根津公子の都教委傍聴記(2026年7月30日)

 公開議題は、議案が都立小・中学校の教科書採択について、報告が ⓵都教委いじめ問題対策委員会答申について ②「学校教育のDX推進に向けた有識会議」の設置について ③「都立第一商業高校の改編に関する基本計画」に基づく入学者選抜方法について。非公開議案に懲戒処分3件があった。小中学校の教科書採択は、来年度は新たな採択年度ではないので特に問題なく承認された。

⓵ 都教委いじめ問題対策委員会答申について  

 この「答申」ではいじめはなくならない、と報告を聞いていて思った。

 文科省のいじめ防止対策推進法を受けて都教委が「いじめ防止対策推進条例」を制定し、いじめ問題対策委員会を設置したのが2014年。1期2年間で都教委から委嘱された学識経験者等10人がいじめ防止に係る取組の推進状況の検証、評価及びいじめの防止等の対策を推進するための方策について答申を出してきた。今回は第6期の答申だった。

 第6期「答申」は6点について検証したという。ア)発達支持的生徒指導の趣旨にのっとったいじめ防止等の取組の推進 イ)発達の段階に応じたいじめ防止等の具体的取組に係る検討及び共有 ウ)教職員の意識啓発及び対応力等の向上 エ)子供自身がいじめ問題の理解を深め、自ら考えて行動できるようにするための取組の充実 オ)専門家等の知見を活用したいじめ防止対策及び早期解決への取組の推進 カ)いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する重大事態への対応力の向上。

 ア)については発達支持的生徒指導を促進したことが成果という。発達支持的生徒指導とは、子ども自身が自らを成長させる力を尊重し、その発達を支える指導を言う。文科省が定義した言葉だ。 イ)については、「いじめ総合対策【子供版】」を作成し都内全公立学校に周知したことが成果。 ウ)については、「いじめ総合対策【第3次】」下巻「実践プログラム編」に「生徒指導の実践上の視点」を追記したのが成果。 エ)以降は略す。

 この検証を経て、今後のいじめ防止対策の一層の推進の方向性——発達支持的生徒指導の趣旨にのっとったいじめ防止等の取組に向けた教職員の対応力の向上や、子どもが自らSOSを出せるようにする取組の充実等5点を挙げる。

 「答申」には、いじめに関する授業を年3回以上、いじめアンケートを年3回以上実施するとなっていることや、いじめ件数はコロナ禍で休校が続いた2019年度以外はうなぎ上りで2015年度は6311件、2025年度が77479件ということが明記されていた。いじめを告発できるようになった側面もあるだろうが、急増もいいところ。

 いじめを受けて自死や年間30日以上の欠席をしたときに(=いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する重大事態)、学校側は「いじめを知らなかった」「いじめは解決した」と言う場合が多く、いじめを受けた子どもの側に立とうとしないことがあまりにも多い。2020年にいじめで自死した町田市小学6年生の場合も、ご遺族がいじめの事実を知りたいと求めたが学校側はそれを隠した。この子の場合は、ご遺族が公表されてきたからわかったことだ。「重大事態」に、これまでの「答申」は一言も触れてこなかった。触れもせずに「重大事態への対応力の向上」を謳うとは、ありえない。

 東京の公立学校での「重大事態」いじめ発覚件数は、2024年度が5件、2025年度が15件、2026年度7月29日時点で6件という(都教委及び区市町村教委集約一覧  年度は事件の起きた年度ではなく発覚の年度  ネットで検索して知った)。「第6期答申」もこうした事実についても一言も触れていない。形だけの「答申」ということだ。

もう一つ思ったこと、それは、子どもも大人社会から良くも悪くも学ぶ。大人社会で外国人ヘイトが激しさを増し、また、障害者差別や職場等でのパワハラ等が横行するなか、子どもたちも自分より「下」に見える人に対して差別・いじめをしてもそれを悪いことと認識しないのではないかということ。21世紀に入ってから学校現場も職階制が導入され、「偉い先生」と「下っ端教員」に階層化された。名札には「主幹教諭」などの階層も明記されると聞く。こうしたことも子どもたちの人権意識、見方考え方に影響するのではないか。

 いじめ防止にはまずは、教員が人権意識を高めることだ。教員が、数々の差別の現実について子どもたちに具体的に提示し、考え合うことを日常的にしていけば、子どもたちは人権に敏感になり、いじめ防止に繋がると私は思う。

② 「学校教育のDX推進に向けた有識会議」の設置について 

 生成AIを学習や校務にさらに活用していくため、8月6日に第1回会議を実施し、4回程度の会議で年度内に提言を実施する予定という。有識者は学識経験者、産業界から5名を選任。

③ 「都立第一商業高校の改編に関する基本計画」に基づく入学者選抜方法について

 2028年度に改編、開校するこの学校の入学者選抜方法の報告だった。受検当日の学力テストは、都教委作成のテスト。国際バカロレアコースは個人面接のほかに英語での面接もある。国際バカロレアコースを不合格となった場合も併願していれば、グローバル・ファイナンスコース(仮称)に進めるという。