●JCA-NET:国旗損壊罪反対声明―コミュニケーションの権利運動の観点から
2026年6月28日
以下の理由から、JCA-NETは、今国会で審議中の国旗損壊罪について、修正などではな
く、廃案とすべきであることを主張します。
法案は「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊
し、除去し、又は汚損」した場合を処罰するとしています。法案提出理由も「処罰規定
を設ける必要がある」から、としか述べられておらず、理由などどうでもよく、ともか
く処罰するのだ、という態度があまりにも露骨です。
人に対してではなく「国旗」のような「物」に対する行為について、「不快又は嫌悪の
情を催させる」というだけの理由で処罰対象にするのは、言論表現の自由、思想信条の
自由など基本的人権としての自由の権利を侵害するものであって、容認できません。そ
の一方で、政府は、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させる」最大の人権侵害でもあ
るヘイトスピーチやヘイトクライムなど人権侵害行為について、むしろ寛容な態度をと
り続けてきました。政権与党の政治家たちは選挙で公然と対立陣営への誹謗中傷行為す
ら行なっているのです。「国旗」の方が人権よりも重要であるという政権のイデオロギ
ーをこの法案は端的に示しており、容認できません。
また、「不快又は嫌悪の情を催させる」行為であるという処罰の理由は、捜査機関や政
府の好き嫌いで恣意的に処罰ができるというもので、感情的な同調圧力効果を制度化し
、人々の内面の自由を大きく侵害します。これはナショナリズムが人々の価値観や感情
だけでなく行動にも影響する最も警戒すべき害悪です。
本法案の影響は計り知れない範囲にまで及びます。国旗損壊罪が、更に幅広く国家の象
徴的なモノや行為に対する批判や拒否の表現行為の犯罪化への突破口になりかねません。
国歌など様々な象徴から更には天皇や皇室に対する批判的な表現に対しても犯罪化さ
れることに繋れば、まさに不敬罪の復活になります。とくに、アートの領域への影響は
図り知れないものがあり、アーティストや美術館などが「国旗」をモチーフにした表現
を自主規制したり断念するなど、影響の及ぶ範囲は極めて広範囲になります。国旗損壊
罪法案は、こうした広範囲にわたる表現行為の抑圧を含意したものであることを私たち
は強く危惧します。
インターネットの表現行為との関連では、法案「附則」の2に「検討」というタイトル
で記載されている文言が見過せません。この文言は、インターネットにおける威嚇的な
検閲圧力を正当化するものです。附則2では以下のように述べられています。
「この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、国旗を損壊し、除
去し、又は汚損する状況に係る映像に関するインターネット等の利用の状況、損壊され
若しくは汚損された国旗を公然と陳列する行為又はこれに類する行為の発生の状況その
他この法律の施行状況等を勘案し、国旗を大切に思う国民感情を保護するのに必要かつ
十分なものとなっているかどうか等の観点から検討が加えられ、必要があると認められ
るときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。」
ニュース報道などで、SNSなどの表現行為は除外された、などと報じられた根拠がこの
文言です。この附則が意図していることは、インターネットでの「国旗」を用いた「毀
損」表現に対して、通信事業者などによるユーザーへの「自主規制」を促し、もし政府
の納得のいく対処がなされない場合は、3年後の見直しでは法的な規制に踏み込む、と
いう明らかな脅し文句になっています。官民連携の強化が謳われるなかで、否応なく政
府の政策に協力を強いられている通信事業者業界の現状において、プロバイダー等が国
家の意向を忖度して、ユーザーの正当な言論・表現の自由や思想信条の自由を監視する
よになることには絶対反対です。インターネットのサービス・プロバイダーを活動の重
要な柱としているJCA-NETにとって、こうした自主規制や検閲圧力そのものがまさに私
たちの活動への深刻な干渉を意味し、絶対に認めることはできません。
しかもビッグデータとAIの時代には、政府の意図を反映する形でのアルゴリズムが導入
されて、検閲が自動化されるおそれが高くなります。そして、「国旗」損壊行為を監視
することを口実に、デモや集会へのこれまで以上の監視強化や網羅的にネットの動画や
