2026年9月16日 カリ・トンプソン (レイバーノーツ・スタッフ/オルグ)
【解説:アメリカ最大のスーパーマーケット・ウォルマートは160万人を雇用する最大の雇用主である。全米食品商業労組UFCWなどが組織化を試みているが、成功していない。カナダでは10万人を雇用しているが、カナダ最大の民間労組ユニフォーUniforが2年前に一つの配送センターを組織化していた。この7月、そこで初めて労働協約が発効した。アメリカの多くの労働組合はカナダでも活動している。例えば、チームスターズ労組、サービス従業員労組SEIU、鉄鋼労組、食品商業労組などがそうで、これらの組合は「国際労組」を名乗っている。レイバーノーツ誌はメキシコと共に、カナダの労働組合運動にも注目しており、今回のように多くの記事を掲載している。 レイバーネット国際部 山崎精一】

カナダ・オンタリオ州ミシサガにあるウォルマート配送センターの労働者800人は、他の職場では成し遂げられなかったことに成功した。北米最大の流通大手と2年間の労働協約を結び、その下で働き始めたのだ。
この画期的な労働協約は7月1日に発効した。低賃金と危険な労働環境を理由に労働者がユニフォーUniforローカル252に加入し、組合代表権を獲得してから、ほぼ2年後のことだった。
2年前、ウォルマートは報復措置として、組合を結成した労働者を除くカナダ国内のすべての従業員の賃金を引き上げた。これは、その後の組合結成の動きを食い止めるうえで効果的な策となった。
「ウォルマートは非組合員全員に賃上げを実施し、組織化運動を潰してしまいました」と語るのは、モントリオール近郊のコーンウォールにある倉庫を含め、複数の倉庫で組合組織化運動に携わったユニフォーのオルガナイザー、アンジェラ・ドリュー・キメルマンだ。しかし今では、新協約により、ウォルマートは他の倉庫で賃金を引き上げる際、この倉庫でも同様の引き上げを行わなければならない。組合に組織されている労働者には同額の賃上げが実施され、他の倉庫の労働者だけが賃上げを受けていた期間についても遡及分が支払われた。
ユニフォーはオンタリオ州内の他の倉庫で組合結成の取り組みを再開した。
「びっくりするような経験」
過去の組合組織化運動に対して、ウォルマートは組合と交渉するより施設を閉鎖することを選択してきた。今のところ、この倉庫ではそのような脅しは出ていない。
協約発効から2カ月がたった今、組合員たちは労働者と経営側の双方に向けて、協約の内容についての教育と実施を進めている。
労働者は初めて、懲戒手続きに対して協約に定められた保護を得た。「別の配送センターなら、会社から解雇されると、ほとんど自分一人で対処するしかなく、雇用主のなすがままです」と、ウォルマートで30年間働き、ユニフォーの組織化委員会と交渉委員会のメンバーでもあるロドルフォ・ピロゾは語った。
この倉庫で8年間働くキャスリン・セスパイトは、協約発効後の最初の1週間、同僚とともに暫定的な職場委員を務めた。「まさに目を見開かされる経験でした」と彼女は言う。ある管理職が、労働者に事情を説明する機会を与えず懲戒処分を科そうとしたのだ。
引き延ばし戦術
処分について合意に達するまでには18カ月の交渉を要した。ウォルマートは交渉日程をほとんど提示しないなど、引き延ばし戦術を用いた。
「会社は意図的に手続きを長引かせ、組合員をいら立たせて、組合認証を取り消させようとしていたのだと思います」と、ユニフォーの首席交渉担当者シェイン・フィールズは語った。組合認証の取消しを求める請願もあり、ウォルマートが密かに支援していると労働者から報告を受けたというが、大きな支持を得ることはなかった。
会社はまた派遣労働者を導入し、組合員を代替するぞとほのめかした。
「ウォルマートは従業員に多くの誤情報を吹き込んでいました」とセスパイトは言う。「私は会議で何が言われているかを組合の代表者に伝え、それを受けて組合側が反論できるようにしました。」
「会社は、組合がどのようなものかについて従業員が十分な知識を持っていないことにつけ込んでいました」と彼女は言う。「私たちが直面している課題の一つは、多くの人が組合に関わった経験がなく、それが何なのかを知らないことです」
協約が発効した今、「私たちには、自分たちと仲間を教育するための2年間があります」とピロゾは言う。「変化を起こすのはローカル252の委員長やユニフォーの会長だけではありません。私たち自身が、力を合わせて変えていけるのです」
ウォルマートはなぜ譲歩したのか
オンタリオ州の労働法も追い風となった。同法には、初回の労働協約を対象とする調停手続きが定められている。まず斡旋が行われ、その後、紛争は仲裁による解決へ進むことができる。ユニフォーの首席交渉担当者フィールズがこの手続きを進めるための書類を提出したことで、ウォルマートに妥結を迫る圧力となった。
地理的条件も有利に働いた。労働問題研究者のベンジャミン・フォンは、オンタリオ州とケベック州の大半を管轄するこの地域配送センターを移転することは、五大湖とトロントの都市配置に囲まれた地域事情から、ウォルマートにとって「途方もなく厄介なこと」になると論じている。ウォルマートは、さらに労働法が強力なケベック州では、すでに配送センターを閉鎖している。
ウォルマートで働くサイモン・ヘイフォードは、経営陣が他の倉庫にも組合が広がることを懸念し、組合ができたこの倉庫にこれ以上注目を集めたくなかったため、会社は妥結したのだと考えている。彼とピロゾは、他のウォルマート倉庫で組合を組織化するユニフォーの取り組みに参加している。
「他の倉庫の人たちとも話しましたが、『同じ賃金をもらっているのに、なぜ組合をつくる必要があるんだ』と言われます」とヘイフォードは語った。しかし彼は、安全衛生委員会活動の改善や不当解雇からの保護といった協約のほかの利点が、時間の経過とともに組合の価値を示していくだろうと見込んでいる。

