●ジャーナリスト・下地毅の沖縄報告 ① 2026年10月4日 沖縄県庁まえで「緊急女性集会」/海兵隊員の強盗殺人容疑逮捕をうけて

 那覇市の女性(39)が被害にあった2026年10月3日発生の強盗殺人事件で、沖縄県警は4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に所属している米海兵隊の上等兵(20)を強盗殺人容疑で逮捕した。

 事件をうけて、「米兵による強盗殺人事件に抗議する女性たちの会」が4日午後7時、沖縄県庁まえの県民広場で「緊急女性集会」をひらいた。

 日曜日の夜に駆けつけた160人は、「あなたは私」「Me Too」「With You」「殺すな」と書いたプラカードをかかげた。黙とうをしながら泣く人があった。ある人はとつとつと語り、ある人は「根源にある日米安全保障条約を破棄する闘争をするときではないか」と声を張りあげた。「すべての基地の撤去を視野に入れてもいいころだ」という訴えに賛同の拍手がひろがった。

 元参院議員の糸数慶子さん(写真左)は次のように訴えた。
 「ことばが無い。米兵による事件事故でこれまでにどれだけの命が奪われてきたのか。どれだけ悲しい思いをしてきたのか。またしても起こった。怒りと悲しみで体がふるえている。沖縄にある米軍基地を増やしてはいけない、新しい基地をつくってはいけないというのは、このような暴力や戦争につながるからです。日米両政府は県民の命をどうしようとしているのか。(米軍普天間飛行場の県内移設で沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設を「容認」している)古謝玄太知事は県民の思いをどのようにして受けとめるのか」

 参院議員の高良沙哉さんは、「この事件をひとりで受けとめるのが辛い……」と泣きながら語り、多くの人が「緊急女性集会」に駆けつけてくれたことに感謝した。
 「ご家族はどれほど無念だろうか。私たち県民は悔しくて悲しい思いを何回しなければいけないのか。基地問題は人権問題です。私たち命の問題です」

 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さんは、うるま市の女性(当時20)が殺害されたあと恩納村の山林に捨てられた2016年の事件を思いだしたとふりかえり、「彼女はさらわれ、強姦され、殺され、藪の中に捨てられた」と語った。この事件では、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町・沖縄市・北谷町)で働いている元海兵隊員(当時32)が殺人や強制性交等致死罪などで有罪判決を受けている。

 「米兵は、米国防総省のテストを受けて採用され沖縄に派遣されている国家公務員です。自由にいつでもどこでも基地の外に出かける自由がある。沖縄の人が基地に入るときは許可とチェックが必要だ。不平等な日米地位協定(注)の抜本的な改正を求めたい」

 子ども支援に関わっている富田杏理さんは、事件のことを多くの人に知ってほしいとスレッズ(Threads)に英文で投稿したことを語った。米兵による事件事故が続いていることを「All the time」と書いたところ、「いつもじゃないだろ」という反応があった。事件の年表を投稿すると、被害者女性を貶める反応があった。

 「次は私かもしれない。私の娘、私の姪っ子かもしれない。命が奪われたことが悔しい。どうすれば平和な島をつくっていけるのか。次は自分の番かもしれないと沖縄の女性が思っていることを、日本のみなさんに分かってほしい」

<事件の概要>
 2026年10月3日、那覇市若狭1丁目のホテルで、部屋の中で女性が倒れているのを従業員が見つけて119番通報した。消防隊員が3日午前4時26分に女性の死亡を現場で確認し、沖縄県警に通報した。防犯カメラに、女性の所持品を持った男がホテルから出ていく姿が映っていた。
 県警は特別捜査本部を那覇署に設置し、3日夜、沖縄市の歓楽街で男を見つけて任意同行をもとめた。4日午前1時39分、米軍普天間飛行場所属の米海兵隊上等兵デビン・ジェイコブ・バラード容疑者(20)を、女性を殺害して財布などを奪った疑いがあるとして強盗殺人容疑で緊急逮捕した。上等兵は「知りません」と容疑を否認しているという。
 県警は4日午後、女性の死因は首を絞められた窒息死だと発表した。

(注)日米地位協定
 米軍関係者による「公務中」の犯罪は米側に第1次裁判権があり、日本の警察・検察は捜査できない(第17条3項a)。「公務外」のときは日本側に第1次裁判権がある(第17条3項b)。
 日本側に第1次裁判権がある「公務外」犯罪でも、容疑者が米軍基地に逃げこむなどして米側が身柄を拘束した場合は、日本の検察が起訴するまでは米側が身柄を持ちつづける(第17条5項c)。
 1960年の締結から改定されたことがなかったが、3人の米海兵隊員による1995年の少女暴行事件を受けて、条文は変えずに運用を変えることを日米合同委員会で合意した。殺人や性暴力といった「凶悪な犯罪」に限って、日本側から要請があれば起訴まえの身柄引きわたしを「好意的に考慮する」というものであり、米側が拒めば実現しない。
 沖縄県は、「運用の改善」ではなく「抜本的な改定」を求めている。①米軍に国内法(米軍機に最低安全高度を守らせる航空法や、基地が原因の環境汚染に対する環境法令など)を適用する②「好意的に考慮する」という運用改善ではなく、殺人や性暴力などの凶悪犯罪のときは起訴まえの身柄引きわたしを義務化する③日本の警察・自治体が捜査や調査できる権利を明記する――などだ。
 今回の事件では、「公務外」であり県警が先に基地外で身柄を拘束しているため、裁判権と身柄拘束については日米地位協定の適用はないと見られている。

【編集部より】那覇在住のジャーナリスト・下地毅(しもじつよし)さんの沖縄報告を10月4日より開始しました。「下地毅の沖縄報告」という常設欄になります。掲載は不定期ですが、現地からの生のレポートにご期待ください。