2026年6月18日 ダン・ディマジオ (レイバノーツ副編集長) シェーン・スロータ (同 元編集長)

【解説: 全米自動車労組UAWの定期大会が6月15日から18日までデトロイト市で開催された。ショーン・フェーン会長は来月から始まる役員選挙での再選を目指している。大会では役員選挙での一組合員一票制度の在り方、ストライキ基金の維持、組合費の水準などが議論され決定された。レイバーノーツの記事はこのUAW大会の内情を詳しく報告している。コーカスやスレートなど組合民主主義を保障するための仕組みが組合内部の議論を活発化している様子を伝えていて興味深い。 レイバーネット国際部 山崎精一】

組織化資金の増額とストライキ基金の維持を決議したUAW代議員たち

全米自動車労働組合(UAW)の定期大会に出席した代議員たちは2023年に就任したショーン・フェイン会長の下でUAWが採用してきた積極的な路線を支持した。フェイン会長は就任直後、40万人の組合員を擁する組合を新たな方向へと導き、その象徴となったのが自動車メーカービッグ3に対する2023年の「スタンドアップ・ストライキ」のような大胆な運動だった。

デトロイトに集まった1,000人の代議員は、新規組織化に充てる資金を増額するとともに、ストライキ基金を充実させるため、組合費を月2.5時間分の賃金相当額に維持することを決議した。組合は2028年のメーデーに予定されるビッグ3との再対決を見据えている。この日には15万人の自動車労働者を対象とする労働協約が期限切れとなる。UAWは他の労働組合にも、その時期に闘争のタイミングを合わせるよう呼びかけ、使用者や政治家に対する交渉力を高め、大きな要求を勝ち取ろうとしている。

「この4年間で私たちがどれほど前進したかを忘れないでください」と、4年ごとに開催される大会でフェインは演説した。「私たちは守勢から攻勢へと転じました。そして再び労働運動を牽引する存在になったのです。」

ストライキ基金の拡充

組合費を現行水準に維持することで組合のストライキ基金への資金拠出を継続することが全体の三分の二の多数により決議された。この決定がなければ、ストライキ基金が8億5,000万ドルを超えた時点で、組合費は月2ドルという元の低い金額に日は下げられることになっていた。一部の代議員は、組合費引き下げを組合員に報告できることを期待しており、上限引き上げに反対していた。

今後、組合費が引き下げられるのは、ストライキ基金が13億ドルに達した時点となる。「必要なときにはいつでもストライキを継続できるよう、十分な資金をストライキ基金に確保したいのです」と、ダイムラー・トラックのローカル3520のジェームズ・ワゴナーは述べた。

ストライキ手当は週500ドルから550ドルへ引き上げられる。重要なのは、この決議により、大会と大会の間にストライキ基金から1億ドルを、新規組合員の組織化や力強い団体交渉キャンペーンの構築に充てることが可能になった点である。従来の上限は6,000万ドルだった。

「問われているのは、労働運動を成長・拡大させたいのか、それとも内向きになりたいのかということです」と、カリフォルニア大学の6万人の労働者を代表するローカル4811の財務書記アーメド・アリボイは語った。彼のローカルは第6地域に属し、この数年間で西海岸の大学において数万人の新規組合員を組織してきた。第6地域の代議員は、圧倒的多数でこのストライキ基金決議を支持した。

組織化資金の拡充は、2024年4月のテネシー州フォルクスワーゲン工場での勝利を足掛かりに、南部の他の組立工場への組織拡大を目指すUAWの取り組みにとって極めて重要となる。UAWは現在、アラバマ州のメルセデスおよびヒュンダイ、さらにケンタッキー州とアラバマ州のトヨタ工場で積極的な組織化キャンペーンを展開している。アラバマ州タスカルーサのメルセデス工場では、UAWは2024年5月の選挙で敗れたものの、会社側が反組合キャンペーンの過程で法律に違反したと主張しており、全米労働関係局(NLRB)は現在も公聴会を続けている。

フォルクスワーゲンの労働者たちは、南部全体の組織化に参加することを誓った。「企業が私たちを互いに競わせることは、もう許されません」と、ローカル42委員長のスティーブ・コクランは、6月17日に十数人のフォルクスワーゲン労働者とともに大会会場前に立ちながら語った。「私たちは南部中を回り、私たちの工場で得られているような待遇を受けていない労働者たちを見つけ、彼らを支援することに全力を尽くします。」

拡充されたストライキ基金は、ビッグ3をはじめとする2028年のメーデーストライキに向けた準備としても重要視されている。UAWは、この日をめぐるの運動の構築を「中心的な戦略目標」と位置づけ、「組織化、団体交渉、調査、広報、政治活動を連携させ、最大の力を発揮する団結に向けて取り組む」ことを約束した。

