児玉 繁信 <全労協全国一般 福山ユニオンたんぽぽ 執行委員>

 トランプがイラン戦争を再開した。私たちは戦争の拡大を目の当たりにしている。しかし、再開したものの、イラン戦争は一層泥沼化した。トランプは窮地に陥り、あがいている。何が起きているのかを確認したうえで、あらためてアメリカがイラン戦争全体から手を引くべきであることを述べたい。

横須賀の反戦デモ

1)トランプがイラン戦争を再開した! 何が起きているか?

① 米軍が戦争再開

 米軍のイラン攻撃は、7月7日から始まり13日間連続し、その後断続的に現在(8月1日現在)も続いている。ペルシャ湾全域のミサイル発射拠点など100ヵ所以上を標的にしている。その地域は、およそ200マイル、つまり北のケシュム島のあたりから、バンダルエガニムを経て、南のシーリクまで続く海岸線であり、イランはその沿岸にミサイル発射拠点を1,000基以上配置し、ミサイル装置は発射後、地下基地に戻る。アメリカは破壊しようとしたが、ほとんど効果を上げていない。

 米軍は何をしているか? バーレーンからイランのバンダルアッバースに向けて最新の「プレシジョン・ストライク・ミサイル」、通称PrSM(ATACMSの後継、地対地弾道ミサイル、射程500km、2026年3月イラン戦争で初めて実戦使用)を投入したが、大きな効果はさほどなかった。しかも投入できたPrSMは56発しか用意できなかった。そのため、これまでのJASSM(AGM-158:空中発射型巡航ミサイル、射程:A:370㎞、B:1,000km,D:1,800km)とかトマホーク、それにHIMARS(M142:地対地高軌道ロケット砲システム、射程:370km)、HARM (AGM-88:空中発射型、空対地ミサイル、射程:148km)に頼るしかなかった。40日間戦争で十分な効果をあげなかったミサイルだ。

 米軍の攻撃は、現在(8月1日)もまだ断続的に続いているが、2月28日奇襲攻撃開始時に比べて、その規模は小さい。

 トランプは、B2爆撃機からバンカーバスター投下による地下核施設を破壊すると脅している。B2爆撃機は出撃するだけで莫大な費用がかかり、何度も出撃できないことはよく知られている。しかも2025年6月の爆撃では、イランの地下核施設に決定的な打撃を与えられなかったことも実証されている。

 さらにトランプは、実行していないものの石油施設、発電所、橋などの民間施設を破壊すると脅している。これは明確な戦時国際法違反である。

 7月7日以降、再び戦闘を始めたトランプの攻撃が小競り合いなのは、そもそも全力でいけるだけの軍事的資源がないからだ。すでにミサイル・弾薬が枯渇しつつあり、行き詰っている。トランプは、脅して取引したかった。でも、イランは応じなかった。

2) イランの反撃と警告

 まず確認しておくべきは、この戦争にイランは自らの存亡をかけているということだ。そのことをイラン政府もイラン国民もよく理解しており、徹底して戦う意思を固めている。そこに分裂はない。イラン政府に対する国民の支持は固く、イラン人の戦争継続、被害に耐え抜く能力はきわめて高い。この前提に立って、イランの対応を見なくてはならない。

① 覚書を破棄したのはトランプであり、イランではない

 6月17日に締結した覚書をアメリカが破った、イランではない。

 覚書に署名したカリバーフ国会議長を含めたイラン政権中枢部の誰もが、「交渉のチャンスはもう終わった」とはっきりと言明している。何度もアメリカ・イスラエルのだまし討ちにあったイランに、和解の空気はない。

② イランの反撃の目的は? 

 イラン軍の反撃の目的ははっきりしている。近隣諸国の米軍の攻撃拠点を破壊し、攻撃力を削ることだ。しかも確実に成果を上げている。

 イランの標的は、湾岸地域の地表にある10の米軍基地だ。40日間戦争で十分に破壊していなかったヨルダンの二つの空軍基地、⑴ムワファクアルサルティ基地、⑵プリンス・ハッサン空軍基地を、今回、徹底的に破壊した。また⑶UAEのアルダフラ空軍基地、⑷カタールのアルウデイド基地、⑸バーレーンのアルイーサ基地、⑹クウェートのアリアルサレム基地、⑺オマーンのドゥクム兵站補給港、米海軍の兵站補給港と陸軍基地、⑻バーレーンの米海軍第5艦隊の司令部、⑼クウェートの米陸軍基地、⑽フジャイラにあるUAEの石油施設、航空燃料を精製する製油所、(ホルムズ海峡外にあり、UAEが輸出できる唯一の港)、⑾オマーンのドゥクム港を、攻撃した。

 イランが実行するのは、この10ヵ所を何度も繰り返し攻撃し続けることだ。そうすれば、ペルシャ湾岸地域の米軍基地にはもう兵員を置けなくなり、能力を失う。その結果、米軍はペルシャ湾から撤退せざるを得なくなる。米軍はこれを阻止できない。米軍の攻撃力は、ペルシャ湾外のアラビア海の空母攻撃群からだけとなる。