画像を監視しそのなかから該当するであろう表現を抽出したり、「人に著しく不快又は
嫌悪の情を催させる」表現について、ユーザー同士の密告が促されるなど、表現行為へ
の広範囲にわたる監視体制の導入のきっかけにもなりえます。他方で、「国旗損壊」を
犯罪化することによって、「国旗」を用いた批判的な表現行為者に対して、右翼団体な
どによるテロや暴力行為が正当化されたり、こうした暴力や威嚇による人権侵害を黙認
する法的な後ろ盾となる可能性も否定できません。
以上の理由から、JCA-NETは、国旗損壊罪法案に反対し、廃案を求めるものです。
●アムネスティインターナショナル日本支部<声明>
「国旗損壊罪」創設は表現の自由を不当に制限 方針撤回を強く求める
2026年6月25日
現在、国会において、日本の国旗の損壊行為に刑事罰を科す「国旗損壊罪」創設の動き
が進んでおり、今国会での成立を目指す方針が報じられています。アムネスティ・イン
ターナショナル日本は、この拙速な法制化の動きに対し、国際人権法および日本国憲法
が保障する「表現の自由」を不当に制限する恐れがあることから、強く反対を表明しま
す。私たちは、国旗に敬意を払う自由を否定するものではありません。しかし、表現は
、たとえ一部の人びと、あるいは多くの人びとにとって、不快あるいは侮辱的と受け止
められるものであっても、それだけで処罰されるべきではありません。国家やその象徴
に対する賛同だけでなく、批判や抗議を表明する自由が同時に保障されねばなりません。
与野党4党が共同でこの6月に国会に提出した刑法改正案では、「日本国に対して侮辱を
加える目的で、国旗を損壊し、除去し、又は汚損した」場合には、処罰されると書かれ
ています。これは単なる財産の保護ではなく、国旗の象徴的価値を損なったり、国家へ
の敬意を欠くという理由で、特定の表現に刑事罰を科そうとするものです。
国家やその象徴に対する、批判を含む政治的・象徴的な表現は、自由権規約第19条およ
び関連する国際基準(自由権規約委員会一般的意見第34号を含む)によって保護されて
います。日本も法的に拘束される自由権規約の監視機関である自由権規約委員会は、公
的人物や公的機関に関する政治的・公共的な議論において、表現の自由が特に高い価値
を持つことを強調しています。また、国旗や国家的象徴への不敬などを対象とする法律
について懸念を表明しています。
日本国憲法第21条も一切の表現の自由を保障しています。「国家への敬意の欠如」を理
由に処罰を科そうとする発想は、憲法第21条、および個人の尊厳を尊ぶ憲法第13条の理
念と矛盾します。国家は市民からの尊敬や忠誠を刑罰によって強制するべき存在ではあ
りません。なお、日本の現行刑法92条は外国国章損壊等罪を定めていますが、これは良
好な国際関係を維持するためであって、決して自国の威信を高めるためではありません。
アムネスティ・インターナショナル日本は、国旗や国家的象徴への侮辱・不敬を禁止す
る法律には明確に反対の立場をとっており、この立法が単に国旗の問題にとどまらない
可能性も懸念します。国家の象徴に対する「侮辱」や「不敬」を処罰する考え方が広が
れば、将来的には、かつての不敬罪のように、国家元首や政府高官、あるいはその他の
国家的象徴に対する批判的表現をも刑事罰の対象とする立法へと拡大する危険性を否定
できません。このような動きは、社会に不可欠な政治的言論の自由を著しく萎縮させる
リスクを伴います。
私たちの社会において必要なのは、異論や抗議を含む多様な意見が自由に表明される環
境を保障することです。表現の自由に対する制限は、国際人権法上、目的が正当であり
、かつ、その制限が本当に必要で、目的に対して過度な制限になっていないという「必
要性」と「比例性」の厳格な要件を満たさなければ認められません。さらに、暴力、憎
悪、差別の扇動など、極めて限定的な場合を除き、表現は保護されなければなりません。
本法案については、その要件を満たしているとは到底考えられません。
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府および国会に対し、国際人権法お
よび日本国憲法が保障する表現の自由を尊重し、本法案の今国会における成立方針を撤
回するよう強く求めます。
「国旗の損壊等の処罰に関する法律」案に反対する会長声明
2026年6月16日、自由民主党、日本維新の会、国民民主党及び参政党の4党は、共同提案の議員立法として「国旗の損壊等の処罰に関する法律」案(以下「本法案」という。)を国会に提出し、本年6月26日に衆議院内閣委員会で可決された。
