<竪場勝司>
日本人世帯の平均収入を上回る収入を求めるなど、外国人への永住許可要件を厳格化するガイドライン改定案に反対し、撤回を求める集会が8月28日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれ、外国籍の当事者からの訴えなどがあった。

改定案は出入国在留管理庁(入管庁)が8月4日に公表した。年収要件のほか、年金の受給見込み額が厚生年金に30年間加入していた水準に達していることを求めるなど、要件を厳格化した。同時に永住許可の取り消しに関するガイドライン案も公表され、故意ではない在留カードの不携帯なども取り消しの対象になり得る、としている。
「永住の厳格化にNO!」と題した集会は、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)が主催した。移住連は、改定案には国際人権法上の重大な懸念があるとして、国連の人種差別撤廃委員会に緊急通報し、日本政府に撤回を働きかけるよう要請したことを明らかにした。
「日本人世帯と同等水準以上の収入」が要件に
集会では、まず移住連共同代表理事で国士舘大学の鈴木江理子教授(写真下)が、「永住許可に関するガイドライン案の問題点」をテーマに報告した。鈴木教授は、今回のガイドライン案で、「最も問題が多い」と指摘されているのが独立生計要件だと言及。「日本人世帯と同等水準以上の収入」が条件で、「きわめて高い水準が求められている」と指摘した。外国人が極めて不安定な就労を強いられ、低賃金である現状からすると、独立生計要件を満たすことができるのは一部の経済的に恵まれた外国人だけだ、と語った。国益要件についても、単に「国益に反しない」だけでなく、「積極的かつ具体的に日本国に利益をもたらす」ことが明記されたことを指摘した。

鈴木教授は「改定案は安心して安定的に日本で働きたいと望む多くの外国人から『永住への道』を奪うもので、『共にいきる社会』の構築を妨げるものだ」としたうえで、「80年近く継承されてきた永住制度を十分な議論もなく、当事者の声に耳を傾けることもなく、大幅な不利益変更を強行しようとすることは、まさに秩序を乱す行為で、官製排外主義であり、社会を分断するものだ」と強く批判した。
続いて登壇した移住連運営委員で弁護士の丸山由紀さんが、「永住者の在留資格の取り消しに関するガイドライン案の問題点」について報告した。丸山さんは取消事由に挙げられている「入管法上の義務違反」に関するガイドライン案について、「過失であっても対象になっていることは問題だ」と指摘。別の取消事由である「特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと」に関するガイドライン案については「かなり軽微なものも含まれる中で、刑事前科に関しては原則、取り消しになっているのは非常に問題だ」と批判した。
在留カードを忘れただけで、永住資格の取り上げも
当事者として登壇した、日本で生まれ育った米国籍のノアさん(仮名)は、自身も子どもも永住資格で暮らしており、「在留カードの入った財布を忘れた、年金の支払いが遅れた、そうしたミスで、生活の根本に関わる永住資格を取り上げられる恐れがある」と、制度運用の厳格化に大きな不安を表明。「私たちに排除の矛先を向けても、社会は何も良くならない。むしろ、心から日本が好きで、地域や社会に貢献したいという気持ちを持つ人たちの心をくじき、生活を破壊するだけだということを知って欲しい」と訴えた。