 地図を見ればわかるが、米軍がヨルダンの空軍基地が機能を失ったら、イスラエルまで後退するしかなくなる。イスラエル基地がイランの次の攻撃対象となる。この意味をイスラエルはよく知っている。フジャイラ港のUAE石油施設攻撃は、UAEの石油輸出を止めようとしている。

 イランに近い湾岸諸国の米軍基地は破壊され、米軍は戦力と攻撃の基盤を失いつつある。これが今、起きていることだ。

③ イランの警告

 7月7日、米軍が戦争を再開した後、イランはかなり強い警告を出した。「もしアメリカがこの攻撃を続けるなら、イランはバブエルマンデブ海峡を封鎖し、核ドクトリンを見直し、そしてNPT(核拡散防止条約)から脱退する」とまで宣言した。その後実際に、バブエルマンデブ海峡はイエメンのアッサンルラー(フーシ派)がサウジのタンカーを止めた。サウジは石油を輸出できなくなった。

 イランの「相応の反撃」のうち最大の効果をあげるのは、湾岸諸国からの石油を完全に止めることだ。2月28日以前、ホルムズ海峡を通じて、日量約2,000万バレルの石油が供給されていた。戦争でホルムズ海峡を閉鎖したため、湾岸諸国からの供給は、サウジの東西パイプラインにより紅海側ヤンブー港から輸出する日量500~600万バレル、UAEがパイプラインを通じてペルシャ湾外のファジャイラ港に送り輸出する日量約150万バレルの、計約700万バレルまで減少していた。今回イランは、この700万バレルも止めると警告し、すでに一部実行しているのである。イランはファジャイラ港を攻撃し、アッサンルラーはバブエルマンデブ海峡を通行するサウジのタンカーを止めている。

 民間施設を攻撃するというトランプの脅しに対しては、イランはアメリカの同盟国である湾岸諸国の石油施設、米資本のデータセンター、淡水化施設などに相応の反撃を行うと宣言している。この応酬はまだ、起きていない。

④ イランの目的は何か? 実現する戦略は何か?

 イランには合理的な目的と戦略がある。二度と攻撃されない安全保障の確保である。

 2025年6月以降の8ヵ月の間に二度も、だまし討ちの先制攻撃をされ、戦争を仕かけられたのではたまらない。イランは中東からのアメリカの影響力排除、米軍基地撤去を求めている。イランとて、米軍を完全にホルムズ海峡や周辺地域から追い出すだけの力はない。ましてや米本土を攻撃する戦力も持っていない。

 しかし、このまま時間が経てば、いずれ米軍のほうが撤退せざるを得なくなることを知っている。米軍の兵器・ミサイル在庫は尽き、軍事費はさらに増大し、また一定の期間石油が止まれば、アメリカ経済の破綻が待っているからだ。目的を実現するためのイランの戦略は、「戦況においてイランが優位に立っている現状を続けること」だ。そうすれば、アメリカが根を上げてくる。アメリカの置かれている立場を、イランはよく理解している。

 一方、アメリカには時間がない。石油備蓄がなくなり、インフレ、金利上昇から、経済恐慌が迫る。戦争に戻っても事態を打開できない。トランプは、時間が経てば支持が落ち、中間選挙には勝てない。だからその前にまた交渉に戻るしかない。

⑤ イランは容易には、交渉に応じない

 イランは、アメリカと交渉する気はないし、譲歩するつもりもない。その姿勢をはっきり示している。

 イランは単に、覚書で定められた手順に従って行動してきた。世界中の人たちが理解しなくてはならないのは、覚書第5項には「イランだけにホルムズ海峡を通過する船舶の安全を確保する権限を与える」と書かれていることだ。アメリカやオマーン、あるいは他の湾岸諸国の名前は一切出てこない。しかも、覚書の中で、これに従わない船舶には、イランが武力で対応すると明記されている。

 にもかかわらず、アメリカはいくつかの船舶をイランの了解なく、オマーン側のホルムズ海峡をこっそり通行させようとした。それでイランが警告し一部の船舶に発砲した。覚書通りの対応である。しかし、それをトランプが「許さない」として、イランへの攻撃を再開したのだ。トランプ政権が覚書を破って攻撃したのである。もっとも攻撃自体も覚書第1項に違反する行為だ。この米軍の攻撃は7月7日以降、現在も続いている。戦争再開の責任は一方的にアメリカ側にある。

 そもそもアメリカは交渉相手として信用がない。何度も裏切ったからだ。再交渉に戻るというなら、イランはアメリカに誠意を示せ!と求めるだろう。新しい交渉に入る前に、アメリカによる覚書の条項の先行実施を求める。その条項とは、例えば、一つはイランの凍結資産の解除。 「まずは誠意を示せ! 交渉前にアメリカが凍結したイランの資産約3,000億ドルを支払え!」という条件。二つ目は、対イラン経済制裁の解除。三つ目に、イスラエルを今すぐレバノンから撤退させろ!だろう。

⑥ イランは核兵器を持つのか?

