堀切さとみ

 8月26日、現職自衛官によるパワハラ被害国賠訴訟(第五回期日)が行われた。東京地裁103法廷は老若男女で一杯。大学生も沢山来ていた。

 原告の田村正一さん(仮名)は総務・人事幹部として14年間勤務したベテランだが、2022年7月突然に配置転換命令を受けた。まったく畑違いのグローバルホーク(GH)班。パイロットなどの技術がないと無理な部署である上に、何の教育も訓練も受けさせてもらえなかった。
 不当配転だと申し立てるが聞き入れてもらえない。田村さんは心身を病み休職するが、復帰した彼を待っていたのはいわゆる「追い出し部屋」だった。すでに二名の自衛官が同じ追い出し部屋に入れられていたが、何もすることがない屈辱に耐えきれず、いずれも退職。しかし田村さんは現職にとどまりながら、人権侵害を訴えている。

 自衛官はそれぞれがもつ特技によって配置される。人が足りないから田村さんをGHに配置したと言うが、本当に他にいなかったのか。今日の期日ではそれを証明する文書の提出を求めたが、被告側は原本ではなく写しを出してきた。不都合なことがあるのだろう。

 その後、参議院会館で「自衛官の人権と生存を守るためのシンポジウム」が行われた。佐藤博文弁護団長、防衛組織の人権を唱える水島朝穂氏、自衛隊を20年間取材するジャーナリストの三宅勝久氏が登壇した。
 佐藤弁護士は、「2022年の6月に、五ノ井里奈さんの性暴力事件が起きた。知らぬ存ぜぬを決め込んだ同じ時期に、田村さんの強制異動が起きている」。五ノ井さん事件を経ても組織体質は変わらないまま、経験を積んだベテラン自衛官さえもが、パワハラ、セクハラ、不当人事、不当解雇などによって自殺させられているという。
 水島さんは「ドイツは徴兵制が復活する様相だが、軍人の自由を認めている。日本の自衛官は絶対服従」と言い、どちらが戦争に行かされる可能性が高いかという会場からの質問に「日本人だ」と断言した。
 三宅さんは2014年に起きた「輸送艦おおすみ事件」を例にあげ、自衛隊がメディアをコントロールし、あたかも被害者が加害者であるかのような世論操作を行ってきたことを語った。

 元自衛官で自衛官人権ホットラインの小西誠さんは「現職自衛官が裁判に訴えるというのは、相当な嫌がらせを覚悟しなければならない。防衛オンブズマン制度を立ち上げよう」と訴えた。防衛庁や自衛隊という組織では、自衛官の人権は守れない。市民や議会による外からの調査や監視が必要なのだ。