
<竪場勝司>
日本新聞協会の事務局で、労使のやり取りをめぐって「ハラスメント事案」があり、同協会労組が「不当労働行為」として東京都労働委員会に救済を申し立てていた件で、事案の発生から4年以上が経過した今年7月21日、和解が成立した。和解協定は、協会事務局幹部が元協会労組役員に対してとった一部の言動に関し、協会が「元労組役員を傷つけたことを謝罪し、元労組役員が人格や尊厳への配慮を欠いたものと感じたことについて、遺憾の意を表明する」といった内容になっている。
日本新聞協会は全国の新聞社・通信社・放送局でつくる自主的な業界団体。
協会労組の説明によると、2022年5月、組合員の退職日をめぐる協会事務局と組合との折衝の中であった、当時の女性組合役員の言動(協会の顧問弁護士が一般的な法律解釈とかけ離れた見解を示したため、「(顧問弁護士は)そんなとんちきなことを言ってるんですか」と発言)に対し、協会側は「口汚い」と組合委員長に対しメールと電話で告げ口した。組合は謝罪と再発防止を求めたが、協会側は当事者の組合役員の面前で、繰り返し「口汚い」と発言した。
協会側は22年8月、理事・事務局長名で「見解」文書を出し、その中で当事者の組合役員を「過度に感情的になる」などと批判した。同年9月の折衝では、協会側は当事者の発言を引用し、「とんちきちゃん」と発言した。
その後、協会と組合の団体交渉が続いたが、その中でも当事者に対するハラスメントにあたる、やり取りがあった。23年6月の団体交渉で、協会側の代理人弁護士が当事者を指さしてののしり、事務局幹部ら協会側の参加者全員がそれを黙認する「二次加害」が起きた。これらを受け、協会労組は「組織的ハラスメントは不当労働行為だ」として、23年12月、都労委に救済申し立てを行なった。
一部の言動について、協会が謝罪し、遺憾の意を表明
ハラスメントの被害者となった元組合役員の女性は、体調を崩して23年7月から傷病休暇に入り、その後、24年3月末で退職した。
都労委による調査が続き、和解案も提示され、第14回の調査(あっせん協議)で、協会と労組の間で和解が成立した。和解協定では ①22年5月の「口汚い」との告げ口 ②同年8月の見解文書 ③同年9月の「とんちきちゃん」発言、の3点について、協会が謝罪し、「遺憾の意を表明する」としている。
協会は組合側が「二次加害」として指摘していた23年6月の団交の中での言動についてはハラスメントと認めないだけでなく、謝罪もしなかった。
労組は「二次加害を認めなかった協会の姿勢」を批判
新聞協会では2017年にも当時の事務局長らによる職員への深刻なパワハラが明らかになり、幹部らが退陣。ハラスメント防止規程が改定された。規程の中に「人格や尊厳を侵害する言動によって」という文言がある。
協会労組の齋藤甫・書記長は「今回の和解協定の中に『人格と尊厳』の文言が盛り込まれたことはハラスメントを実質的に認めさせたとも評価できる」とする一方、「当事者が退職することに大きな影響を与えた二次加害が、和解協定に入らなかったことは忸怩たる思いがある。協定に盛り込まれた言動も含め、協会が最後まできちんとハラスメントを認めなかったことは大きな問題だ」と話している。
協会労組の争議については、新聞労連が全面支援し、労連傘下の組合も参加して、早期解決を求める社前行動なども行なわれた。新聞労連の杉村めぐる書記は「新聞労連という全国組織の立場から言うと、新聞協会でハラスメントが起きたということは、他の新聞社の労働組合にとっても大きかったと思う。新聞協会は新聞業界の縮図だ。協会にハラスメントを認めさせるために組織的に取り組むことが、業界全体のハラスメントの防止につながる、という思いでやってきた。協会労組が声を上げ、それを支援することで協会を押し込めたのは、全ての加盟組合にとっても意味があった」と振り返った。
今後の取り組みについて、齋藤書記長は「なかったことにしない、というのがすごく大事だ。どういう問題があったのかということを、きちんと協会労組の中でも語り継いでいかないといけない。新聞労連など外部とのつながりを維持しながら、労使対等の関係をつくっていきたい」と語った。
新聞協会がコメント
筆者が和解成立についての協会としての受け止めなどについて、取材を申し込んだところ、協会は「本件は組合等と最終的に解決したことを確認していますので、お答えすることはありません」とのコメントを出した。