一組合員一票

フェインは、「一組合員一票」制度の下で初めて選出された会長である。この制度は、従来、大会代議員が4年ごとに組合の最高幹部を選出していた方式に代わるものだ。旧制度では、自らを「管理コーカス(Administration Caucus 注1)」と称する勢力が70年間にわたり組合を支配し、人事を厳しく統制し、異論を唱える者を排除する一党支配体制を築いていた。フェイン率いる改革派コーカス「メンバーズ・ユナイテッド」は、2022~23年の選挙で「腐敗反対、譲歩反対、二層賃金制反対」を掲げて立候補した。

組合員は今年後半、再び直接選挙で指導部を選出する。対象となるのは、会長、書記兼財務責任者、副会長3名、地域ディレクター9名であり、これらの役職者が本部執行委員会(IEB)を構成する。

投票用紙は8月21日に発送され、10月6日に開票される。候補者討論会は7月と8月に予定されている。2人以上の候補者で構成される統一候補者リスト(スレート 注2)は、7月10日までに届け出なければならない。

フェインは「ユナイテッドUAW」スレートで立候補している。この陣営には、当初から改革路線を推進してきた指導者が数名含まれる一方、前回選挙ではフェインに反対していた現職の地域ディレクターや上級幹部も多く加わっている。彼らの中には、「スタンドアップ・ストライキ」などの闘争の成功によって考えを変えた者もいれば、おそらく風向きが変わったことを見極めた者もいるのだろう。

反対派

フェイン陣営に対抗して立候補しているのは、もともと彼とともに選出された3人の本部執行委員会(IEB)メンバーである。書記兼会計担当のマーガレット・モックと、副会長のマイク・ブース、リッチ・ボイヤーだ。しかし、新執行部の任期が始まって間もなく、フェイン陣営と対立するようになった。

フェインは、モックが組合の財政を新たな方針を損なう形で運営していると考えていた。モックは、スタンドアップ・ストライキのための新しいポスターや、フォルクスワーゲンでの組合結成運動のための広告看板など、他の役員が必要と考えた支出の承認を拒否した。一方ボイヤーは、ステランティスで労働協約の履行を十分に徹底しなかったこと、さらに組合員から不評だった新たな出勤管理プログラムの責任者であるとして非難された。

フェインの働きかけにより、執行委員会は、ミシガン州ウォーレンにあるステランティスのトラック工場出身であるモックとボイヤーから主要な職務権限を剥奪することを決議した。しかし、その後、組合を監督していた連邦監視官は、執行委員会の対応を「報復行為」と裁定した。今年初め、2人はすべての役職に復帰し、フェイン会長の首席補佐は辞任に追い込まれた。

モックは組合最高財務責任者として再選を目指している。一方、ボイヤーは会長選挙でフェインに挑戦しており、ほかにも数名の知名度の低い候補者が立候補している。ローカル1248所属でステランティス労働者のブライアン・ケラーも再び出馬した。ケラーは前回の選挙で14%の票を獲得し、昨年はフェインのリコール運動を主導したが失敗に終わった。そのほかの3人の候補者は、ローカル651のトリシア・ガイガー、ローカル2147のグレッグ・ムーニー、ローカル677のウィル・レーマンである。

フェイン陣営では、地域ディレクター4人が無投票当選となる見込みである。リージョン1Aのマーク・デパオリ、リージョン6のマイク・ミラー、リージョン8のティム・スミス、リージョン9Aのブランドン・マンシーヤである。それ以外の役職については選挙が実施される。
現時点では、「ユナイテッドUAW」が唯一、統一候補者リスト(スレート)を組んで立候補しているグループである。

直接選挙は組合規約に明記されず

改革派ネットワーク「UAWメンバー・アクション(UMA)」は、大会前夜に年次総会を開いた。(この団体は、フェインを権力の座へ押し上げた以前のコーカスが内部対立で解散した後に結成された。)UMAは、大会初日に可決されたストライキ基金改革案を支持したが、可決された週550ドルではなく625ドルを求めていた。

しかし、UMAはもう一つの重要課題では敗北した。それは、組合員が最高幹部を直接選ぶ権利を守ることである。20以上のローカルと本部役員が提出した修正案は、事実上、「一人一票」の制度を組合規約に明文化する内容だった。この修正案では、大会代議員が直接選挙制度を廃止して代議員選出方式へ戻すことはできず、その変更には全組合員による一票投票が必要となるはずだった。

しかし大会最終日、一人の組合員が異議を唱え、組合の法務顧問はこの修正案を「組合規約違反」と判断した。この動きは旧体制派によって仕組まれたものではないかと懸念する声もあった。

インディアナポリスのアリソン・トランスミッション工場から初めて代議員となったシェリル・マギーは失望を隠さなかった。「組合員が執行委員になって欲しいと考える人を選ぶ権利を代議員の私が代行するわけには行きません」と彼女は語った。「組合員は、私に投票権を奪われるため私を選んだのではないのです。」

