半世紀前、日本で生まれ育った韓国人の学生たちが韓国で大量に逮捕される事件が起きた。1975年11月22日に発表されたことから「11・22事件」と言われる。

 突然逮捕された学生たちは、わけもわからないまま、自白を迫られた。「労働党に入ったのはいつだ?」「北(朝鮮)に行ったのはいつだ?」 否定すると、殴る蹴るの拷問が待っていた。眠らせない尋問、水拷問、電気拷問。

 熊本出身の李哲(イ・チョル)と、大阪出身の康宗憲(カン・ジョンホン)のふたりの証言は、拷問、そして死刑判決、24時間手錠をかけられた死刑囚の暮らしを明らかにする。そして、獄中で自分を取り戻し、揺るぎないアイデンティティを獲得していく過程をつぶさに述べる。160人にも及ぶ在日韓国人政治犯、彼らを支えたのは、家族の愛情であり、同窓生などの友情だった。
 
 それから長い時間が過ぎた。スパイ事件は過去のものとなったように見える。しかし、詩人の金時鐘(キム・シジョン)が語るように、心の傷は消えない。

 50年後、かつてこの事件を取材した大阪の2人のジャーナリストが、ドキュメンタリー映画作りを進めた。NHKの元報道カメラマン、小山帥人とMBSの元記者、西村秀樹は、良心囚たちの貴重な証言を記録し、彼らを支えた救援運動のメンバーにマイクを向けた。

 「スパイ」という言葉で、人々を脅し、若者の人生を弄ぶ「闇」は、私たちの社会の底流に今も潜んでいる。「スパイ」が捏造されていく過程を、映画でじっくり感じ取ってほしい。

(ポレポレ東中野で10月3日から16日まで上映、電話03-3371-0088)