しかしながら、本法案は、国民の内心の自由(憲法第19条)及び表現の自由(憲法第21条)を侵害するおそれがあり、罪刑法定主義(憲法第31条)の観点からも問題がある。
本法案が「国旗損壊罪」を定める立法趣旨は、国旗を大切に思う国民感情を保護するものであると説明されている。確かに、国旗は国民の間に広く定着しており、これに愛着を感じる人も少なくない。しかし、国旗を大切に思う感情も、批判的感情も無関心も、まさに国民一人ひとりの内心の自由に属するものである。したがって、国旗に対する感情は、国民の自由かつ自然な感情に委ねられるべきものであり、刑罰をもって強制されるものではない。このような、刑罰により国民感情を強制しかねない法制度は、憲法第19条が保障する内心の自由を侵害するおそれがある。
また、日本においては、過去に日の丸が軍国主義高揚の手段の一つとして使われた歴史的経緯があるため、本法案による「国旗損壊罪」の創設は、日本国憲法が採用した平和主義に逆行するような印象を与えかねない。また、政治的な批判表現のみならず、国旗を用いた様々な表現自体を萎縮、抑制させることになりかねず、憲法第21条が保障する表現の自由を制約するおそれも大きい。
さらに、本法案では、第2条第1項で「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者」を処罰の対象者とし、第2条第2項で「前項の方法に該当するかどうかの判断は、行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行うものとする」とされている。
しかしながら、「著しく不快又は嫌悪」という感情は人それぞれ異なり、そのような内心の感情を犯罪の構成要件に加えることは極めて抽象的かつ不明確である。また、「行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行う」とする点についても、その行為時の規範として不明確であり、罪刑法定主義(憲法第31条)に反するものである。
以上のとおり、「国旗損壊罪」の創設は、政治的な抗議活動や表現活動に対する萎縮効果をもたらすものであり、憲法第19条及び第21条に抵触するおそれが高い上、憲法第31条の罪刑法定主義に反し処罰範囲が拡大していくおそれも大きい。
したがって、当連合会は、「国旗損壊罪」の創設に反対する。
2026年(令和8年)6月26日
日本弁護士連合会
会長 松田 純一
<全国の皆さんへの呼びかけ> 思想・良心の自由、表現の自由の侵害・統制、市民の自由の弾圧手段になる憲法違反の「国旗損壊罪法案」を廃案に!
2026年6月29日
許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう!改憲・教育破壊 全国ネットワーク
(ひのきみ全国ネット)連絡先・代表世話人・小野政美 gorillaono@gmail.com
6月26日、衆院内閣委員会で、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案(衆法第18号)」 (「国旗損壊罪法案」)が、わずかな時間の審議のみで賛成多数で採決され、6月30日に衆議院本会議での審議・採決を経て、その後、法案は参議院に送られ、このままでは、自民・維新・国民・みらい4党などの賛成多数で、「国旗損壊罪法案」が7月17日の国会会期末までに今国会で成立する状況になっています。
私たちは、4つの団体・市民で「国旗等損壊罪法」反対連絡会を結成し、これまで、3万人を超える「国旗損壊罪法案」反対署名を集め、自民党や国会に提出してきました。この間、「国旗等損壊罪法」反対連絡会の呼びかけで、国会前・首相官邸前での抗議のスタンディングを行い、全国各地の市民団体、日本弁護士連合会(日弁連)や全国各地の多くの弁護士会、法律家団体、ジャーナリスト団体、キリスト教団体、「日本ペンクラブ」、「自由人権協会」、全国の80以上の歴史研究団体の「日本歴史学協会」など多くの団体が、「国旗損壊罪法案」を危惧し、徹底審議、廃案を求める声明を出しています。
私たちは、6月26日の衆院内閣委員会での採決強行に抗議するとともに、衆議院本会議での審議・採決強行、参議院内閣委員会・本会議での審議・採決強行に注目し、多くの人々が、衆院本会議の審議を監視し、法案に抗議することによって、「国旗損壊罪法案」の廃案を実現するために小さな声を集めて、大きく声を上げ続けることが重要だと思っています。挫けず、諦めず、粘り強く、全国各地で、さまざまな立場から抗議の声をさらに上げ続けていきましょう!
