— 横浜・上瀬谷の旧米軍通信基地があった場所 —
横浜の再開発による環境問題を考える会・越智祥太(おちさちひろ/医師)


●日本海軍毒ガス貯蔵庫→米軍通信基地→園芸博→テーマパーク?
上瀬谷はかつて日本海軍の毒ガス貯蔵庫でした。その後、米軍の通信基地になりました。2015年にせっかく返還されたのに、2031年頃に開くという三菱地所などのテーマパーク再開発のため、その前に園芸博を行うとして、市費で造成されています。
企業の再開発を、博覧会をその前に開くとして公費で造成するのは、大阪カジノの前に大阪万博を開いたのと同じですね。テーマパークには年間1500万人以上来ると想定しています。2024年に大阪USJが1600万人、東京ディズニーランドが1510万人、東京ディズニーシーが1240万人で圧倒的ですが、次のハウステンボスは300万人未満です。
園芸博2027も来年3月~9月までの半年強で1500万人来ると想定しています。大阪万博は半年で2900万人でしたが、こちらは万博でしたからね。園芸を観に、バスしか交通がないのに、そんなに来るでしょうか。
●園芸博会場の真ん中を流れ、目玉の親水施設を造る相沢川に、PFAS汚染
さて、旧米軍通信基地にはヘリポートがあり消防隊もあったので、当然、沖縄や東京・横田や神奈川・厚木の各基地周辺と同様、PFAS(有機フッ素化合物)の汚染を市民は疑いました。しかも2022年、横浜市は園芸博再開発のためのアセス(環境影響調査)でフッ素を測定しながら、その後市民が要請しても、PFAS調査をしませんでした。
まだ中に入れた一昨年11月に、旧基地の中心を流れる相沢川でPFAS(PFOS+PFOA)を独自測定し、90ng/Lを認めました。暫定目標値(現:基準値)50ng/Lの2倍近い値で、当時の横浜市内では最高値でした。PFAS(PFOS+PFOA)は、大阪のダイキンや岡山の吉備中央町などの半導体工場由来と思われるものはPFOAが優位ですが、米軍泡消火剤は特に古いものほどPFOSがほとんどという特徴(プロファイル)があります。相沢川のPFASはPFOSが97%で、数値も組成も厚木基地や横田基地などと類似し、米軍の泡消火剤が強く疑われます。
園芸博では相沢川の水を利用して、客が水や自然と触れる親水施設を設置し、その後も公園に活用しようとしています。相沢川流域には多くの「災害用井戸協力の家」があり、日常に飲まれなくても、災害時には飲まれます。上瀬谷は2030年「広域防災拠点」としても開発しようとしているのです。周辺には農家も多く、上瀬谷の一部は「農業振興地区」として整備しようとしていますが、農業用水は農家の口にも入ります。
世界のPFAS基準は日本よりずっと厳しいです。欧州では飲料水は全PFAS物質で500ng/L以下、20種のPFAS合計で100ng/L以下、PFOSとPFOAとPFNAとPFHxSの4種は合計 20 ng/L以下とされましたが、生物学的濃縮を恐れて環境水(表流水)は24種のPFAS合計を4.4ng/L(PFOA等量)と定めています。米国は、飲料水でもPFOSまたはPFOAを各4ng/L未満と定めています。
●最初のPFAS対策要請、その後さらに造成でPFASが増えたのに一度も測定していない横浜市
昨年1月23日時点に、上瀬谷の土壌と環境水(河川・地下水)・井戸水・水道水のPFAS精査を早急に行うよう横浜市に市長陳情し、環境省にも要請しました。しかし2月28日の横浜市長の回答は、相沢川が水道の水源ではないという理由で、要請を無視するとても残念なものでした。
昨年5年3月6日に、市民の生命と健康を考え、相沢川と周辺の井戸の測定は行って欲しいと、さらなる要請を行うと、測定は検討すると回答しました。
その後、旧基地は高い塀で囲われ市民は入れなくされたので、住宅街を流れる相沢川の下流で、昨年6月と11月に測定を行いましたが、昨年の積極的な造成工事中にはPFAS(PFOS+PFOA)は140→200ng/Lまで増え、PFOSが93~95%で、やはり米軍の泡消火剤によると疑われます。