 このことを述べる前に、真っ先に指摘しかつ非難すべきは、イスラエルが約200発の核兵器をすでに持っていることだ(2026年ストックホルム平和研究所)。これまでイスラエル政府は、暗に「うちは核を持っている。やろうと思えば相手を消せるぞ!」というメッセージを発してきた。これを決して忘れてはならない。欧米・日本の政府、メディアが決して触れない点だ。日本の反核運動さえも積極的に触れない。今、核戦争の危機が迫っている、それはイスラエルからだという現状を、まず認識しなければならない。これを認めないのはイスラエル支持者か、能天気な者だけだ。

 イランは今、選択を迫られている。核兵器を持つアメリカ、イスラエルの二国から脅され、攻撃を受けている。これへの対抗を考えるのは自然なことだ。

 もちろん、イランは核を持つべきではない。

 確かにイランが核を持てば、イスラエルは簡単に動けなくなる。イスラエルは四国ほどの面積しかなく、2発の核爆弾攻撃で壊滅する。一方、イランはより広大な国土を持つため、イスラエルが核兵器でイランを壊滅させるより、イランがイスラエルを壊滅させるほうが、ずっと容易なのだ。また、イランが核を保有する方向に進めば、将来的に周辺のアラブ諸国が続く可能性が高い。中東諸国が核保有国となり核兵器が拡散すれば、今よりもはるかに不安定で危険な核環境に置かれ、安全保障はかえって危うくなる。これらのことをイランはよく承知している。

 そのためこれまでのイラン政権は、核兵器を「持てる能力があることを示すけれども、実際には作らない、持たない」という「理性的な立場」を採ってきた。故ハメネイ師は、宗教的な立場からも核兵器・化学兵器などの非人道的な大量破壊兵器の開発・保持に最も強く反対していたのである(2003年、故ハメネイ師のファトワ)。その指導者層を、アメリカとイスラエルは殺害し、ほぼ完全に排除してしまったのである。

 「イランの新体制は、これまでよりもずっと軍事的で、民族主義的な色合いが強い。宗教的な要素は薄れ、アメリカへの融和的な雰囲気は感じられない。政策を決めている中枢の人たちは、冷静かつ現実的な判断に基づき、実務的に行動している。新体制の団結は固く、イラン国民も全面的に支持している。」(7月13日、チャス・フリーマン元米国防次官補、元サウジアラビア米大使、https://www.youtube.com/watch?v=EaAaR4L5rOM&t=54s)

 イランの新政権は「自分たちは核兵器を持たない、核拡散防止の道を選んできた。でも、それで何を得たのか。結果は、容赦ない攻撃とイラン国民の殺害だった」と述べている。彼らは、いま厳しい選択を迫られている。現状のままアメリカとイスラエルが圧力を加え続ければ、おそらくイランは核兵器を作るだろうし、しかもそれを止める手立てはない。その選択を迫っているのは、核保有国アメリカとイスラエルからの激しい攻撃と脅威だ。それが今の現実である。

 だから、これは本当にまずい状況なのだ。イランを追い込むべきではない。そのためにも、トランプはイラン戦争から手を引かなければならないのである。

3)アメリカの戦略は何か? トランプに戦略などない!

① トランプが覚書を締結した理由

 6月17日、トランプは覚書(MOU)に署名し停戦した。とにかくホルムズ海峡を開放し湾岸諸国からの石油を供給しなければ、アメリカ経済は大変なことになると判断したからだ。トランプは覚書に署名した際、「見てくれ!経済危機が迫っているから、覚書に署名せざるを得なかったんだ。アメリカの石油備蓄はあと4週間分しか残っていない!」と弁明したのである。この事情は、現在も変わっていない。

 J.D.ヴァンス副大統領は「覚書締結は良かった。ホルムズ海峡を再び開けて、市場が渇望していた石油を流通させることができた」と語った。即ち、石油を流通させなければアメリカ経済が混乱し、中間選挙で勝てないことを知っているのである。戦争を嫌い国内問題への対処を求めるトランプの支持団体MAGAもこれを支持した。

② 覚書への反撥が起きた、「これは降伏文書ではないか!」

 ところがまず、イスラエルが激しく反発した。トランプ政権内にも覚書を受け入れることができない者たちが、一斉にトランプ批判の声を上げた。それはイスラエル・ロビーであり、軍産複合体、金融資本であり、ネオコンたちであった。彼らは共和党/民主党の議員を支配し、アメリカの権力を握っている。

 ロン・ポール元下院議員によれば、「米国とイランが署名した覚書は、脅迫と反撃の応酬を受けている。イラン戦争を始めたトランプを、偉大な指導者として称賛していたネオコンたち――レヴィン、ボルトン、ポンペオなど――は、覚書を締結した途端、一転してトランプに反旗を翻した。……トランプの最大の資金提供者であるミリアム・アデルソン(ラスベガスのカジノ王、トランプ陣営に2億5,000万ドル寄付)でさえ、自身の新聞「イスラエル・ハヨム」でトランプを批判した。……さらに注目すべきは、民主党の反応だった。民主党は、そもそも戦争を始めたことよりも、覚書を締結し戦争を終結、あるいは停戦したことで、トランプをより激しく非難した。アダム・シフ上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、この覚書を「降伏」と呼び、クリス・マーフィー上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、この覚書を「恥ずべき文書」と呼んだ。」(Trump’s Attempt to End the Iran War Infuriates the Uniparty by Ron Paul | Jun 22, 2026: https://ronpaulinstitute.org/trumps-attempt-to-end-the-iran-war-infuriates-the-uniparty/

 トランプは、これらの声に負け、再び戦争への道へ転換したのである。トランプが再び戦争の道を選ぶに至ったのは、アメリカ国内の政治事情に拠っている。

 ルビオ国務長官が、イスラエル・ロビー、金融資本、軍産複合体、ネオコンなどの支持をとりつけ、この動きを主導した。トランプは、好戦派として有名なリンジー・グラハム上院議員を新たに側近に登用した。覚書署名を主導したヴァンス副大統領たちMAGA派は、押しのけられた。トランプといえどもディープ・ステートの言うことに従わざるを得ないということが、あらためて判明したのである!