(1)「国旗損壊罪法案」法案の採決強行と「表現の自由」への深刻な侵害
6月26日、12時36分、衆院内閣委員会で、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案(衆法第18号)」(以下、「国旗損壊罪法案」)が、賛成多数で採決されました。自民・維新・国民民主・参政の4党が共同提出した「国旗損壊罪法案」は、国旗を公然と傷つけた場合などに、2年以下の拘禁、または20万円以下の罰金を科すとしています。国旗損壊罪の創設は、高市早苗首相が持論としてきた法案です。「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨は「将来に向かって(損壊を)抑止」と記すのみで、立法事実や必要性を欠くものです。「国旗損壊罪法案」は、立法趣旨を「国旗を大切に思う国民感情を保護」としていますが、感情は人によって異なるものであり、国家に批判的な人びとの表現行為を封殺するものであり「思想・良心の自由」・「表現の自由」の侵害そのものです。また、「国旗損壊罪」法案は、 表現の自由への配慮から目的や個人の内心を詮索せず、行為を「構成要件」としていますが、国旗に対する行為が内心に基づく表現である以上、それでは配慮になりません。さらに、「国旗損壊罪法案」は、対象の基準を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる」行為と規定していますが、社会通念と同様、恣意的に解釈され、そのことにより市民の表現の萎縮につながることになります。
(2)歴史の反省の欠如と国家主義への回帰
「国旗損壊罪法案」は、国家主義の下、「日の丸・君が代」がアジア太平洋の人々と日本人に多大の犠牲を強いた侵略戦争と植民地支配の歴史の反省を踏まえていません。「日の丸・君が代」は国家主義的シンボルとして使われてきました。戦後日本は、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を基本原理とする日本国憲法により新しい歴史を踏み出しました。「国旗損壊罪法案」は、戦後日本が、日本がかつておこなった侵略戦争と植民地支配の歴史を反省し、国家より個人の尊厳を尊重して、日本国憲法で全ての人に保障された「思想・良心の自由」、「表現の自由」などの自由と人権、人びとの尊厳を侵害し、侵略戦争と植民地支配のシンボルである「国旗・日の丸」をすべての人々に強制するものです。
(3)憲法違反と社会全体への同調圧力の強化、市民の委縮が拡大
日本国憲法は、第19条(思想及び良心の自由)「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」、第21条(表現の自由)「集会、結社及び言論、出版、その他いっさいの表現の自由は、これを保障する」。第31条(罪刑法定主義)「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またその他の刑罰を科せられない」と規定しています。「国旗損壊罪法案」の成立により、「日の丸・君が代」の強制が、学校等での教職員、子どもたちへの強制から市民社会全体への強制に広がっていくことが懸念されます。
戦前の「国旗・国歌」(「日の丸・君が代」)が、国家主義を強化し、市民に国家への愛国心、忠誠心を強制し、愛国心の強制により、異議を唱える人びとや侵略戦争・植民地支配の道具になりました。
また、国家による思想表現等の統制に抵抗し、個人の市民的自由や人権を守って抵抗する人びとは治安維持法などにより弾圧され、「日の丸・君が代」は、侵略戦争や植民地支配の動員の道具となり、日本国内の外国人や植民地支配下の人びとへの差別意識・排外主義が強化されました。
「日の丸」の掲揚、「君が代」の斉唱が、日本の植民地にされた国・地域や占領地などでも1945年の日本の敗戦まで強制され続けました。「国旗損壊罪法」の成立は、実刑を科すことにより、教育現場の萎縮、学術・思想界一般、社会全体における同調圧力の強化が一層進み、思想良心の自由、表現の自由に関して市民社会の同調圧力、委縮効果が拡大し、「コロナ禍」社会の「自粛警察」のように、監視・通報・密告などにより多くの人々は表現を控えることになるでしょう。
(4)不十分な「立法事実」と根拠なき主張