今年5月6日の測定でも、少し下流と瀬谷駅前の下流で100ng/L、99ng/Lを認め、PFOSが92%と、やはり米軍の泡消火剤が由来で、造成が一段落し減少しても、なお高値で出続けていることが疑われます。
ところが、最近のインターチェンジ造成の住民説明会でも、従来通り相沢川の水を使った親水施設の設置方針が語られ続け、今年5月には相沢川の水を使い即製した田んぼで、一時的でしかない園芸博の関係者が、「持続可能な農業」を謳い、田植えパフォーマンスを行ったのには、驚きました。
今年5月26日に確認したところ、横浜市は要請後も、相沢川などのPFAS測定を一度も行っていなかったと認めました。
相沢川は上瀬谷の旧基地の少し北側が水源で、旧基地の中央を通り、横浜市瀬谷区の住宅街を流れ、大和市の境で境川に合流し、境川は横浜市泉区、横浜市戸塚区、藤沢市を流れ、江の島の対岸の相模湾に注ぎます。相沢川は住宅街を流れ、洪水で氾濫しやすく、実際過去に氾濫もしています。
●PFAS対策の再要請と記者会見


市民の持続的な生命や健康より、園芸博やテーマパークのための再開発が優先で良いのでしょうか?
米軍に使われなかった里山もあり、豊かな生物種の宝庫だった大地が返還されたのに、持続的な環境の恩恵を市民は受けないまま、大企業のテーマパーク型再開発のために重機で茶色い平坦な土壌に造成されてしまい、それでPFASはさらに相沢川に流れ、園芸博という一時的に過ぎないお祭りで「持続的な環境や農業」がアピールされながら、実際は持続的な環境汚染が持続的に隠されるとは、滑稽を通り越して余りに悲惨です。
園芸博で全国はおろか世界から来る観光客に対し、事前に測定も説明も行わず、相沢川の親水部での汚染が問題となったら、責任は誰がどう取るのでしょうか?
今年6月12日(金)、環境省・神奈川県・横浜市・園芸博協会に要請書を提出し、横浜市長には市長陳情として提出し、横浜市庁舎内で記者会見を行いました。
① 2027国際園芸博覧会の会場である旧米軍上瀬谷通信基地の中心を流れる、相沢川の流域と、周辺の災害用井戸と、土壌・地下水の、有機フッ素化合物(PFAS)の精査を、早急に及び定期的に行い、市民と観光客に周知徹底して下さい。市民の生命と健康を重視し、原因追及と持続的な対策をきちんと行い、健康調査を行って下さい。
② 少なくとも環境省のハンドブックや手引きに則り、相沢川流域と、周辺の災害用井戸と、土壌・地下水と、和泉川等の近域河川のPFASの継続測定を行い、汚染が拡大せぬよう工事を抑制し、親水部を園芸博で利用せず、二次利用を制限し、川水や井戸水の飲用を防止し、健康診断を含めた地域の健康調査を継続的に行って下さい。
③ 2027国際園芸博覧会で、福島原発事故の汚染土(「除染土」)を二次利用することは、相沢川などの流域に、放射能汚染をも拡大することが確実に懸念されるので、絶対にやめて下さい。
の3点を要請しました。
記者会見では、瀬谷区の市民から、井戸水を中学生まで使っていたことが語られ、小児期に井戸水を飲んでいた市民は高齢者を中心に多いので、採血検査を行って欲しいと訴えがありました。旭区の市民からは、検討委員にPFASの詳細な資料が回らないまま横浜市は公聴会を終わらせてしまった問題や、今も国会議員が相沢川の親水施設造成を語っている問題が語られました。PFASは分子量が大きいので横田基地で見られるように、川より井戸の汚染の方が高度である可能性も語られました。
●環境省の基準によっても、PFAS対策をしっかりとらなければならない

環境省の「PFASハンドブック」(2025年12月版)によれば、少なくともPFASの「出生時への影響」については「証拠の高さが強いとされました」と認めており、「……国内の河川や地下水等の水環境中で、PFOS・PFOAが目標値を超えて検出される事例が確認されており、それらの地域の住民の皆様から、健康への不安を訴える声があがっています。このような声に寄り添い、不安を少しでも解消するためには、健康影響への科学的知見の収集と継続的なモニタリングはもちろんのこと、住民の皆様含む関係者への丁寧なリスクコミュニケーションが必要です」とされ、「①環境中への新たな排出抑制(作らない・出さない)、②更なる汚染拡大の防止(広めない)、③健康影響の未然防止(目標値等を超える量のPFOS等を摂取しない)、④リスクコミュニケーション(正しく知る)の4つの柱で取組を推進していきます」とされています。