③ しかし、戦争に戻ってもうまくいかない!

 トランプ政権の主要な人たちは、6月17日署名した「覚書」は屈辱的だ!認められない!と非難を浴びせ、戦争に戻ることにしたのだが、戻ってもうまくいかない!

 それは、何度も言い換えられるアメリカの「戦争目的」に現れている。戦争開始時トランプは、戦争目的を「① イラン現政権の転覆、② 核兵器の作成能力の破壊、③ 弾道ミサイルの廃棄、④ ヒズボラ、フーシ派、ハマスなどへのイランによる支援関係を廃絶だ。」と語った。しかし、戦況は思わしくなく、達成できず停戦した。戦争目的からすれば、アメリカ・イスラエルの敗北である。そして戦争再開したトランプ政権の現在の「戦争目的」は、「ホルムズ海峡開放したい、2月28日以前に戻したいんだ!」に変わった。

 では、アメリカの全体的な長期的な戦略は、いったい何なのか? と問われるだろう。

 その答えは、「戦略などない!」である。トランプ政権とアメリカ政府には、戦略はない! 右往左往しているだけなのだ。

 戦争に再び入ったことで、ワシントン、即ちトランプ政権周辺では、これまでの偽物語、偽情報がさらにあふれている。「相手を罰しろ!」、「後悔させろ!」、「多くの人を殺せ!」、「イランのインフラを破壊してしまえ!」などという威勢のいい、しかしできもしない妄想が、あふれている。再び戦争に入るには、謀略が必要だし、偽情報・偽物語がさらに必要となる。現在は、ワシントン周辺から偽情報がよりあふれ、好戦派が主導権を得ている局面である。トランプ周辺は、自分たちの煽った偽情報、作り上げたナラティブ(物語)に自分自身が囚われており、このような妄想を振りまくしかなくなっている。日本政府も主要メディアも、この細切れの偽情報・偽宣伝をそのまま繰返し、実情を把握していない。

 戦闘を再び始めた今、当面はしばらく、小競り合いの戦闘状態が続く。アメリカは可能な限り、イラン船舶の通行を妨害し続ける。一方でイランは、支配権を主張し続ける。そして、時折、双方の間で銃撃の応酬が起きる。そして、いずれかの時点かで、事態はエスカレートする可能性もある。

 一定の時間が経過し戦争の見通しがよりはっきりしたら、トランプ政権内の好戦派が多くは、振り上げた拳の落とし先がないことを知るだろう。「妄想」で再戦へと主導した責任が問われ、トランプは再び交渉に戻ることになるのだろう。

 2025年6月の「12日間戦争」の終結を求めたのは、イランではなかった、イスラエルだった。「もうこれ以上耐えられない。どうか止めてくれ!苦しみを終わらせてくれ!」とアメリカに懇願した。それでアメリカが取引をまとめた。

 では、2026年4月7日~15日はどうだったか? あのとき停戦を強く求めていたのは、イランではなかった、アメリカだった。パキスタンが仲介に入った。その結果、イラン側も渋々ながら同意し、覚書に署名した。

 今回も先に停戦を求めるのは、アメリカ側だ。

④ アメリカが戦争を続けられない二つの理由

 規定する要因は二つある。
 一つは、アメリカの戦力の限界である。攻撃力は、ミサイルの数量にかかっている。2~3週間分の攻撃する数を揃えたろうが、それ以上はない。戦力において、2月28日以前と大きな違いはなく、しかもすでに大半を使い切ったようだ。

 40日間戦争(2月28日から4月7日)の最初のころに行っていたような、大規模な戦闘作戦を実施できるだけの航空戦力はない。40日間戦争の終盤で明らかになったのは、アメリカの戦争継続能力が、すぐに限界に近づいたことだ。おそらく同じ状況が起きている。ATACMSの備蓄は無限ではないし、PrSMも同じ、トマホークも、JASSMも、HARMも、どれも無制限にあるわけではない。HARMミサイルも使用数は大幅に減っている。その上、標的であるイランの地下ミサイル基地を狙って撃っても、爆発はするけど効果がない。それに、増え続ける軍事費の問題が出てくる。

 「そうすると、アメリカがこの状況を維持できる期間はそう長くはない。せいぜい3週間くらいだと推定する。」(7月28日ラリー・ジョンソン元CIA分析官、https://www.youtube.com/watch?v=AQKrk9K1T8k)。その後は、また出口を探し、交渉しようということになる。

 いま一つは、6月17日覚書に署名した理由としてトランプは、「アメリカの石油備蓄はあと4週間分しか残っていない」と語ったことだ。これは言葉通りである。世界経済は「崖っぷち」に追い込まれていて、トランプ自身もそれを認めていた。何週間分かは不明だが、この事情は、現時点も改善していない。

 つまり、今回、アメリカはどのくらい持ちこたえられるか?である。現時点におけるトランプの戦争目的は、ホルムズ海峡の開放、石油供給の再開になった。しかし、戦争を再開したものの石油供給のメドは立っていない。それどころか、サウジとUAEから供給されていた残りの石油も止められた。

 トランプは大きな賭けに出たのだが、うまくいかなかったのである。したがって、「アメリカが勝利する道筋」は、ない!

