
<速報>7月9日参議院内閣委員会「国旗損壊罪法案」審議傍聴の簡単な報告(2026.7.9 小野政美)
本日、7月9日、参議院内閣委員会が午前10時から午後3時5分まで開かれました。オンライン傍聴での「国旗損壊罪法案」審議の不十分なメモに基づく簡単な報告で、しかも多くの質疑を割愛したものですので、間違いなどどうぞお許しください。
(1)昨日の審議は、趣旨説明のみでしたが、本日、7月9日(木曜)に開かれた参院内閣委員会で「国旗損壊処罰法案」の質疑が行われました。本日の<質疑者> は、松川るい議員(自民)、塩村あやか議員(立憲)、鬼木誠議員(立憲)、牛田茉友議員(国民民主)、休憩を挟む)窪田哲也議員(公明)、高木かおり議員(維新)以上各30分。以下各20分。大津力議員(参政)、山添拓議員(共産)、伊勢崎賢治議員(れいわ)の8名でした。
(2)本日の審議において、4党の共同提案者である松川るい議員(自民)は、刑法上の「外国の国旗損壊罪」とのバランスが必要であり、そのためには、「日本国旗損壊罪法」が必要であると改めて主張しました。他の共同提案の議員は、「立法事実」は、諸外国での「国旗損壊」の事例から「予防的立法事実」があるとの答弁を繰り返し、また、「保護法益」に関しては、「国旗損壊罪法案」が、「国旗」を損壊することは、「国民感情」を損壊し、「国家の威信と名誉」を傷つけるものだとの主張を繰り返しました。
「日本国旗損壊罪法」の根拠になる「立法事実」を巡っても、沖縄国体での「日の丸」焼却事件、富山大学学生事件など4件の国旗損壊の実例も根拠になると説明し、諸外国での「国旗損壊」の事例から「予防的立法事実」があるとの答弁を繰り返しました。
また、「日本国旗損壊罪法」の「保護法益」に関しては、「国旗損壊罪法案」が、「国旗」を損壊することが、「国旗」を尊重する「国民感情」を損壊し、そのことにより、「国家の威信と名誉」を傷つけるものだとの主張を繰り返しました。本日の参院・内閣委員会の審議でも、法案提出4党議員の意見は、犯罪構成要件や明確性についても、客観的判断の明確な基準は示されませんでした。
(3)本日の参院院・内閣委員会の質疑応答でも、法案提出議員の意見では、犯罪構成要件や明確性についても、客観的判断の明確な基準は示されませんでした。「著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」で、公然と国旗を損壊、除去、汚損する行為を処罰する、「意図や目的は問わず、行為の外形や状況を総合的に勘案して判断する」と定めた「国旗損壊罪法案」についての具体的な根拠や具体的な事例を示すようにとの野党議員の質問への答弁でも、具体的な根拠を挙げた説明をすることなく、「国旗損壊罪法案」の条文を繰り返し、抽象的な意見を述べるのみでした。
本日の内閣委員会で、自民の松野博一議員は、国内で過去、国旗が損壊された3つの事例に加え、交流サイト(SNS)の普及に触れ、「事案発生を将来に向かって抑止する必要がある」と強調し、「国旗を大切に思う国民感情を保護するため処罰規定を設けた」としました。
さらに、4党の法案共同提案者は、法制定の根拠となる「立法事実」が十分に存在しているとし、実際の被害がなくても、国旗を侮辱的に扱う行為が国民感情などに与ええる影響は大きく、自国の国旗は守らないことに是正が必要であるとしました。刑法上の「器物損壊罪」は他人の物にしか適用されず本人所有の国旗損壊を処罰できないので、刑法上の「外国の国旗損壊罪」とのバランスが必要であり、そのために、「日本国旗損壊罪法」が必要であると主張しました。
(4)自民・維新・国民民主・参政の4党が共同提出した「国旗損壊罪法案」は、国旗を公然と傷つけた場合などに、2年以下の拘禁、または20万円以下の罰金を科すとしています。国旗損壊罪の創設は、高市早苗首相が持論としてきた法案です。「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨は「将来に向かって(損壊を)抑止」と記すのみで、立法事実や必要性を欠くものです。
「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨を「国旗を大切に思う国民感情を保護」としていますが、感情は人によって異なるものであり、国家に批判的な人びとの表現行為を封殺するものであり「思想・良心の自由」・「表現の自由」の侵害そのものです。また、「国旗損壊罪」法案は、 表現の自由への配慮から目的や個人の内心を詮索せず、行為を「構成要件」としていますが、国旗に対する行為が内心に基づく表現である以上、それでは配慮になりません。さらに、「国旗損壊罪法案」は、対象の基準を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる」行為と規定していますが、社会通念と同様、恣意的に解釈され、そのことにより市民の表現の萎縮につながることになります。
(5)改めて、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」の条文は以下です。
◆「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」
(定義)
第一条 この法律において「国旗」とは、国旗及び国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号)に定める国旗として用いられていると社会通念上認められる有体物をいう。
(罰則等)