市民の測定や要請を無視し、園芸博(その後の大企業のテーマパーク型再開発)のために造成工事を継続し、①排出を促進し、②汚染を拡大させ、③健康影響を無視し、④リスクコミュニケーションも無視してきた対応は、全てに違背していることは明らかです。
環境省の地方公共団体向けの「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き(第2版)」(2022年11月)では、
「水環境中から目標値等を超える値でPFOS及びPFOAが検出された際には、まずは、飲用によるばく露の防止を徹底することが重要であり、地域の実情等に合わせて、以下の(1)~(3)を実施」することを考えるとされています。
(1) 飲用によるばく露の防止の徹底」として、「井戸等の設置者等に対しては……情報を提供するとともに……飲用を控えるよう助言等を行う」ことを考え、「日頃から井戸等の設置場所、設置数、水質の状況等に関する情報の収集・整理に努める」のが望ましく、「飲用井戸等衛生対策要領」に基づく対応が求められます。
(2) 継続的な監視調査の実施」として、「公共用水域測定計画策定に係る水質測定の効率化・重点化の手引き」と「地下水質モニタリングの手引き」による、井戸再調査を含む「継続的な監視調査」が求められます。
(3)追加調査の実施」として、「必要に応じて調査範囲を拡大し、追加的な調査の実施を検討」を考え、「特定の原因」が「継続性」と判断されたら、「排出源の特定」をし「濃度低減」措置を検討するとされます。
「健康影響等に関する情報発信」としては、「(1)リスクコミュニケーションの実施」を図り、「(2)地域住民の健康状態の把握」として、「健康不安の声が上がっている地域においては、地域保健を担当する各地方公共団体が、地域保健活動の一環として、健康指標に関する既存統計等を用いるなどして、健康指標の経年的な推移により、PFOS及びPFOAとの関連が指摘されているコレステロール値、がんの罹患状況、低体重児の届出情報などを確認することや、他地域との比較により、地域の健康指標に大きな差異がないかなど、当該地域の健康状態を把握し、地域住民に向けた情報発信を行うことが望ましい」とされています。
しかし以上のいずれも全く行われておらず、環境省のハンドブックにも手引きにも完全に違背しています。
●横浜市と園芸博の回答は? 市民の力で周知と抗議をお願いします
6月24日に横浜市上瀬谷整備推進課から、本来は10営業日内に回答するとされているが、多くの部署にまたがるので、延期して7月17日までに回答させて頂きたい旨の連絡がありました。ただ、いかにも時間稼ぎという感じもします。
このかんパワハラで有名になってしまった山中・横浜市長は、記者会見で記者の質問に対し、50ng/Lは暫定目標値なので調査しなかったと述べたそうです。現在はもう基準値と確定されており、また暫定目標値の時でも先述の通り厳格な対応を求められていたので、二重に間違っています。この発言自体、環境省の「PFASハンドブック」や「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き」に違背する不誠実な対応になってしまっています。
データサイエンティストの市長として、データを尊重し、パワハラと言われてしまった「市民目線」、「当事者目線」の言葉を、先ず隗より始めて頂き、市民に寄り添った誠実な対応をして頂きたいと願っています。
横浜市がしっかりと対応するように、多くの市民が上瀬谷PFAS問題にもご関心を持って頂き、周知と喧伝を図って頂きたいと思います。