これらの経過全体を見ると、イランはここでかなり現実的な戦略を採っていると評価できる。その戦略には、筋が通っており冷静に対応している。一方で、アメリカ側の戦略は、それほど筋が通っていない。

⑤ 米軍の地上侵攻はあり得ない!

 米軍が地上作戦を行うことなど、ほとんど不可能である。ペルシャ湾岸地域はイランが、弾道ミサイルと大量のドローンにより航空優勢を確保している。「地上作戦」の話題で惑わされている現状もあるので、言及しておきたい。これは偽情報・偽宣伝の一種に近い。

⑴ 地上侵攻する米部隊はいない! 

 まず、米上陸部隊はいるか? 米兵士、海兵隊員は、何人いるのか? 今、中東に残っている海兵部隊は強襲揚陸艦USSボクサー(ワスプ級強襲揚陸艦、LHD-4)一隻であり、上陸部隊はわずか1,894人しかいない(乗組員1,000名あわせて約2,800人の乗員)。オープンソース・ディフェンダーの公開情報によれば、もう一隻の米海兵部隊は中東から撤収した。

⑵ 上陸できない! 

 揚陸艦はホルムズ海峡を抜け、ペルシャ湾に奥深くまで進まなければならない。イランの石油積み出し施設のあるカーグ島まで海峡から400~500㎞ある。その前に撃沈されてしまう。だからこそ現在、米海軍艦船、空母打撃群は海峡から200マイル以上、沖合にとどまっている。米軍はイランのペルシャ湾沿岸地域での航空優勢を確保できていない。つまり、イランの弾道ミサイルやドローンの攻撃を受けない場所は、どこにもないのである。湾岸諸国の米軍基地はイランによって破壊され続けている。したがって米軍は空からの不十分な援護、近隣米軍基地からの援護なしに上陸作戦を強行することになり、相当の被害を覚悟しなければならない。

⑶ 仮に上陸しても、維持が不可能

 上陸地点は、イランのペルシャ湾岸チャーバハールなどが対象の一つだろうが、まず強襲揚陸艦USSボクサーはそこにたどり着けない。仮にホルムズ海峡を突破できたとして、海兵隊を降ろす際、USSボクサーから大量の上陸用ボートが要る。この時に攻撃されれば大きな被害を受ける。さらに、仮に上陸できたとして、部隊を維持できない。上陸点に塹壕があるわけではない。イランのミサイルと大量のドローン攻撃に耐えることはほとんど不可能だ。しかも今は真夏で、気温が50℃を超える。一人当たり一日8リットルの水が必要だ。常時、水や食料、弾薬、ミサイルを補給しなければならない。これらは容易ではないというよりほとんど不可能だ。

⑷ 空からの兵員投入: 

 残るは、空からの攻撃と空挺部隊の投入、もしくは航空機で兵員を輸送になるが、航空優勢が確保されていない戦場での空からの部隊の投入など、通常ありえない。撃ち落される。一体何機、投入できるというのか? 圧倒的に投入できる兵員が足りない。2003年のイラク戦争時、米軍はクウェートとサウジアラビアに16万5,000人の部隊を集結させたが、12ヵ月以上かかった。しかも、当時米軍はこの地域の制空権を確保していた。

 したがって地上作戦は、誰がどう考えても不可能なのだ。

 スティーブン・ミラー補佐官などのトランプ政権周辺から上陸作戦の話が出ているが、軍事をまったくわかっていない者たちの妄想に過ぎない。戦争をエスカレーションするにしても、アメリカの手は自ずから縛られている。

⑥ アメリカ社会の分裂

 アメリカ社会でイスラエルに対する反対が強まっている。この分裂は、トランプ政権に何らかの影響を与える。ヴァンス副大統領は、戦争から手を引き国内問題に集中すべきだと主張するMAGA勢力の声を代表している。「アメリカファーストとは、イスラエルを優先することではない」という方向に少し踏み出した。

 これに対抗する勢力が巻き返している。政権内でこれを主導しているのはマルコ・ルビオ国務長官。機会あるごとに、イスラエルとイスラエル・ロビー、軍産複合体、金融資本らがアメリカをイスラエルのための戦争に導いてきた。イスラエル・ロビー、金融資本、軍産複合体らは、選挙に大量の資金を投入できる。残念ながら、アメリカの選挙制度は富者の資金力が支配している。イスラエルの戦争にまきこまれるな!という声は、富者に有利なこの選挙制度、寡頭支配の選挙制度にも向かっている。