今年の最高幹部選挙は、一人一票方式で実施される。しかし、この制度を維持するための闘いは、2030年6月の次回大会でも再び繰り返される可能性がある。
大会では、UMAが支持した決議も可決された。この決議は、UAW加盟職場で30年間勤務して退職した組合員、またはUAWが代表する職場で少なくとも10年間勤務し55歳以上で退職した組合員にも「退職組合員」の資格を認めるものである。それ以前は、年金を受給して退職した人だけが退職組合員と認められていた。しかし、2007年以降にビッグ3へ採用された多くの労働者を含め、現在では年金ではなく401(k)制度が適用される労働者が増えている。

不満

フェインは再選の本命とみられているが、不満が存在することは間違いない。トランプ大統領による電気自動車への攻撃は、自動車メーカーによる数十億ドル規模の投資を揺るがし、一部工場では長期レイオフにつながっている。ステランティスでは、多くの労働者が会社の出勤管理制度に強い不満を抱き、昨年は利益分配金も支給されなかった。また、スタンドアップ・ストライキでUAWが勝ち取った約束――イリノイ州ベルビディア組立工場の再開など――も、いまだ実現していない。そして、譲歩、工場閉鎖、会社との「協調路線(ジョイントネス)」を何十年も経験してきたことから生まれた根深い冷笑主義も依然として広く残っている。

大会では、多くの決議案や修正案がローカルから提出された数百件の提案ではなく、本部執行委員会によって提出されたものであることに不満を抱く代議員もいた。彼らは「執行委員会から決議案を引き出す」手続き(注3)を活用し、大きな案件から小さな案件まで少なくとも6回、この手続きを成立させるだけの支持を集めた。
以前の追認一辺倒だった大会では、承認されていない決議案を委員会から引き出そうと手を挙げる反対派代議員はごくわずかだった。

「前回大会(2022年)は、何十年ぶりかに実質的な内容を持つ議案が委員会から引き出され、討論された最初の大会でした」と、シカゴ・フォード組立工場ローカル551の信託委員であり、UMAの指導者でもあるベテラン改革派スコット・ホールディソンは語った。「今回はさらに多くの議案が引き出されました。発言しようとする代議員も増えています。発言すれば報復されるという恐れは薄れてきました。」

執行委員会から引き出された決議の一つは、UAWがイスラエル国債への投資を売却することを求めるものだった。UAWは何十年もの間、こうした国債を通じてイスラエルを強く支持してきた。現在でも組合は約40万ドル相当のイスラエル国債を間接的に保有している。この決議は「ユナイト・オール・ワーカーズ・フォー・デモクラシー」UAWDコーカスが提出したもので、支持者は主にリージョン9Aの大学院生や法律サービス労働者に集中している。この提案は会派を超えた支持を集め、大会最終日に321対287で可決された。

新しい政治

大会では、組合の新たな選挙政治への取り組みも垣間見えた。フェインが就任して以来、UAWはメイン州上院候補グラハム・プラトナー、ネブラスカ州上院候補ダン・オズボーン、ニューヨーク市下院候補クレア・バルデスといった反体制派の候補者を支援する姿勢を示してきた。「私たちは団体交渉や組織化のやり方を変えたのと同じように、政治のやり方も変えています」とフェインは大会で語った。「私たちを支え、私たちの理想と原則を共有する候補者を支援します。議会には、すでに買収され、金で動く百万長者や億万長者、実業家が十分すぎるほどいます。必要なのは、労働者階級の人々が議会にいることです。」

ミシガン州選出上院議員を目指す民主党予備選で、UAWが支持するバーニー・サンダース型の候補者アブドゥル・エル=サイードも大会最終日に演説した。エル=サイードは代議員に対し、自分は「政治から金を排除し、その代わりに皆さんの懐にお金を入れ、国民皆保険を実現するために立候補している」と語った。

UAW選挙の投票用紙は2か月後に発送される。その後、この組合をフェインが進めてきた闘争的な方向へ引き続き進めたいかどうかは、組合員自身の判断に委ねられることになる。

注1:コーカスは組合内部の自主的な組織で、労働組合内部の結社の自由と言論の自由を保障するために、法律によりその存在が認められている。
注2:同じ主張を掲げる候補者リストのこと。複数のコーカスからそれぞれの立候補者がスレートを組み、選挙戦が闘われる。
注3:UAW大会には各ローカルから多くの決議案や修正案が事前に提出され、執行委員会がその中から大会に提出する決議案や修正案を決定する。取り上げられなかったことに不満なローカルは大会で発言して、取り上げるよう動議を提出ができ、一定の数の代議員が支持すれば、大会の議案として取り上げられる手続きのこと。