衆院内閣委員会での趣旨説明で自民の松野博一議員は、国内で過去、国旗が損壊された3つの事例に加え、交流サイト(SNS)の普及に触れ、「事案発生を将来に向かって抑止する必要がある」と強調し、「国旗を大切に思う国民感情を保護するため処罰規定を設ける法案を取りまとめた」としました。4党の法案共同提案者は、法制定の根拠となる「立法事実」が十分に存在しているとし、実際の被害がなくても、国旗を侮辱的に扱う行為が国民感情などに与ええる影響は大きく、自国の国旗は守らないことに是正が必要であるとしました。刑法上の「器物損壊罪」は他人の物にしか適用されず本人所有の国旗損壊を処罰できないので、刑法上の「外国の国旗損壊罪」とのバランスが必要であり、そのために、「日本国旗損壊罪法」が必要であると主張しました。
「日本国旗損壊罪法」の根拠になる「立法事実」を巡っても、沖縄国体での「日の丸」焼却事件、富山大学学生事件など4件の国旗損壊の実例も根拠になると説明し、諸外国での「国旗損壊」の事例から「予防的立法事実」があるとの答弁を繰り返し、また、「日本国旗損壊罪法」の「保護法益」に関しては、「国旗損壊罪法案」が、「国旗・日の丸」を損壊することが、「国旗・日の丸」を尊重する「国民感情」を損壊し、そのことにより、「国家の威信と名誉」を傷つけるものだとの主張を繰り返しました。3日間の短期間の衆院・内閣委員会の審議を通じて、法案提出4党議員の意見は、犯罪構成要件や明確性についても、客観的判断の明確な基準は示されませんでした。
(5)内心の自由、表現の自由、罪刑法定主義など憲法の人権保障違反の「法案」
「国旗損壊罪法案」に定められた、「著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」で、公然と国旗を損壊、除去、汚損する行為を処罰する、「意図や目的は問わず、行為の外形や状況を総合的に勘案して判断する」ことについて、具体的な根拠を挙げた説明をせず、抽象的な意見を述べるのみでした。
与党の自民党、維新の会などの「国旗損壊罪法案」共同提出の議員は、「立法事実はあるのか」と問われて、国内に具体的なものはないが、諸外国での「国旗損壊」の事例から「予防的立法事実」があると答えました。日本国内に立法事実がないにもかかわらず、「予防的」なる「立法事実」をもって説明するなどあってはならない法案であることを証明することに他なりません。
「国旗損壊罪法案」は、国旗を尊重する思想を、刑罰をもって強制することになり、憲法の思想信条の自由に反するものであり、表現の自由という最も重要な民主主義を支える人権が侵害されたり、政治的主張の機会を制限されたりすることになるものです。日本国憲法上の人権保障の大原則である罪刑法定主義は、刑罰を法で定めることだけを意味するのではなく、処罰の対象になる行為を明確に定めることが不可欠です。4党の「法案」共同提案者は、処罰対象に関して、「国旗が実際に傷つけられ、公然と行われた行為に限定する形で処罰の対象にする」、「公然性や外形的な行為の中で著しく感情を害するという構成要件で限定をかける」などと、表現の自由への配慮規定も設けたと主張しましたが、「法案」共同提案者の意見は、犯罪構成要件や明確性についても、客観的判断の明確な基準は示されませんでした。不快感や嫌悪感を処罰の理由にした上、「総合的に勘案」して判断するというのでは、およそ刑罰法規としての明確性を欠くものであり、「国旗損壊罪法案」は、内心の自由、表現の自由、罪刑法定主義など日本国憲法の根幹である人権の保障に反することが明らかです。
(6)「国旗損壊罪法案」は、処罰範囲・犯罪構成要件が不明確で罪刑法定主義に違反
6月25日の「国旗損壊処罰法案」の参考人質疑でも、参考人からは、処罰範囲が不明確で、表現の自由を侵害し萎縮させる危険や違憲性が指摘されました。志田陽子教授(武蔵野美術大・憲法学・芸術関連法学)は、「現在の案では将来憲法訴訟になった時に違憲と判断される可能性が非常に高い」、「憲法21条は表現の自由を広く保障しており、人に不快感を与える表現があっても法による介入や規制はしないのが原則」、「法案では表現が広く取り調べの対象となり得る上、憲法19条の「思想・良心の自由」に警察が踏み込む問題が生じる」と批判しました。また、6月25日の参考意見で、江藤隆之教授(桃山学院大学・刑法学)は「廃案にすることも含む、より慎重な議論が求められる」、「法案では自己所有の国旗の損壊も処罰されるが立法事実の説明が不十分で、国旗国歌法が定める国旗の形式以外の「国旗のようなもの」の損壊まで処罰される」、「処罰対象が不明確で罪刑法定主義上の問題がある」と批判しました。