 ヴァンスとルビオは、2028年の大統領選に出ることを考えており、この対立は形を変えながらも、間違いなく今後も争点になっていく。

 ついこの前、トーマス・マッシー下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)が、「イスラエルへのすべての外国援助を打ち切るよう求める法案」を米下院に提出したが、否決された。だが、賛成票を投じたのは104人もの下院議員だった。民主党議員103人と共和党マッシー議員1人の104人。5、6年前なら、マッシー議員の法案に賛成票を投じたのは2、3人くらいだっただろう。

 一方で、NDAA(米国国防権限法:アメリカの国防費や関連予算を定める法)の第219条(米イスラエル防衛技術協力イニシアティブの設立を定めた条項、両国の防衛産業および技術協力を加速・統合することを目的としている)は削除されなかった。NDAAは下院を通過し、上院も通過する可能性が高い。

 議会内でイスラエル・ロビーから離れる力が働き動揺が生まれている。

4) イスラエルの現在と将来

① アメリカ社会でイスラエル忌避が広がっている!

 アメリカ国民の間でイスラエルの評価は壊滅的に下落している。イスラエルへの支持が、あらゆる層で落ち込んでいる。ニューヨークにはアメリカのユダヤ人が多数住むが、このユダヤ社会でもイスラエルに対する支持が落ち、ガザ虐殺への非難、イラン戦争に反対する声が大きくなっている。CNNは最近、この点を非常にはっきり伝えた。これまで見たこともないような状況だ。
 アメリカのエリート支配層である金融資本、軍産複合体、大手メディア、トランプ政権の一部だけが、イスラエルを支持し戦争を続けている。

② イスラエルはイラン戦争に参加したくない?!

 7月15日、イスラエル運輸大臣が、米軍のKC-135空中給油機がこれ以上ベングリオン空港に来るのを禁止しようとした。つまり、出て行ってほしいと。ただし7月16日になって、ネタニヤフ首相がその決定を覆した。

 なぜイスラエルはアメリカ軍を排除したいと思うのか? 7月のイランによる報復攻撃によって、ヨルダンの米軍基地は壊滅的に破壊され使用不能になった。ヨルダンの米軍基地はイスラエルにとって盾である。米軍はイスラエルの基地まで後退するしかない。イスラエルは、自分たちが次の標的になるとわかっているからだ。

 イスラエルが今、避けたいのは、再びイランの攻撃にさらされる状況に戻ることだ。口先では、「イランの破壊のためにアメリカがイランと戦争をせよ!」と主張しながら、イスラエル自身はイランとの戦争に参加したくない。身勝手な、ムシのいい考えではある。イスラエルの現時点の本心は、「アメリカが単独でイランと戦って、イランを破壊してほしい、イスラエルは関与したくない?!」

 これも、40日間戦争の結果、アメリカの力の後退から、起きている現実の一つだ。

③ イスラエルは戦略変更を迫られているが、対応できない

 軍事力を背景に中東で行ってきたイスラエルの戦略、即ち1996年に打ち出した「クリーンブレイク」構想(オスロ合意を破棄し、イスラエルの「脅威」となるシリア、イラク、レバノン、イラン、リビアなどに攻勢を仕かけ政権を潰し、イスラエルが軍事力で中東を支配する構想、ネオコンのリチャード・パールらが構想しネタニヤフが採用した。「芝を刈る」すなわち、敵対する諸国の指導者を殺し続ける戦術もここから来ている。)を実行してきたのである。これは1992年のアメリカ政府が打ち出したネオコンの主導した戦略「ウォルフィッツ・ドクトリン」と連動している。

 だがいまや、イスラエル政治は「あやふやな」ところに追い込まれている。10月の総選挙でネタニヤフは退陣することになるだろう。代わりにナフタリ・ベネット元首相などが政権をとるだろうが、ベネットは「イランの次はトルコがイスラエルの敵となる」と、先日発言し注目された。イラン戦争に敗北し、もはやイスラエルによる中東の暴力支配は続けられないことが明らかになった現在においても、イスラエルの戦略・方針は変わっていない。

 根本的に言って、イスラエル政治と政治家たちは、イスラエル人を自分たちの「大義」のもとに結集させるために、攻撃の対象となる「敵」を常に必要としている。これは、イスラエル政府の機能の仕方に関する根本的な欠陥であり、いまだにこの政治を続けているのである。

 しかし、アメリカの力の低下、西アジアにおける支配力の低下は、イスラエル政治に戦略と国内外政策の根本的な転換を求めている。これまであったアメリカの強力な後ろ盾は、期待できなくなりつつある。軍事力を背景に中東で行ってきたイスラエルの「クリーンブレイク」構想の実行、すなわち暴力的な中東支配、一方的な攻撃と戦争などは、より難しくなった。

 イスラエル軍は戦術面では非常に「優秀」で、ものすごく「効果的」で残忍な戦闘力を見せるのだが、戦略面では、結局いつもうまくいかず、より大きな失敗へと向かう。戦略的な考察ができないのだ。いまやイスラエルは「崖っぷち」に向かっているのに、イスラエル政治は引き返すことができないのである。

