白田真希(原発再稼働に反対する埼玉連絡会)

 8月30日午前中、さいたま市中央区にあるさいたま新都心合同庁舎1号棟前の花壇に、福島第一原発の除染により生じた放射性汚染土が埋められてしまいました。抗議する市民、心配で様子を見にくる住民ら、およそ70名が合同庁舎前に集まりました。

 国はこれまで首相官邸と経産省などの中央省庁の12カ所で花壇などの植栽に汚染土の再利用を行ってきました。
 汚染土再利用をさいたま市と仙台市の国の出先機関で行うというニュースが飛び込んできたのが8月25日午前中。翌26日、新聞各紙がさいたま市と仙台市への汚染土再利用計画を報じました。特に『埼玉新聞』は1面トップ、社会面でも大きく報じました。ここまでの時点では、「いつ」ということは明言されていませんでした。

 埼玉県知事とさいたま市長、そして仙台市長は、国の方針に「理解」を示し、事実上受け入れたを認めたといえます。また、環境省も、さいたま市も「住民説明会を開く予定はない」としました。

 28日午後、日本共産党さいたま市議団が市の担当課(環境局 環境対策課)にヒアリングを行った書面を入手しました。それによれば、市は30日の汚染土搬入について「国からの連絡はない」と答えていました。また、説明会を行う予定もなく、市に来た問い合わせは国のコールセンターにつなぐしかないという答えでした。

 28日夕方、環境省の記者会見が報じられ、仙台市の搬入・施工は翌29日に行うと発表。さいたま市については「未定」「近く行う予定」とし、日時を明言しませんでした。仙台市の発表は前日、それも午後遅くの発表。28日は金曜日であるため、前日の29日にさいたま市の発表はないでしょう。しかし、金曜日の午後に発表し、土日に行ってしまえば、中止を求める住民からの電話に答える必要はない、だから日曜日にやるだろうと予想し、30日10時半からの抗議行動を呼びかけました。

 29日、仙台市への汚染土搬入・施工が強行されました。抗議行動を行った方のFacebook投稿が流れてきたのですが、驚いたことに環境省HPには9時50分と明記されていたにもかかわらず、抗議する市民が9時半に現地に駆け付けたときには既に搬入はされ、施工が行われていたというのです。ほとんど騙し討ちです。これはさいたま市においても時間を早めてくる可能性があると考え、仲間にもそれを共有しました。

 30日、筆者は朝8時半に現地に到着しました。合同庁舎はJRの線路沿いにあります。まさか…と思いつつ電車の窓から見ると、トラックや作業員が並んでいるではないですか! 新都心駅に着き電車の扉が開くと同時にダッシュし、現地まで走りました。

 合同庁舎前の歩道には既に抗議のために3人が来ていました。さいたま市在住のTさんは朝6時半に来たということですが、既に作業は始まっていたそうです。敷地の中に入り、環境省職員に話し合いを求めたそうですが、警察もやってきて敷地の外に出されたということです。私が着いたときには、カラーコーンとバーで封鎖し、環境省と書かれた上着を来た職員2人がガードしていました。『埼玉新聞』の記者に聞くと、汚染土は前日夜には現地に到着していたそうで、作業は朝の6時過ぎから始まったということでした。

 29日の仙台市では駆け付けた県議・市議は中に入れなかったということでしたが、報道陣は敷地内での取材ができたということです。ところがさいたま市では、報道陣も敷地外に締め出し、記者は環境省職員が立ちふさがるバーの前から望遠レンズでの写真撮影を余儀なくされていました。報道まで締め出すというのはどういうことでしょうか。

 ドキュメンタリー映画『原発の町を追われて』制作者の堀切さとみさんもビデオカメラを持って駆け付けてくれました。「こっそりとやって隠そうと思えば隠せるのに、わざわざこうやって見せるのは〝安全〟をアピールしたいからではないか」と言われたのですが、本当にそれはそのとおりだと思います。そういう意味では報道陣にはしっかり写真・動画を撮らせ「こんなにちゃんとやってるから安全です」とアピールしたいのでは?と思うのですが……、この一貫性のなさはなんなのでしょう。

 新聞社何社かから取材を受けたのですが、ある記者に「報道を締め出したことについてどう思われますか」と聞かれたので、「この問題について『朝日新聞』がいい記事を書いており、また『東京新聞』は「除染土」ではなく「汚染土」と記述する通り、再利用には批判的立場の新聞。この2社を入れたくない、かといって2社だけ締め出すわけにはいかない、だから全部締め出してしまったのではないか」と答えました。記者はそうかもしれないと笑っていました。

 朝6時半に来ていたT氏は途中で具合が悪くなり救急車で搬送されました。無理もしただろうし、頭に血も上っていたでしょう。心配です。

 何人かの人がマイクで指摘していましたが、作業員は防護服どころかマスクもしていませんでした。そして後で写真や動画、ニュース動画を確認したら、手袋すらせず素手で作業を行っている作業員もいました。今回持ち込まれたのは4000Bq/kgだということです。国が勝手に再利用してもよいとした8,000Bq/kgの半分ですが、原子炉等規制法で定められた基準100Bq/kgの40倍です! それを「素手」で作業していたのです! 環境省の職員はそれをただ黙って見ているだけ。なぜ注意しないのでしょうか。環境省は作業員をも目の前で被曝させて平然としているのです。

 合同庁舎の隣には県立埼玉小児医療センターとさいたま赤十字病院があります。新都心の駅のすぐ近くであり、人もたくさん通る場所です。何故そんな場所に汚染土をわざわざ持ってくるのでしょうか。住民の命と安全を守るべき立場の県知事、市長は、なぜ「国のやることだから」と唯々諾々と従うのでしょうか。

 国は放射性汚染土等を2045年3月までに県外で最終処分に移すと約束をしました。全部福島から出してほしいという人も一定数いるだろうし、中間貯蔵施設に土地を提供したけれど、時期がきたら返してほしいという地権者もいるでしょう。私たちは福島第一原発で作られた電気を使っていたということを忘れてはならないと自覚しています。しかし、その上でなお、放射能廃棄物は「閉じ込める」「動かさない」という原則を守るべきだと考えます。放射能汚染の拡散は間違っています。自分のうちの近くには来ないでという「NIMBY」に問題を矮小化しないでほしいのです。

 汚染土を全国に拡散させることは新たな安全神話が作られることを認めることです。「福島復興」をいわば出汁にして、原発事故を過去のことにしようとする、もっといえばなかったことにしようとする汚染土拡散に私たちは反対します。

 動画(7分)