された。

 そもそも定借と建替え問題で追い詰められているのがこの鷺宮西住宅(JKK東京-東京都住宅供給公社が運営)の住民である。不安を抱える当事者と悩みを共有する他の公共住宅の住民、専門家、関心を寄せる人びとらが集って学び合う場となった。

 冒頭は主催団体の一つである「国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)」の代表幹事・坂庭国晴氏が挨拶。現在東京都では805382人(2026・7・1現在・東京都調査)の外国人が住むが、彼等にとっては住まい探しが困難である。民間では「外国人お断り」が横行し、自ずと公共住宅に集まってくる。これを悩みとせず、団地の活性化につなげようというのが住まい連の考え方だが、彼等の多くは定借契約を結ばれ、不安定な生活を強いられている。この現状を分析し、対策する。また定借を利用し、建替えを進める昨今の在り方に対し、住宅も修繕・メンテナンスすれば100年は持つ、持続可能な社会の一環として生かそうと提案した。

 第1部は「外国人との共生」について。基調講演は岡本祥浩氏(中京大学総合政策学部教授)。日本は労働力として規制緩和して外国人を増やしてきたため、経済状況や地震によって数は上下してきた。高市政権は急激に規制を厳格化しているが、現在人口比率は3.4%、諸外国よりは低い。また家族で暮らすネパール人が増えている。その居住実態について、愛知の公共住宅の例を挙げ、周辺の製造工場に通い、職場と住宅の往復しかしないので、日本人と交流したり言葉を覚えたりコミュニティを築く文化的な機会が少ない。特に言葉の問題でゴミ出しなどトラブルが起きやすい。また定借制度や建替えのせいで、短期居住を強いられ、地域で長く生活を営み「生活資本」(適切な住まいで学校や病院、文化施設や友人などに囲まれ、暮らしていける能力やネットワークを得る)を構築する機会が得にくいという。住まいの問題が充実した暮らしを得られるかどうかに大きく影響することを強調した。  

 次に各団地住民から報告。
 ご当地・鷺宮西住宅の自治会会長である田中一政氏が発言。2003年から定借が公共住宅に適用され、外国人が入ってくるようになった。最初はアフリカ系の留学生、次は中国や東南アジア系、その語ネパール系の人が家族で住むことが多くなった。今や入居者は日本人の高齢者と外国人。「外国人もお客さん(扱い)でなく一緒に住むための努力をしよう」とネパール人家族らに協力してもらって花火大会を開催。ゴミ出しではもめたが言葉が分からないことが大きい(ネパール語で表示しても読めない人が多い)。防災訓練を一緒にやり、何人かの人には自治会に入ってもらったが定借のため短期間で出て行ってしまい、自治会の維持が難しくなっている。自治会がないと意見が言えない。そういう意味でも自治会は大事だと。

 再開発計画が進む高島平団地の星正志氏(住民参加のまちづくりを考える会@高島平)は、全面建替えを迫られている33街区も、33街区の住民の一部を移転させる予定の28街区(継続管理区域)も、定借が建替えのための追い出しに利用されているのではという疑いがある(特に外国人は基本的に定借)という。
 光が丘の小山謙一氏(都営光が丘団地自治会元会長)は、最近外国人が多く入ってくることに対し不満を漏らす日本人が多いが、光が丘の外食産業だけでも7割が外国人の従業員、彼等のおかげで団地の経済・運営が支えられている。自治会では12人の外国人に理事になってもらった。外国人と日本人が手を携えて生きていくまちづくりをと提案した。

 第2部は定借制度について。
 鷺宮西住宅の山本徳太郎氏(鷺宮西住宅自治会建替え対策委員会代表)は、本人も定借であり、再契約の繰り返しで長く暮らしてきたが、2024年の第1回住民説明会で3年後の建替え計画を知らされたという。住民アンケートを採ったが、全面建替え反対が大半にも関わらず、計画は粛々と進み、定借を理由に退去を求められているという喫緊の問題を語った。

 このような定期借家制度の運用実態については、細谷紫朗氏(東京借地借家組合連合会会長)から解説があった。大家の意向一つで一定の期限が過ぎれば、借主の意向に関係なく追い出すことも再契約も可能という賃貸主が圧倒的に有利な制度は、そもそも不動産業界の圧力を受けて生まれた不純な立法であることを指摘。建替え予定の高島平や鷺宮西、大島四丁目団地(後述)の例は駅近の便利な物件で建替えによって利益を上げる目的が疑われる。定期借家制度の公共住宅、特に公営住宅への適用は、住民の合意形成の過程を無視し、そのセーフティネットとしての役割を奪うものだ。「定期借家制度の創設推進派のねらいは、この制度によって都市再開発事業を具体化し土地の『高度利用』を促進することにあります」(パンフ“定期借家制度Q&A”より)。

 他、駅ビル(新宿ルミネ)の定借切り替え強制、従わない場合家賃の値上げなどの乱用、ワーキングプア―相手の1年未満という定借での悪質住宅(ゼロゼロ物件やゲストハウス)の経営(悪用)などの例を挙げ、定借の弊害に対し見直しを求めた。

 江東区の大島四丁目団地は外国人が4割と日本人の高齢者が多いがやはり鷺宮西と同様建替えを求められ、住み続けたい住民が大半にも関わらず、再契約のゆくえも再開発の目的も知らされないままである。どうも弱者をねらい撃ちにして、再開発・建替えを迫り、その飛び道具が定借という事態があちこちで起きているようだ。

 住まい連その他(*)は、問題に直面する当事者を守り、問題を明らかにし、行動するために「定期借家制度の見直しを求める東京連絡会」(仮称)の設立に向って動き出した。こちらもその動向を見守っていきたい。

 *構成予定団体(順不同)
1,東京借地借家人組合連合会
2,東京都公社住宅自治会協議会
3,東京都公営住宅協議会
4,東京23区公団住宅自治会協議会
5,東京都庁職員労働組合住宅支部
6,鷺宮西住宅自治会
7,東京住宅運動連絡会(東京住宅連)
8,国民の住まいを守る全国連絡会(全国住まい連)