 もしイスラエルが「理性的な戦略」を採るとしたら、この地域でアメリカの相対的な力が落ちていることを考慮に入れ、西アジアを軍事力で支配するこれまでの戦略を放棄し、隣国としっかりした外交的な合意を探るしかない。しかし、イスラエル政府とイスラエル社会はそういう方向には向かっていない。

 理性的な判断、すなわち侵略せず外交で平和的な環境をつくりあげる戦略を採用することは、シオニズムに反しているのである。シオニズムは、最初から攻撃的な信念であり、自分たちが欲する領土から住民を排除することを目的とした政治運動だ。つまり、根本的な問題は、イスラエル社会がシオニズムを放棄しない限り、イスラエルに変化は起きないし、未来はないということだ。

 結局のところ、イスラエルの人たち自身が自国の政治と社会を立て直し、シオニズムを放棄するしかないのだが、現時点においてなお、イスラエル国民の約70%はイランとの戦争を支持している。反対している人もいるが圧倒的に少数派だ。もっとも、イスラエル社会は情報統制されており、「対イラン戦争は勝利した、イスラエルは敗北していない」という偽報道しか報道されていない。いずれにせよ、イスラエル社会には大きな変化の兆しは起きていない。これから起きるとしても相当な時間がかかるだろう。西アジアの国際的な力関係の急速な変化には、とても間に合いそうにない。

 アメリカとイスラエルの関係には亀裂が生じている。アメリカ市民の間で、イスラエルの戦争に巻き込まれることへの拒否が広範に広がっている。イスラエルとその暴力支配を支持しているのは、イスラエル・ロビー、軍産複合体、金融資本などアメリカの支配層の一部だけである。イスラエルへの財政・軍事支援は、米国内向け予算を削り政府債務を増大させており、一方米国内で格差拡大と貧困化が進む。中下層の米市民の大半はこれまでのようなイスラエルの戦争支援と軍事・財政支援を支持しないだろう。

 イスラエルが西アジアで存続するためには、どんな形であれ平和的な秩序を築こうとする方向に転換しなければならない。しかし、シオニズムの目指す方向とは、根本的に両立しない。早急にシオニズムを放棄しない限り、イスラエルには衰退と破滅が待っている。

5)湾岸諸国はアメリカの後退に対応できるか?

 イランは、アメリカに協力する他の湾岸諸国に対して攻撃や警告を続けている。「攻撃されたくないなら、アメリカによる対イラン攻撃を支援したり、手助けしたりするな!」、そういうメッセージを発している。

 湾岸諸国は、徐々にアメリカから離れ始めざるを得なくなっている。サウジは「分かったアメリカ、あなたたちによる安全保障の保証は、実際にはそれほど価値がない」と表明した。この紛争は、アメリカが自覚しているかどうかにかかわらず、湾岸諸国政府と市民に、地域の勢力構図、安全保障をどう再編するかという課題を突きつけているのである。そこにおけるアメリカの地位と関与をなくした、あるいはより小さくした構想が検討されている。

① イランがクウェート、イラクの米軍基地を反撃

 7月のイランによるクウェート、イラク米軍基地への反撃は、戦争拡大というより米軍が後退したため起きたことだ。中東の力関係が変化した一つの現れでもある。

 クウェート政府は、米基地から米軍がイランを攻撃するのを容認し協力した。イランによる攻撃は、このようなクウェート政府をとがめ、かつ弱体化させること、アメリカ支配を排除することを目的としている。もともとクウェートとバーレーンはアメリカの支配下にある傀儡国家である。そのような国家であることをイランは許さない!という意味でもある。サウジ軍とクウェ-ト軍がイラクの民間勢力を爆撃した。今後、イラクの民間政治勢力がクウェート王族政府の支配を終わらせることになるかもしれない。

 イラク米軍基地への攻撃は、イラクにおけるアメリカの影響力の直接的な排除が目的であり、イラク国内政治勢力に対し、アメリカの支配、影響力から自身の力で離れるよう促している。

 これら攻撃は、他の湾岸諸国政府に対するメッセージでもある。「アメリカの支配を受け入れるな!米軍基地を抱え続けてはならない。アメリカと手を切れ!追い出せ!アメリカ抜きの中東の安全保障を作り出す時が来た!」というメッセージだ。

② イエメンとサウジ間の戦闘の背景

 7月13日(月)、イランのハメネイ師葬儀から帰国するイエメン代表団の乗った飛行機が着陸する前に、サナア空港が攻撃された。サウジが支持しているイエメン政府が「攻撃した」と公表し、その後、アメリカ政府関係者2人が「あれはサウジの仕業だ」と語った。それでアッサンルラー(フーシ派)はすぐに報復に出て、イエメンとの国境近くにあるサウジ南西部空港を攻撃した。また、バブエルマンデブ海峡を通行していたサウジの2隻のタンカーを止めた。そこでサウジ側は、イエメンのホデイダ港を爆撃した。するとアッサンルラーは、サウジアラビア南西部にあるシーザーン石油化学精製施設に向けて、ミサイルを発射した。世界でも最も近代的なサウジアラムコの製油所である。攻撃後も火災が続いた。見積りでは、再稼働まで少なくとも4ヵ月はかかる。そこで、サウジは引き下がった。