第二条 人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法に該当するかどうかの判断は、行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行うものとする。
(適用上の注意)
第三条 この法律の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(検討)
2 この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、国旗を損壊し、除去し、又は汚損する状況に係る映像に関するインターネット等の利用の状況、損壊され若しくは汚損された国旗を公然と陳列する行為又はこれに類する行為の発生の状況その他この法律の施行状況等を勘案し、国旗を大切に思う国民感情を保護するのに必要かつ十分なものとなっているかどうか等の観点から検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。
(6)本日の参院院・内閣委員会の質疑応答で、鬼木議員(立憲)は、「国旗損壊罪法案」は、愛国心の強制が真の動機でもあることが、6月26日の内閣委員会での日本維新の会の阿部圭史議員の答弁で明らかになったことを追求しました。共同提案者である日本維新の会の阿部圭史議員は、6月26日の内閣委員会で西田薫議員の質問に対し、「本法案の成立を契機に、国民が自国への帰属意識や一体感を抱き、国旗を大切にする気持ちや愛国心が醸成されていくと考えている」と答弁しました。
本日の質疑応答では、この問題について、「国旗損壊罪法案」共同提案者である勝目議員は、「政治家としての意見を問われて」に応えた答弁であり、「国旗損壊罪法案」共同提案者の趣旨説明のとおりであると答弁を繰り返しました。
山添拓議員(共産)は、はじめに、「国旗損壊罪法案」は、「思想・良心の自由」、「表現の自由」などの自由と人権、人びとの尊厳を侵害し、侵略戦争と植民地支配のシンボルである「国旗」をすべての人々に強制するものであると指摘しました。
また、高市首相による「国旗損壊罪法」制定を強く求めてきた過去の発言やコラムでの主張を基に、高市首相の内閣委員会への出席を求め、理事会での検討事項になりました。
自民党などは、これまで「個人の内心に立ち入らない」と説明してきましたが、国旗尊重や愛国心の強制、義務付けは憲法違反であり、「国旗国歌法」成立後の学校教育現場での式典の国旗掲揚と国歌斉唱の強制から、東京都教育委員会・大阪府/大阪市教育委員会などにより、学校で、教職員に「日の丸・君が代」を強制し、従わなければ処分し、懲戒の対象となっていることを指摘し、今回の法案が同じことを繰り返すのではないかと質問しました。
これに対しては、「国旗損壊罪法」共同提出議員は揃って、「内心に立ち入らない」のが法案の趣旨であると繰り返すのみでした。
(7)最後に質問に立った、伊勢崎賢治議員(れいわ)は、国際人権法違反について質問しましたが、外務省は「審議中の法案について答弁出来ない」とし、共同提案の議員は、「日本も批准している国際人権規約について、承知しているが、条約は法的拘束力を持つものではない」とするのみでした。
伊勢崎賢治議員(れいわ)は、国際人権法違反について、この法案は、「国際自由権規約」に違反するというものでした。
「国際自由権規約」『一般的意見34(19条・意見及び表現の自由)』パラグラフ38では、「政治的言説の内容に関してパラグラフ 13 及び 20 において述べたように、委員会は,政治分野に属する公人及び公的機関に関する公開の議論という状況下では、制約のない表現に対して規約が特に高く評価している」という見解を示しています。
「表現形態が特定の公人に対する侮辱にあたるとみなされるという事実があるにすぎない場合は処罰を科すことを正当とするのに十分ではない。さらに、あらゆる公人は、国家元首及び政府の長など,最高の政治権力を行使する公人も含めて、批判や政治的反対を受けるのは合法とされる。したがって、委員会は、大逆罪、冒涜(desacato)、権威に対する不敬、旗や象徴に対する不敬、国家元首の誹謗、ならびに公務員の名誉の保護などの事項に関係する法律について懸念を表明し、法律は、誰が非難の対象となっているのかが特定できるということだけを根拠として厳しい処罰を最早科してはならないと考える。締約国は、軍隊や行政など、機関に対する批判を禁止してはならない」と示されています。
伊勢崎賢治議員(れいわ)は、ジェノサイド条約を批准していないこと、「国旗損壊罪法」に制定によって、現在起きているクルド人攻撃など外国人に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムが誘導され、日本国内での差別人権抑圧の動きが大きくなっていくことへ懸念が示されました。伊勢崎議員は、来週の内閣委員会でさらに追及するとして質問を終わりました。
(8)次回参院内閣委員会は、7月14日(火)です(時間未定)での「参考人質疑」(参考人未定)です。その後、7月16日(木)の参院内閣委員会の採決を経て、参院本会議に回り、採決され、このままでは、「国旗損壊処罰法案」は、「60日国会会期延長」を待たずに、7月17日の会期末までに、「国旗損壊罪法案」は今国会で成立することになります。
今後、参院内閣委員会・本会議での強行審議・強行採決に反対し、参院内閣委員会・本会議の審議を監視し、思想・良心の自由、表現の自由の侵害・統制の憲法違反の「国旗損壊罪法案」の最終的廃案を実現するために、屈せず、挫けず、諦めず、粘り強く、全国各地で、さまざまな立場から「国旗等損壊罪法」への抗議・廃案の声を上げ続け、小さな声を集めて、大きく声を上げ続け、「法案」廃案をともに目指していきましょう!

