―日本住宅会議2026サマーセミナー開かれる

<大場ひろみ>
「日本住宅会議」は、住まいは人が人らしく生きるための基本的基盤であることを前提に、住まいに関わる問題を研究し、世論形成に預かることを目指す学術団体で、1982年から続き、一般市民にも開かれた場である。その学習会ともいうべきサマーセミナーが、「タワマンと再開発 住まい・まちづくりを考える」をテーマに8月30日開催というので参加してみた。
場所は板橋区大山。再開発に揺れる現場をまずは希望者が、「大山問題を考える会」の田原佳幸氏の案内で巡るフィールドワークで始まった。何度も通った大山商店街だが、用地買収が進められている都道補助26号線の予定地から、道路が完成するとそれを挟んで建つ格好になる2棟のタワマン(シティタワーズ板橋大山、2年前竣工)を仰ぎ見る位置から観察すると、現在の生活の場である住居や商店街を破壊し、タワマン中心の導線を形成する再開発であることがよく見てとれる(写真)。商店街に近接して立ち並ぶ住居群には、日々変わらぬ人々の暮らしがあるが、さらに計画中のタワマン2棟のため、9月(! 6月から延長)までに立ち退きをと厳しく迫られ、不安にさいなまれているという(「大山問題を考える会」大野厚氏談)。後述するが、彼等のこの先の生活の場が保証されているわけではない。行政は再開発というと「にぎわいのあるまちづくり」とお題目のように唱えるが、今あるにぎわいを守っていくことも大事ではないか。田原氏に聞くと、2棟のタワマンの入居率は、夜の灯りの数から推測するとせいぜい半分位ではないかという。タワマンの貸店舗も7軒入って5区画はまだ未入居だった。勿論そこに立ち退きさせられた店は入っていない。
午後に入って、板橋区グリーンホールの会議室で講演3本が続いた。
1本目は村島正彦氏の「超高層マンションの歴史と展望」。タワマンの歴史をざっと述べた後、アメリカ・デトロイトで大量の高層住宅群が老朽化し、都市の廃墟化を招いている例を引き、タワマンには防災面の不安も勿論だが、維持管理に大きな課題があるという。大規模修繕にかかる費用が、特に老朽化が進む築30年以上から通常マンションの2.5倍はかかると。すると管理費と合わせた修繕積立金が試算で月12万以上にもなるし、積立金が元々少ないと大規模修繕の予算が立たなくなる例も出てくるだろうという。
2本目の講演は、岩見良太郎氏の「タワマン再開発とまちづくり運動2.0」。先の講演のように持続可能性の見通しのない再開発が、何故次々と進められるのか、つまり金儲けのしくみについてである。ここで再開発とは、狭義の都市再開発法に基づく「市街地再開発」をいう。タワマン建設の場合、地権者は「権利変換」によって原則、元の資産価値と等価分のマンション床(権利床)を与えられる。デベロッパーは、事業費を負担することによって、再開発組合の「参加組合員」として保留床(権利床以外の床)を「原価」で取得する。ビルの原価より市場価格は大幅に積み上げられるので、売ったその差額がデベロッパーのまるまる利益になる。ビル階数(床)が増えれば増えるほど(容積率が増すほど)デベロッパーの利益が増える理屈だからタワマンになる。しかも再開発法によって行政から補助金(税金)が得られるので其の分も利益になる。つまり再開発の本質とは、「開発利益の獲得を目指した、土地・建物権利者による共同開発事業」=金儲けであり、元の地権者は基本、元の資産価値だけを受け取るので金儲けにはあずかれない。場合によっては、「生活手段としての土地・建物を資産価値に置き換える」ので零細権利者(狭い土地や建物所有者=価値が低い)は住まいに値する床を権利床として手に入れられず、追い出されることになるのだ。これが住民追い出し・デベロッパー丸儲けのしくみだ。まるで錬金術のようなしくみだから、我も我もと先を考えない乱開発に亡者どもが群がるのだ。これに国や自治体が補助金まで出して後押しして、住民から生活を奪うなど、亡国の所業である。
再開発が見失っているのが、「住まいは人権」という、住宅会議が提唱してきた概念である。もともと「土地の高度利用」、高度成長を目的とした都市再開発法にそんな視点はなく、住民追い出しにも強制力を行使していいことになっている。さすがにこんな非人間的な法の運用に少しは見直しの動きがあるのか、国や自治体が「まちづくり運動2.0」なるものを提唱しだしたらしいが、またぞろ言い抜けや口実に堕すのではないかと気がかりである。
3人目の中島明子氏は、「再開発と住まいの権利」と題して、「住まいは人権」を当たり前のこととするよう、国際的・国内的権利保障と試みを探っている。何より私たちが、住居を資産価値とばかり見るのでなく、住まう権利が誰にでもあることを最低限の認識として持ち合うことが大事だ。
大山や高島平、神戸などから地域の再開発問題の報告もあったが、充実した内容でとても時間が足りなかったほどだ。住宅会議の場は市民みんなに開かれているので、機会があれば参加してみてはどうだろう。