 サウジはいったい何を考えたのか? 新しい中東の現実を、サウジの支配層はまだ受け入れることができなかったようであり、このような小競り合いが起きたと解するべきだろう。

 イラン戦争が始まってから、サウジは石油をホルムズ海峡から出せず、東西パイプラインを通じて紅海沿岸のヤンブー港まで運び、日量400万~600万バレルを輸出してきた。サウジから攻撃されたアッサンルラーは、バブエルマンデブ海峡を封鎖し、サウジのタンカーを止めたのである。事の重大さをようやく理解し、サウジは引き下がったのである。バブエルマンデブ海峡を止められてしまったら、サウジの石油輸出はさらに激減し資金収入も途絶える。サウジにとっては、極めて深刻な事態が起きたのだ。

 アッサンルラーとサウジが支持するイエメン政府との内戦はもう10年以上も続いてきた。サウジがイエメンを経済封鎖したため、飢餓と餓死が広がった。イエメンの支配者として振舞ってきたサウジだが、今回の紛争では引き下がらざるを得なかった。両国の関係が根本的に変わったことを思い知らされたのである。サウジアラビアは、アッサンルラーのイエメンを無視できなくなった。合理的に考えるなら、アッサンルラーとの交渉による解決を求めざるを得ない。アメリカのイランに対する関係の変化と、まるで相似形のような変化が現れたのである。このようなことを経ながら、中東諸国間の新しい関係は形作られていく。

③ パキスタン/中国の役割はどうか? 

 パキスタンは6月17日の覚書締結ではかなり重要な外交的役割を担った。パキスタンはサウジアラビアともイランとも良好な関係を持っている。イラン戦争後、この地域の安全保障をアメリカ抜きのサウジ、エジプト、トルコ、パキスタンで話し合おうと提案した。

 そこには中国の意向が反映している。中国はイラン戦争を収めたいのだが、現段階では自身が出ていくよりもパキスタンを通じて対応するのがいいと判断しているようだ。

6)トランプはイラン戦争全体から手を引け!

① 7月攻撃したものの、トランプはどうするか?

 7月7日から連続攻撃を行い戦争を再開したが、打開できない。石油の供給を何としても再開しなければならない。トランプはイランとの交渉を探るしかなくなっている。

 「最近、イランへ三つの働きかけがあった。まず、カタールがアメリカの要請を受けて、イランに接触し協議を再開できるか探った。しかしイランは断った。次にパキスタンのシャリフ首相と最高司令官ムニル元帥が、イラン側との再接触を試みた。イラン側は「いや、アメリカと話す準備はまだできていない」と答えた。7月17日の週、イラクのアッザイディー首相が、訪米しトランプと会談した。その後、彼はテヘランへ飛びイラン側と話し合ったが、手ぶらで戻ってきた。イランとは、パキスタンとカタールを通じて連絡を取り合っているようだ。

 その上で、7月26日、イスラエルからの情報があった。ネタニヤフが報告したところによると、トランプはイスラエルに『レバノン、ガザ、ヨルダン川西岸からイスラエル軍を撤退させるよう』要求した。」(7月28日、元CIA分析官ラリー・ジョンソンによる)

 トランプのこの対応は、イラン側がパキスタンに告げた要求、すなわち 「最初の覚書に含まれていた約束が先行して実行されない限り、交渉による解決を検討するつもりはない」に沿った対応を採ろうとしているということだ。まだどうなるかはわからない。

 トランプがいくら大げさな発言をし、好戦的な態度を取り脅しをかけても、アメリカにはもはや、イランに対処するための精密ミサイルを含む兵器在庫がない。それ以上に、結局は石油不足が問題になり、経済を麻痺させる。今はまだ徐々に進んでいるがが、9月末から10月初めまでには、インフレは制御不能になる可能性が高い。ディーゼル燃料も航空燃料も、大幅な不足が起きる。

② イラン戦争全体から手を引け!

 トランプがとるべき最善の道は、イラン戦争全体から手を引くことだ。すべてから手を引き、イランへの経済制裁の撤回を実行し、イランの凍結資産も解除し、湾岸諸国米軍基地から撤退する。そのことでイランとの関係を外交的に立て直す。そうして、両方の海峡、ホルムズ海峡とバブエルマンデブ海峡を再び開通させることである。これしか選択肢は残っていない!

 そうすれば、戦争は終り平和な世界秩序が戻ってくる。石油供給は再開される。

 国際法を破り勝手に戦争を仕かけてきたトランプとイスラエルは、一方的に引き下がらなくてはならない。このような無法者国家とその振る舞いを、世界中の政府と市民は決して許さない。私たちは、アメリカとイスラエルはイラン戦争全体から即刻、手を引け!と、引きつづき声を上げなくてはならない。

 アメリカ・イスラエルの不法な戦争を非難しない日本政府をダメだ! 勝手に戦争を仕かけるのは国際法違反であるのに、これを批判しない高市政権である。国際法を少しも理解していない、遵守するつもりもないことを晒したのである。そのことは、日本政府の発言力、外交力を、自分から放棄し弱めていることでもある。高市政権のやるべきは、アメリカから距離を置き、トランプがイラン戦争全体から手を引き戦争を終結させるように動くことだ。石油を確保するためにもそうしなければならない。 (2026年8月1日記)