(7)内心の自由の圧迫と人権抑圧の手段になる「国旗損壊罪法案」
国家の権威を象徴する国旗をあえて燃やしたり、破ったりすることは、それ自体が国家や政府に対する強い異議を表現する行為です。表現の意図や目的を問わなくても、乱用を防ぐための厳格な縛りもなく、処罰の対象とすることそのものが内心の自由を圧迫し、政治的な意見の表明を封じることにつながるものです。内心の自由を圧迫し、政治的な意見や芸術的な表現の表明に対して刑罰を科すことは、国家による最も強力な権力の行使になるものです。「国旗損壊罪法案」の趣旨説明のように、不快感や嫌悪感といった主観による処罰を可能にするならば、思想・良心の自由、言論・表現の自由への抑圧は大きく広がっていくことになります。不快感や嫌悪感を処罰の理由にした上で「総合的に勘案して判断する」というのでは、およそ刑罰法規としての明確性を欠くものであり、「国旗損壊罪法案」は、刑罰で、日本国憲法の保障する思想・良心の自由、表現の自由を侵害し、信条による差別を禁止している憲法14条違反、憲法31条が定める罪刑法定主義に反する違憲立法です。
衆院・内閣委員会の審議でも、与党議員は、「著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」で、公然と国旗を損壊、除去、汚損する行為を処罰する。意図や目的は問わず、「行為の外形や状況を総合的に勘案して判断する」と定めた法案について、具体的な説明をすることなく、象的な説明に留まりました。
内心の自由を圧迫し、政治的な意見や芸術的な表現の表明に対して刑罰を科すことは、国家による最も強力な権力の行使になるものです。不快感や嫌悪感といった主観による処罰を可能にするならば、思想・良心の自由、言論・表現の自由への抑圧は大きく広がっていくことになります。日本国憲法13条「幸福追求権」や19条「思想・良心の自由」、その他多くの人権規定は、日本国憲法の共通原理になっているものであり、それを表明することは憲法21条によって個人の自由です。「国旗損壊罪法案」が成立すれば、当局の意向でどのようにも使うことが出来、思想・良心の自由の統制、表現の自由の侵害、市民の自由と人権の弾圧の手段になります。
(8)「愛国心の強制」と日本社会全体への国旗掲揚と国歌斉唱の強制
1999年の「国旗国歌法」制定以降、教育現場では「日の丸・君が代」の強制が進み、従わない教職員が処分されてきました。今回の「国旗損壊罪法案」は、そうした学校現場での思想強制や不服従への弾圧(東京都や大阪府・市教育委員会などで見られた動き)を、日本社会全体へと拡大・定着させるものです。1999年の「国旗国歌法」制定以降、教育現場への強制によって、子どもたちや教職員の思想・良心の自由を侵害しています。「国旗国歌法」制定後、国会での政府答弁などでも強制しない約束を踏みにじり、学校では、子どもたちと教職員に、「日の丸・君が代」を強制し、従わなければ処分することで、「もの言えぬ職場」とされ、教職員の厳しい労働条件も加わって、子どもたちのいじめ・不登校・自死も大きく増えることになりました。
「国旗損壊罪法案」は、愛国心の強制が真の動機でもあります。6月26日の内閣委員会で、共同提案者である日本維新の会の阿部圭史議員は、西田薫議員の質問に対し、「本法案の成立を契機に、国民が自国への帰属意識や一体感を抱き、国旗を大切にする気持ちや愛国心が醸成されていくと考えている」と答弁しました。自民党はこれまで「個人の内心に立ち入らない」と説明してきましたが、国旗尊重や愛国心の強制、義務付けは憲法違反です。
「国旗国歌法」成立後の学校教育現場での式典の国旗掲揚と国歌斉唱の強制から、東京都教育委員会・大阪府/大阪市教育委員会などにより、学校で、教職員に「日の丸・君が代」を強制し、従わなければ処分し、思想強制に不服従の教員に「思想転向研修」を強制し、おこない、消極的な不同調までが懲戒の対象となっていきました。
国旗掲揚と国歌斉唱の強制は、「国旗損壊罪法」の制定により、学校だけでなく、日本社会全体に国旗掲揚と国歌斉唱の強制を日本社会全体に社会化するものです。
以上のことから、私たちは、思想・良心の自由、表現の自由の侵害・統制、市民の自由の弾圧手段になる憲法違反の「国旗損壊罪法案」を廃案にするために、全国各地の皆さんが、さまざまな立場から抗議の声をさらに上げ続けていくことを呼びかけます!


